テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 遠くて近い、書物の森から ―

2019-08-30 22:00:00 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ふひゃァ! うえをォしたへェのォ、おおさわぎィ~!」
「がるる!ぐるるるがる!」(←訳:虎です!ドタバタです!)

 こんにちは、ネーさです。
 えー、我が家には現在、
 知人さんの愛犬ちゃんがショートステイ中で、
 そのお世話に明け暮れております。
 抱っこしたり撫でたり、と
 腕は筋肉痛気味ですが(ふぅ~)、
 ワンコちゃんのお昼寝中は、
 ちょこっとリラックスしての平和な読書タイムを、
 こちらの御本で、さあ、どうぞ~♪
 
  


 
        ―― 夢見る帝国図書館 ――



 著者は中島京子(なかじま・きょうこ)さん、
 2019年5月に発行されました。
 御本の表紙は……皆さま、お気付きでしょうか、
 パッと見では少々分かりにくいかもしれませんけれど、
 イラストや写真ではなくて、
 ミニチュアなんです!

 mondeさんというクリエイターさんが制作している
 《路地裏bookshelf》シリーズの中のこの作品は、
 本と本に挟まれて、
 細い路地と小さなお家が照明に浮かび上がっている……
 これは、ドールハウスの一種というべきでしょうか。

「このォいめーじィ、たいせつゥなのでス!」
「ぐるるがるるる!」(←訳:憶えておいてね!)

 書物と、小さなお家。

 しかし、物語は、非常に広々とした、
 大きな空間から始まります。

 上野公園のベンチ、
 それも5月の終わり頃の
 噴水の見えるベンチといえば、
 子どもたちの歓声と、
 ハトたちの羽音が聞こえてくる気がしますでしょ?

「おてんきィ、じょうじょうゥ~♫」
「がるるぐるがる!」(←訳:青空が良い感じ!)

    うららかな、とてもいい日。

 語り手の《わたし》も、そう思います。
 
 ライターのお仕事をしている《わたし》は、
 上野公園の奥まった場所にある
 国際子ども図書館の取材を終え、
 公園のベンチに腰掛けました。
 
 すると、そこへ。

「だれかァ、きましたでス!」
「ぐるがっる?!?」(←訳:隣に座った?!?)

 短い白い髪、
 端切れを縫い合わせて作ったコートは、
 動物園の孔雀もかくや?

 喜和子(きわこ)、と名乗ったその女性は、
 初対面の《わたし》をタバコの煙で咳き込ませ、
 金太郎飴をくれて、と
 《わたし》のふところにぐいぐいと入り込んできます。

「だからァ、ついィ~」
「がっるぅっる!」(←訳:喋っちゃった!)

    《わたし》は物書きです。

    小説、書いているんです。

 喜和子さんに、あんた学生さん?と訊ねられ、
 いつのまにか答えている《わたし》。

 喜和子さんはそんな《わたし》に返します。

    じゃあ、書けたら見せてよ。
    うんと楽しみにしてるから。

「はいッ!」
「ぐる!」(←訳:はい!)

 ほんの短い間の、
 偶然の出会い。

 それきり会うこともないだろう、と
 《わたし》は考えました。
 
 ところが、8月、
 またも子ども図書館の取材で上野に来た《わたし》の前に。

「あッ?」
「がるるぐる!」(←訳:喜和子さん!)

 再びの出会いに、
 親交は一気に進みます。

 東京藝大の先の細い道を抜けた先の、
 そこだけ江戸時代?な狭い家に《わたし》を招き、
 喜和子さんは言ったのでした。

    あんたに折り入って、頼みがある。

    上野の図書館のことを書いてみないか。

「としょかんッ?」
「ぐる?」(←訳:書く?)

 図書館――
 《わたし》と喜和子さんを
 はからずも結びつけたもの。

 そして、
 図書館を作ったひと、
 育てたひと、
 通ったひと、
 そこで泣き、笑い、励まされたすべてのひと。

 上野の図書館の、
 いえ、あらゆる図書館の、
 さらには喜和子さんと《わたし》の物語が、
 ぐぅんと根を張り、
 枝葉を伸ばしてゆきます。
 書物の中に、
 書庫の中に、
 《わたし》の中に。

「いまもォ、つづいてまス!」
「がるるるぐるる!」(←訳:図書館が見る夢!)

 喜和子さんの夢は、
 《わたし》の夢は、
 何処へ漂い流れてゆくのか。
 それを、図書館は知っているのか――

 博物館、美術館、図書館、動物園が集う、
 上野の山を愛する方々に、
 そしてもちろん活字マニアさんに
 心よりおすすめしたい《夢ものがたり》、
 著者・中島さんに拍手を送りつつ、
 どうか皆さま、ぜひ一読を♫
 

 
 
コメント
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