Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

イングリッシュ・ペイシェント

2013年07月27日 23時36分37秒 | 洋画1997年

 ☆ングリッシュ・ペイシェント(1997年 アメリカ 162分)

 原題 The English Patient

 staff 原作/マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』

     監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ

     撮影/ジョン・シール レミ・アデファラシン

     美術/スチュアート・クレイグ ステファニー・マクミラン ジョン・ブッシュ

     衣裳デザイン/アン・ロス ゲイリー・ジョーンズ 音楽/ガブリエル・ヤーレ 

 cast レイフ・ファインズ クリスティン・スコット・トーマス ジュリエット・ビノシュ

 

 ☆ふたつの壁画

 レイフ・ファインズの演じた、ラズロ・アルマシーっていうハンガリー系の貴族の末裔だけど、どうやら、オーストリアはブルゲンラント州のベルンシュタイン城に生まれたらしい。ベルンシュタイン城は、五角形の城壁をもち、ひとつの塔を備えた簡素な城で、いまは売却されてしまい、ホテルになってるそうだ。ともかく、そこで育ち、飛行士の免許も取得して、オーストリア=ハンガリー帝国の空軍に所属して、欧州大戦に出征したらしい。エジプトに出かけたのはその後で、目的は探検だったようで、パトロンになってたのが英国人のロバート・クレイトン卿だったようだ。クレイトン卿にはドロシーっていう奥さんがいるけど、彼女が探検に参加したのは、クレイトン卿が砂漠で病死してからみたいね。で、ドロシーが飛行機の墜落事故で死んだのはイギリスに戻ってからで、このあたりのことは戦前の話らしい。探検の後、アルマシーは砂漠で飛行機の操縦を教えてたんだけど、ハンガリーがドイツに併合されてしまったことからドイツ空軍に所属したみたいだ。けど、戦争の形勢が悪くなったあたりに、祖国ハンガリーがドイツに抵抗し始めると、アルマシーもイギリス諜報部と連絡をとるようになり、情報を提供してたんだと。で、アルマシーがいつ死んだかといえば、戦後の1951年、ハンガリーに戻ってからで、病死らしい。

 だから、映画の中身と事実とはかなり違ってることがわかるんだけど、かれらが見てた「泳者の洞窟」は、実際にある。エジプトの南西、Wadi Sora ってところで、the cave of swimmersっていう。つまり「泳者の洞窟」だけど、この映画は、壁画がふたつの恋愛劇を結び付けるときの象徴にもなってる。恋人と親友を失ったジュリエット・ビノシュが、あらたな恋の相手になったシーク兵の中尉がロープで吊って、中世の壁画を眺めていく場面は、なんとも美しい。恋は儚く、人間の死と共に終わりを告げてしまうんだけど、絵画はそれが風化して消え去ってしまうまで残り、後の恋人たちを結びつける。そんなことをいってるように感じちゃう。現代だったら、美術館なのかな?

 でもな~、やっぱり、足を延ばして描かれたままの状態で残ってる絵を見ないと、燃え上がる恋にはならないのかもしれないね。日本だと、何処にあるんだろ?

コメント