テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 白と赤の椿 ~

2024-09-30 22:03:19 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 こうようゥ、はじまッてまスゥ!」

「がるる!ぐるるがるる~!」(←訳:虎です!まずはサクラ~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 桜の葉が赤く色付いてきたせいでしょうか、

 黄金色の栗ご飯を炊きたいな~などと夢想しながら、

 さあ、秋の読書タイムですよ。

 本日は、こちらの文庫作品を、どうぞ~♪

  

 

 

          ―― 琴子は着物の夢を見る ――

 

 

 著者は ほしおさなえ さん、2024年8月に発行されました。

 着物をめぐるミステリアスな物語は、

 なんと、ここ八王子市が舞台ですよ。

 

「ひょえッ?」

「ぐるがるるる~!」(←訳:うわホントだ~!)

 

 えーと、少しだけ説明させていただきますと、

 20世紀の半ば頃までの八王子市は

 《織物の町》

 でありました。

 

 そもそも多摩エリアは養蚕業が盛んな土地で、

 蚕の卵や生糸(絹糸)を集積・輸送して

 海外へ輸出するための重要な拠点の一つでした。

 現在、横浜と八王子を結んでいる

 JR横浜線(旧国鉄横浜線)も、

 生糸をできるだけ速く横浜港へ送ることを目的に

 敷設されたものなのだそうです。

 

「ゆしゅつゥ、だけじゃないィのでスゥ!」

「がるるるぐるが~る!」(←訳:織るのも得意で~す!)

 

 ええ、そうなんです。

 国内向けにも、

 蚕を育てて、絹糸を縒って、

 織り上げて反物(たんもの)にする。

 

 ということで、

 桐生市や高崎市など

 上州の都市ともリンクして、

 《織物の町》八王子は発展していった……のですが。

 

「ひゃくねんッ、たちましたでス!」

「ぐるるがるるるるるる……!」(←訳:明治は遠くなりにけり……!)

 

 20世紀後半になると、

 生糸・絹織物産業は徐々に下降線を辿ります。

 八王子のそこここにあった絹工場(きぬこうば)は消え、

 また同時に、

 呉服店さんも減ってゆきました。

 

「じだいのへんかァ、でスゥ~…」

「がるるぐるる~…」(←訳:寂しいけどね~…)

 

 そんな状況の中、

 この御本の主人公さんたちが営む

 『本庄(ほんじょう)呉服店』さんは、

 なかなかの健闘っぷりです。

 

 しっかりした店舗を構え、

 昔馴染みのお客さまと昔ながらの商いをし、

 その一方で、

 オンラインでの販売や、

 古い着物の買い取り・販売も行っているんです。

 

「あはァ、なァるほどォ!」

「ぐるるぅーるるるがるぐる!」(←訳:アンティーク品は人気あり!)

 

 琴子(ことこ)さんのお仕事は、

 リユース着物のお店『本庄の蔵』で、

 着物の査定をすること。

 

 お店に持ち込まれてくる着物の質を見定め、

 値段をつける作業をしたり、

 依頼されれば、

 買い取りのため、出張したり。

 

「こんかいはァ~」

「がるぐ~る!」(←訳:出張で~す!)

 

 国立市にある大きなお家に伺って、

 お祖母さまの遺品だという

 たくさんの着物を査定してみれば、

 どれも質が良く、保存状態も良好でした。

 

 けれど、一枚だけ。

 

 ただならぬ気配が……?

 

「ふむむッ?」

「ぐるがるぐるる?」(←訳:この着物ですか?)

 

 それは『銘仙(めいせん)』と呼ばれる

 大正から昭和にかけて流行したもので、

 特に女学生さんに好まれたと伝えられています。

 

 その『銘仙』に

 琴子さんは不穏な何かを感じました。

 

 白と赤の、椿の文様。

 花の奥から、声がする……。

 

「こッ、こえェッ??」

「がるるぐるー?」(←訳:突然のホラー?)

 

 実は琴子さん、

 ”着物の心がわかる”ひと、なんです。

 

 椿の『銘仙』は、

 彼女の目に、耳に、

 どんな宇宙を見せ、囁いてくれるのか――

 

 世紀を隔ててつながる

 琴子さんと着物の物語は、

 日本の近代史そのもの、でしょうか。

 多摩っ子さんはもちろん、

 アート好き&着物好きな方々、

 歴史好きな活字マニアさんも、

 本屋さんの文庫コーナーで、

 ぜひ、探してみてくださいね~♪ 

 

 

コメント
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