日本が折角の産業炉ロボット世界一の座を明け渡したようです。何とも勿体ないことをしたものです。
このロボットを使って外国人を奴隷労働させる恥を止めるべきことこそがやるべきことだったのにみすみす世界一の座を明け渡すようでは日本の未来は危ういでしょう。
宮崎さんが取り上げてくれています。それにしても、家電や半導体などに続いてロボットまで世界一を明け渡した情けなさはもうどうにもならないのかも。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和五年(2023)11月29日(水曜日) 通巻第8028号
産業ロボット世界一の座から日本は転落した
世界ロボット工場の50%が中国に移行していた
1982年に筆者が『エリートビジネスマン・ロボット』(山手書房、絶版)を上梓したときの日本の産業状況は次のようだった。41年前のはなしである。
自動車生産でも塗装や部品取り付け、車体カバーのはめ込みなど3K現場がロボットに代替されつつあった。メディアはOA(オフィスオートメーション)に続いてFA(ファクトリーオートメーション)で技術革新が叫ばれていた。
コピィ機がFAXを兼ね、カラー印刷ができるようになるのは数年後だった。
他方、ロボット導入は雇用が失われると反対の狼煙はフランスから上がり、全米労組に拡大した。日本はむしろ3kから開放されるので労組に反対はなく、また生産現場ではロボットに愛称をつけた。外国人記者は奇妙視して報じていた。
産業ロボットの発展はますます精密化し、たとえば銀行証券の窓口へいくとロボットの受付嬢がいる。ペット替わり愛玩ロボットが増えた。ケアセンター、老人ホームでは体操指導ロボットが投入され、そのうち精巧なダッチワイフ・ロボットができる。
アマゾンに本でもTシャツでも食品でも良いが、注文すると、倉庫の何百万種の商品棚を掻き分けて、ロボット(人間のかたちをしていない)が商品を選別 し、連動するラベルの箱に梱包し、目的地別の配送センターへ持ち込むまで、完全にロボットが作業する。古本屋を探しても見つからない書籍が、アマゾンを検 索すると古書ルートで発見されることも多く、新刊本なら即日か翌日、古本でも三、四日で配達となる。これが産業ロボットの成果である。
この産業ロボットで世界一の筈だった日本が、いつしか中国にトップの座を奪われていた。
下記のグラフが象徴的だろう。
1図 従業員一万人に比較してのロボット投入台数
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韓国 1000台
日本 399台
ドイツ 397
中国 322
スウェーデン 321
米国 274台
スイス 240
イタリア 217
カナダ 191台
フランス 163台
(フランスが最も遅れている。出典 2021 STATISTA)
上図から僅か一年後、中国が躍進している。
2図 産業ロボットの新規投入数(2022年)
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中国 29万基
日本 5万
米国 4万
韓国 3万2000基
ドイツ 2万6000
イタリア 1万2000
台湾 8000
フランス 7000
ここでも中国の発展は瞠目すべき数字となって現れている。
さてロボットの象徴は、ウクライナ戦争、イスラエルvsハマス紛争でも明らかになったようにドローンである。軍事用ドローンは技術的にアメリカがリード するのは当然だろうが、タレス・グループ、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンが牽引し、そのあとを追うのがイスラエル、トルコ、フランス、ス ウェーデン、中国、そしてインド、パキスタンなどが加わる。日本は軍事ドローンを生産していない。そればかりか発想さえ覚束ない。
民生用ドローンは世界シェアの80%が中国である。
中国深センが拠点の「DJI」一社だけで世界の70%、次がフランスのパトロール社、三番では米国の「3Dロボッティックス」社となっている。
日本は精密機器とレンス技術があり、撮影、偵察、観測用(地図の作成)などに用いられるが、これを軍事に転用しているが米国、中国ということになる。
ロボットに対する基本認識を日本は改める必要があり、民生用、産業用だけの視野狭窄的な技術の研究開発だけに留まらず国家安全保障という全体の流れとの整合性に繋げるべきではないか。
何とかもう一度ロボットで世界制覇を目指して貰いたいものです。このままジリ貧になるのは余りにも情けない。
これこそが、日本の衰退の象徴じゃないでしょうか。