テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

こわいもの見たさ、なんです。

2011-09-20 23:14:21 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 あ~あ、自転車競技の世界選手権が行われているデンマークの首都コペンハーゲンは、
 そこそこ良いお天気だというのに、
 ここ日本は台風……どうか皆さま、御用心下さいね!

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 さむッ!」
「ぐるるー!がるがるがるぐる!」(←訳:虎ですー!風邪引いちゃいそう!)

 ひんやりした空気が流れてきたら、
 悪天候のせいなのか、
 それとも……
 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~!

  


 
               ―― あやかし草子 ――


 
 著者は千早茜さん、2011年8月に発行されました。
 『みやこのおはなし』と副題が付されています。

「むむッ?? あやかしィ??」
「がるぐるる!」(←訳:怪しいね!)

 ええ、そうです、
 喉元に吹きつけてくるのは、あやしの風。
 ただし、大いに怪しいその風が渦を巻いているのは、
 東京に首都がある現代ではなく、
 《みやこ》といえば京都であった時代のものがたり。
 
 ほらほら、すぐそこに、見えませんか?
 以前は栄華を誇った都の大門が、
 ちょこっと寂れてはおりますけれど、
 今もなかなか、見上げるほどの大楼ぶりじゃございませんか。

「うそでスゥ! ぼろぼろォ、でスよゥ!」
「がるぐるぐるるー!」(←訳:荒れ果ててるよー!)

 えー、おほん、まあそうね。
 極彩色に塗り飾られていた楼門は、
 最近では目も当てられない廃れよう、です。
 都の住人さんたち、この楼門を天然の葬儀場と見做したのか、
 怖ろしいものを捨てにやって来ます。
 それは――

「ひィッ! いわなくてェ、いいでスゥ!」
「がるるー!」(←訳:怖いよー!)

 えへん、えーと、その、でもね
 たまにはね、いるんですよ。
 ものを捨てるためにではなく、
 他のことをするために来るひとも、ね。

 その男は、毎夜毎夜、やって来ます。
 何をしに、って、
 笛を吹くために。
 陽が落ちてからは人っ子ひとり近付かない、
 いえ、昼日中でも都人が忌避するその楼門を訪れるのは、
 ただただ、思いのままに笛を鳴らすため。

 笛の音に耳を傾ける者など、
 皆無であるはず、でした。
 が、或る日、じっと男の笛に聴き入る巨きな黒い影が……。

「わわきゃッ! でたァのでス!」
「がるぐるー!」(←訳:逃げようー!)

 朽ちかけた楼門に棲む、おそろしい鬼。

 この主題(テーマ)に、多くの作家さんたちが魅了され、
 さまざまな《門にすむ鬼》の物語が創られてきました。
 近年で最も印象的な小説作品は、といえば、
 夢枕獏さんの『陰陽師』でしょうか。

 著者・千早さんの《鬼》の御話は、
 夢枕さんの作品に対する一種のアンサーソングを想わせます。
 《鬼》に遭った者は、出遭ってしまった者は、
 いったいどこへ往くこととなるのか――

  『鬼の笛』
  『ムジナ和尚』
  『真向きの龍』
  『天つ姫』
  『青竹に庵る』
  『機尋』――

 収録されている5編の作品は、
 ホラーとファンタジーの中間に位置するような、
 味わい深い、旧き時代の《あやかし譚》です。
 秋の旅行は書物の世界で、という活字マニアさんにおすすめ!ですよ~♪

「こわいのォ、すきなァ、ひねくれものさんはァ、ぜひィ!」
「がるぐるるるるがるるーがるー!」(←訳:ボクは夢でうなされそうだよー!)
 
  
コメント
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