昨日は超大規模太陽光発電、一昨日はドイツの太陽光発電の話題を取り上げましたが、世界の市場動向についての面白い記事がありました。
今までこの部屋で取り上げてきた世界の動きが分かりやすくまとめられていて参考になりますので少々長くなりますが取り上げたいと思います。
株式会社富士経済より
富士経済マーケット情報
世界の太陽電池技術と市場の動向を調査
2010年度の太陽電池世界市場予測 2兆7,700億円超、06年度比3.7倍
日本から欧州、北米、中進国、発展途上国へと市場拡大、脱シリコンの多様な技術開発
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 阿部界代表取締役)は、07年1月から7月にかけて、太陽電池関連業界の展望と注目企業の動向を把握する調査を行なった。その結果を調査報告書「2007年版太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。
調査の対象は、太陽電池では、単結晶シリコン太陽電池から色素増感太陽電池、それにその他・新型太陽電池まで8品目。材料・部品では、ポリシリコン、増感色素、酸化チタンペーストなど7品目、システム部品2品目、アプリケーションでは、住宅から、デジタルカメラ、腕時計、RFID(近距離無線通信)タグまで13品目の市場有望性を調査した。また、関連の注目企業11社の動向の把握に努めた。
◆調査結果の概要
(1)全体市場の動向
この調査では、再生可能エネルギーの一つである太陽光エネルギーの普及に不可欠な太陽電池市場に焦点を当てた。『ポスト京都議定書』では各国・地域レベルで温室効果ガスの大幅な削減目標が新たに掲げられることになっており、対策としてますます再生可能エネルギーの普及による削減の重要性が高まっている。
現在、太陽電池市場は技術的なターニングポイントを迎えている。ここ数年、主流の結晶系シリコン太陽電池が原料のシリコン不足の影響で需要を充分に満たせなかった。業界はシリコンに依存しない太陽電池の開発に力を注いでいる。太陽電池の技術は、第一世代の結晶系シリコン太陽電池、第二世代のアモルファスシリコン系太陽電池を経て、第三世代の化合物系太陽電池、第四世代の球状シリコン太陽電池や色素増感太陽電池へと向かっており、今後どの太陽電池が主流となっていくか、または各太陽電池がどのように棲み分けていくかが注目される。
ポスト結晶系シリコン太陽電池には、既に市場がある薄膜タンデム型太陽電池、薄膜で今後大規模な量産が予定されているCIS系太陽電池、球状や線状モジュールも製作できるほどデザイン自由度に優れる球状シリコン太陽電池、カラー化・透明化などが可能で、装飾品素材としても利用できる色素増感太陽電池などがある。薄膜タンデム型太陽電池とCIS系太陽電池はボリュームゾーンを狙った市場開拓を推し進め、また、球状シリコン太陽電池と色素増感太陽電池は独自の特徴を生かして全く新しい用途を開拓していくと見る。但し球状シリコン太陽電池は光電変換効率が結晶系シリコン太陽電池に匹敵するレベルに改善されれば、そのシェアを奪うことも可能である。色素増感太陽電池も光電変換効率向上の余地があり、カラー化などの特徴で独自路線を歩む以上に、低製造コスト・低価格を活かして躍進する可能性を秘めている。また06年度の段階で既に一定の市場規模を築いている結晶系シリコン太陽電池は2008年度以降にシリコン原料不足の解消が進み、さらに市場拡大すると予測する。
(2)世界の太陽電池市場予測
06年度 7,570億円 2010年度予測 2兆7,716億円 06年度比3.7倍
■国内 06年度 1,246億円 2010年度予測 2,162億円 06年度比1.7倍
06年度は住宅用システム向け補助金制度の打ち切り(05年10月)や品不足により、市場は縮小に転じたが、環境意識の向上により太陽電池への関心は高まっている。産業用メガソーラー(大規模太陽光発電システム)導入の動きも期待される。国内メーカーの技術力及び層の厚さにより、多様な太陽電池の開発が行われ、国もそれを支援している。従来の電機メーカーから、材料メーカーさらには石油メーカーや自動車メーカーなどへと、参入メーカーも多様化している。中でも、CIS系太陽電池での展開を目指すホンダソルテックや昭和シェルソーラーなどは異業種からの代表的な例として挙げられる。今後は、補助金制度の打ち切りを経て、国内市場は自律した発展を目指すことになる。
■海外 06年度 6,325億円 2010年度予測 2兆5,554億円 06年度比4.0倍
フィードインタリフ制度によりドイツは今や太陽電池先進国の日本を抜き世界最大の市場となった。米国もカリフォルニア州で太陽光発電を含む再生可能エネルギー優遇策により需要が急増している。アジアでは中国都市部・韓国・台湾などで需要が出てきている。さらには、ODAや世界銀行などの支援を受け、発展途上国へ需要が広がっていくと見られる。海外の太陽電池市場は2010年度まで年率40%超の成長が続くと予測される。種類別では、CIS系と薄膜タンデム型の躍進が期待され、CIS系は北米地域の現地メーカーの設立が相次ぎ今後順次製品が市場投入される見通しである。
◆今後注目される太陽電池市場
2010年度までの3年間では、第1世代の単結晶と多結晶シリコン太陽電池が市場の主流を占める事に変わりはないが、シリコン原料の逼迫により、シリコン依存度の低い又は全く依存しない太陽電池開発が進み、これら新世代太陽電池の存在感が高まっていく。注目される太陽電池としては、CIS系太陽電池、薄膜タンデム型太陽電池、色素増感太陽電池、球状シリコン太陽電池などが挙げられる。
(1) CIS系太陽電池 06年度 45億円 2010年度予測 4,725億円 06年度比105倍ki
主成分である3元素の銅(Copper)・インジウム(Indium)・セレン(Selenium)の頭文字をとった薄膜化合物系太陽電池で、シリコンを使用しない太陽電池である。薄膜系太陽電池の中では光電変換効率が最も高い部類に属する。また長期安定性も実証されて、低コスト高効率薄膜太陽電池として期待される。素子が黒色のため太陽光の吸収率が高く、またシックで落ち着いたブラックフェイスでビジュアル性に優れ、同時に様々な屋根にフィットするなどデザイン性も高い。薄膜化により材料使用量を低減でき、また結晶シリコン系に比べて製造工程が単純化される点でも、低コスト化の可能性の高い製品である。06年度の市場は、海外メーカーのWurth (ドイツ)とGlobalSolar(米国)の実績がある。国内メーカーでは昭和シェルソーラーが07年度から販売を開始する。またホンダソルテック(本田技研工業100%子会社)もCIGS系太陽電池(インジウムの一部をガリウムで置換)市場に参入する予定である。
(2)色素増感太陽電池 07年度見込 35億円 2010年度予測 581億円 07年度比16.6倍
色素増感太陽電池は光電気化学反応によるものであり、他の太陽電池とは発電するシステム(仕組み)が全く異なる。その基本構造はスイス・ローザンヌ連邦工科大学のマイケル・グレッチェル教授が開発し、グレッチェルセルと呼ばれる。製造工程がシンプルであることから設備投資も1桁違うと言われており、製造コストは結晶系の半分~10分の1程度と考えられている。変換効率の向上が実用化の課題となっている。最初に量産化を実現するのは海外メーカーのG24i(イギリス)と見られ、量産時期は07年度になる見通しである。国内メーカーの展開は08年度と見られる。
欧州・北米地域では屋根設置型以外の建材用途での需要が多くあり、それらの需要を取り込みたい。国内市場では、2010年度に屋根材以外の建材の需要が出てくると見られる。さらに、2015年度に屋根材としての用途が生まれると期待される。
(3)球状シリコン太陽電池 07年度見込 20億円 2010年度予測 288億円 07年度比14.4倍
欧州での需要増大に加え、省シリコン太陽電池への追い風があり、現在主流の結晶系シリコン太陽電池との競合が懸念される中、市場がスムースに立ち上がるシーンも考えられる。産業用をターゲットとするフジプレアムが、市場拡大を牽引すると予測される。さらに発電効率が高まれば、製造コスト面の優位性を生かして、競合太陽電池に対して優位な展開シナリオも想定される。
参入メーカーは、フジプレアム、京セミ、京セラの3社である。フジプレアムが最も量産化に近く、クリーンベンチャー21と共同開発による「集光型球状シリコン太陽電池 CBセル」を製品化する。07年度中に完成予定の量産工場でまずは月産1MW程度の製造・販売を行い、その後連続して増強・増産する計画である。京セミは小型の球状シリコン太陽電池モジュールを試作、愛知万博に参考出品した。京セラは研究開発中で未発表であるが、多数の関連特許を出願しており、開発は最終段階に入っていると見られる。 -----富士経済マーケット情報、2007/09/11
ここまで分かり易くまとめているものは始めてみました。この部屋でも何度も取り上げてきた球状シリコンの予測まで触れられていて余りにきちんとした数字が出ているので却って本当だろうかと思ってしまいます。
それにしても、この予測で行けば太陽光発電の前途は洋々たるものがありますね。尤も、その中で日本の市場は世界から比べると半分以下の成長しかないとの予測です。新しい内閣が突然変異のように太陽光発電に力を注ぐとも考えられないので、やはり日本の遅れはどうしようもないようです。
日本の未来を託すまともな政府は出来ないものか!