◎ブリューゲルの動く絵(2011年 ポーランド、スウェーデン 96分)
原題 The Mill and the Cross
staff 製作・監督/レヒ・マジュースキー
脚本/レヒ・マジュースキー マイケル・フランシス・ギブソン
撮影/レヒ・マジュースキー アダム・シコラ 美術監督/スタニスワフ・ポルチェク
美術/カタジーナ・ソバンスカ マルセル・スラヴィンスキ
衣裳デザイン/ドロタ・ロクエプロ メイク/ダリウス・クリシャック モニカ・ミロフスカ
SFX・VFXスーパーバイザー/パヴェウ・ティボラ
音楽/レヒ・マジュースキー ヨゼフ・スカルツェク
cast ルトガー・ハウアー シャーロット・ランプリング マイケル・ヨーク
◎1564年『十字架を担うキリスト』
16世紀、フランドル絵画の代表画家ともいえるピーテル・ブリューゲルは、
農民画家とか呼ばれてるけど、けっこう、SF的なものを扱った観がある。
また、人物の描写はきわめて写実的ながら、
全体の構成は、けっこう、シュールだったりする。
そんな不思議な印象を与えてくれる画家なんだけど、
その数ある作品の中でも『十字架を担うキリスト』は超大作だ。
この絵を、そっくりそのまま映像化しようとしたのが、この映画だ。
しかも、絵の中に入って、絵のその瞬間に至るまでの話を描いている。
いや、それだけじゃなく、
この絵をブリューゲルが書くきっかけとなった、
スペイン国王によるネーデルランドの民衆への迫害に対する怒りも描かれてる。
つまり、
絵を描くことにいたったブリューゲルの日常と、
絵の中に封じ込められた民衆の迫害されるありさまと、
さらにネーデルランドの状態について、
キリストが磔にされた際の状態と酷似しているのではないかという、
ブリューゲルの感想と、
「その感想をそっくりそのまま描いてはどうか」
と勧める銀行家に美術収集家ヨンゲリングについて、
なにもかも一緒くたにしたのが、この映画だ。
ブリューゲルは絵の中で、ふたつの時代を混合してみせたけど、
この映画はさらに画家そのものの時間もまた混合してる。
台詞は少なく、あってもおもわせぶりなものが多く、
聖母のマリアの祈りは、
すなわち、フランドルの民衆の祈りでもあるという二重構造になってる。
だから、なんとも小難しい構成にはなってるんだけど、
そんなことはもういいわってくらいに絵が綺麗だ。
4年を費やして製作されたCGと実写はあまりにも見事で、
どのショットもまるで絵画を観ているような感じがする。
よく撮ったもんだ。