テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

花苑に、星を探す。

2013-02-24 23:00:09 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 やッほゥ! あれにィ、みゆるはァ、うめのはなッ♪」
「がるる!ぐるるるがるるるるぅ!」(←訳:虎です!梅のお花がさいてるぅ!)

 こんにちは、ネーさです。
 おお、やっと!
 ご近所の梅のお花が綻びはじめましたよ♪
 それを記念して、というわけではありませんが、
 本日の読書タイムは、お花と縁の深い作品を、さあ、どうぞ~!

  



 
                 ―― カマラとアマラの丘 ――



 著者は初野晴(はつの・せい)さん、2012年9月に発行されました。
 『A night in the hidden cemetery』と英語題名が付されています。

 著者の初野さんといえば、
 吹奏楽部を舞台にした《ハルチカ》シリーズを御存知の方々が
 大勢おられるでしょうね。
 廃部寸前の部をなんとか復活させ、
 全国大会出場めざして爆走するフルート奏者のチカちゃんと、
 幼なじみのハルタくんたち、
 高校生のものがたり――

「ふァいッ!
 はるたくんッ、ちかちゃんッ、だいすきィ~!」
「ぐるがるるるー!」(←訳:応援してるよー!)

 ときに苦悩と悲劇にうちのめされつつも、
 決して諦めない、挫けない、チカちゃんたちを
 明るい《陽》の存在とするなら、
 この御本は対照的に、
 《陰》のような存在の連作ミステリ、と申しましょうか。

 なんたって、舞台は墓地――夜のお墓ですから。

「おッ、おはかァッ??」
「がっるぅ~!」(←訳:よっ夜ぅ~!)

 そこは、とある町の遊園地……
 いえ、遊園地だったところ。

 町のはずれ、不便な場所に造られた遊園地は
 不況の到来、
 そして遊園地と賑やかな市街とを結ぶモノレールが廃線になったために、
 あえなく閉鎖されてしましました。

 いまはただ、無惨な、夢の跡地――廃墟になっています。

「むッ?
 でもォ、あれはッ??」
「ぐるるがるがるっ!」(←訳:廃墟に誰かいるっ!)

 ええ、町のそこここで、噂が囁かれているんです。

   遊園地の廃墟には動物霊園があり、墓守をする青年がいる。
   その青年は、月の出た夜でないと人前にはあらわれない。

「どうぶつれいえんッ??」
「がるるがるぐるる??」(←訳:廃墟に動物のお墓??)

 月が輝く今宵は、
 有刺鉄線で囲まれた遊園地跡へと、
 こっそり忍び込む人影があります。

 廃墟の恐怖をものともせず
 墓守の青年に会おうと試みる彼/彼女たちは
 それぞれに様々な事情を抱えていました。

 愛する犬や猫や鳥たち、
 あらゆる動物のために、
 力を振り絞らなければならない事情が。

 墓守の青年が、そんな人びとにかける言葉とは……?

「それはァ、たぶんッ!」
「がるるるぐる!」(←訳:ひとすじの光!)

 《陰》のような、と見えながら、
 その実は《陽》も、光も、しっかり内包する5編の短編作品は、
 夜道に迷う旅人を導く北極星となって、
 廃墟の花苑への道筋を照らします。

 
 動物とともに暮らした経験を持つひとには、
 涙なくしては読めない物語、かもしれません。
 けれど、
 ワンコやニャンコが与えてくれる喜び、笑い、温もりを思い出しながら、
 ぜひ一読を!
 激おすすめの一冊です!

 

 
コメント
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