世界で日本の企業が頑張っているという記事を 読むと嬉しくなるのは私だけではないでしょう。特に、小さな会社が活躍しているとなると猶更嬉しくなります。
そんな企業が紹介された記事がありました。ユニ・チャームとコミーの2社ですが、チャームはそれなりに日本では有名 なので今回はコミーという私にとっては初めて聞く会社に興味を持ちました。
商品自体も消費財でもないどちらかと言えば特殊なもので、私も見た覚えがないものです。そんな商品が世界のシェアー を抑えているそうです。
Business Media 誠より
世界で売れてる、日本発のヒット商品:
な ぜ海外でウケたのか? ユニ・チャームの紙オムツとコミーの業務用ミラー
ユニ・チャームの紙オムツがインドネシア市場で伸びている。業務用ミラーを扱うコミーの鏡が世界中で支持されてい る。なぜ両社の商品は、海外でウケて いるのか。その理由について、マーケティングに詳しい永井孝尚さんに話を聞いた。 [土肥義則,Business Media 誠]
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世 界シェアトップのコミー
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永井: 業務用のミラーを製造・販売しているコ ミーという会社をご存じ でしょうか。コンビニや書店の天井、ATMの後方確認、車庫の安全確認用などに「凸面鏡」(全体に丸みを帯びた鏡)があ りますよね。平面構造でありながら 広い視野角を得られる「FFミラー」という特殊な鏡を開発していて、国内シェアは8割。世界シェアもナンバーワンの会社 は埼玉県の西川口にあって、従業員 は14人。
2007年に初就航して話題になりましたが、大型ジェット旅客機「エアバスA380」の手荷物入れの上部に、FFミ ラーが装着されているんですよ(関 連記事)。業務用ミラーでシェアを独占しているコミーは、なぜ航空業界で採用されたのか。「フレームワーク」で整理する とよく分かります。
街中に設置されている業務用ミラー(出典:コミー)
土肥: では、順番に質問させていただきます。まず、コミーの強みは何でしょうか?
永井: 業務用ミラーの使い方を熟知していること。同社の平面ミラーは凸面鏡のように広い範囲を見ることができて、 樹脂製で軽く傷つきにくい。また、両面テープで取り付けも簡単なんですよ。
土肥: その強みを必要としているお客さんは誰でしょうか?
永井: さまざまな業界で使われていますが、航空業界で考えると、4つに分かれます。実際に使うユーザーは、乗客、 客室乗務員、航空会社。そして、購入するのは、ボーイングやエアバスなどの航空機製造メーカーです。
土肥: その人たちは何を必要としているのでしょうか?
永井: 乗客は降りるときに、忘れ物をしたくないですよね。そのときに、このFFミラーが役立つんですよ。客室乗務 員は乗客を降ろしたあとに、忘れ物 がないかどうかチェックしなければいけません。手荷物入れは高いところにあるので、台などにのぼって確認しなければいけ ない。でもそれでは時間がかかって しまいますよね。そこでFFミラーを装着すればすぐにチェックできるので、時間が大幅に短縮できます。
そして航空会社にとっても、忘れ物の確認時間が短縮できればメリットが大きい。特に格安航空会社(LCC)が増えて いることからも分かるように、最近 の航空機は1日に何回も飛びます。発着時間を短縮できれば、1日に飛ばせる便数も増やせます。また普通の鏡は1枚800 グラムくらいあるのに対し、FFミ ラーは30グラム。乗客数百人分のミラーで乗客1~2名分軽くできるので、席数も増やすことができます。そうすれば、航 空会社の売り上げがアップしますよ ね。
航空機製造メーカーは、乗客、客室乗務員、航空会社の要望を満たしたうえで、割れない、燃えない、傷つかない、さら に薄いミラーを必要としています。
土肥: ではフレームワークの4つめ、お客さんがコミーを選ぶために、何をしたのでしょうか?
永井: 従来の自社ミラーは重かったので、特殊プラスチックを使って軽量化を図り、また耐火性もアップさせました。 さらに、航空機メーカーが購入する ためには各国における航空局の各種承認取得が必須なので、これを取得しました。結果、エアバスA380やボーイング 787などで標準装備され、ミラーの出 荷累計は20万枚を超えました。
土肥: うーん、でもモヤモヤしますね。コミーは技術力があったから、ここまでシェアを高めることができたのではな いでしょうか。
永井: いえ、それは違うんですよ。コミーは最初から技術力があったわけではありません。同社の本業は看板業で、そ の一環で回転看板を作っていまし た。ある展示会で、「この回転看板を両面ミラーにしたら面白そうだ」と考えて、天井から吊るして展示したんですよ。する と、その場で30枚の注文がありま した。
土肥: おー。
永井: 数カ月後、お客さんがミラーをどのようにして使っているのかを見に行ったところ、万引き防止用に使っていま した。これは想定外。コミーは業務 用ミラーという、これまで誰も気がつかなかった市場に大きな需要があることに気づいたんですよ。それ以来、同社はお客の 現場で使い方を学びながら、業務用 ミラーの技術を磨いています。
コミー本社で衝突防止用ミラーを見せていただいた際に、「そういえば、先日、オフィスで人とぶつかってしまっ て……」と話したところ、すぐに開発部長 が飛んできました。何事かなと思っていたら、そのときの状況を聞かせてほしいとのことでした。質問攻めにあってしまい、 1時間ほど話してしまいました。何 が言いたいかというと、同社の強みは、業務用ミラーの使い方を真剣に考え続けていることです。お客さんの課題を見つける ことに、ものすごく貪欲で、それを 商品開発のヒントにしているんですよね。…以下略
こんなミラーがあるとは知りませんでした。なかなか面白そうなものですね。気を付けていたらまだまだ用途がありそう な気がします。簡単に取り付けられるので家庭でも使う用途はあるかもしれません。
こうやって見ると、一生懸命に考えると思わぬアイデアというものは出て来るものなのですね。こんなところにも日本人 の気配りが活かされているのかもしれません。