◇SAYURI(2005年 アメリカ 146分)
原題 Memoirs of a Geisha
staff 原作/アーサー・ゴールデン『Memoirs of a Geisha』
監督/ロブ・マーシャル 脚本/ロビン・スウィコード ダグ・ライト
製作/ルーシー・フィッシャー ダグラス・ウィック スティーヴン・スピルバーグ
撮影/ディオン・ビーブ 美術/ジョン・マイヤー
衣裳デザイン/コリーン・エイトウッド 音楽/ジョン・ウィリアムス
cast チャン・ツィイー ミシェル・ヨー コン・リー 渡辺謙 役所広司 桃井かおり
◇独立した物語と捉えたい
小さい頃、うちにはたまに芸者さんが遊びに来てた。
花柳界の人はやっぱり素人さんとは違ってて、
それがたとえでっぷりと太った芸者さんだったりしても、
所作や喋り方が小粋で、いうにいわれぬ迫力があった。
祖母や母親から、
「あの人は、こんなふうに苦労もしてね」
と聞かされたことがあったりして、
「へえ、そうなんだあ」
と納得したりもしたけど、
ぼくに声をかけて、笑い話とかしてるときは、まるで苦労してるようには見えず、
おおきくなってから、あの人たちは気丈な人達だったんだなとおもったもんだ。
でも、
その明治や大正生まれの芸者さんたちは、もうみんな過去の人になっちゃった。
で、この映画だ。
個人的には、きわめて面白かった。
ただ、原作がそれなりに物議をかもしたことがあって、
それと、キャスティングについてもそれなりに物議がかもされたりして、
なんといったらいいのか、神経質に見てしまいがちな作品ではあるんだけど、
映像化された作品そのものは、
日本という国が欧米に勘違いされて解釈されていた時代とはやや違って、
ぼくは、納得した。
もちろん、
舞台はあくまでも戦前の京都だし、
たしかに置屋や舞妓や芸者の世界を扱っているから、
ほんとのところどうだったんだろうってことは、
ぼくみたいなすっとこどっこいの知るはずのないところなんだけど、
でも、映画という監督の芸術的な領域を尊重する銀幕世界においては、
それなりのリアリティと、非常に美しい映像と、納得のゆく展開で構成されてた。
リドリー・スコットが日本でロケーションした『ブラック・レイン』もそうだったけど、
「どうしてハリウッドが日本で撮影すると、こんなに凄い映像になるんだろう?」
と、素朴におもった。
上手な映画だったし、
チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、コン・リーの三人は、
日本人の役を彼女らなりにしっかりとこなしてた。
美術も、音楽も、これまた然りだ。
ただし、戦後の日本は、戦前の日本とかなり違っていて、
ことに花街の状況は一変してしまっているはずで、
当然、芸者さんや舞妓さんの立場もかなり変化しているわけだから、
そういうところは、心して見ないといけないよね。