◇ハングオーバー!!! 最後の反省会(2013年 アメリカ 100分)
原題 The Hangover Part III
staff 監督/トッド・フィリップス 製作/トッド・フィリップス ダン・ゴールドバーグ
脚本/トッド・フィリップス クレイグ・メイジン
キャラクター創造/ジョン・ルーカス スコット・ムーア
撮影/ローレンス・シャー 美術/メイハー・アーマッド 音楽/クリストフ・ベック
cast ブラッドリー・クーパー エド・ヘルムス ザック・ガリフィアナキス ケン・チョン
◇もうしません
作品がパワーアップするということはどういうことなのかというと、
なにも予算が膨れ上がったから、
ど派手なアクションをするとか、海外ロケをするとか、高額ギャラのゲストを呼ぶとか、
そういうことじゃないってことが、この頃のハリウッドは忘れてしまってるらしい。
脚本にお金と時間をかけないとダメなんだよね。
そうしたことからいうと、
1作目の脚本を担当したジョン・ルーカスとスコット・ムーアのセンスは、
けた外れだったんじゃないかなっておもえてくる。
たしかに2作目は、1作目を踏襲して、なんとか頑張ってた。
ど派手なアクションはどんどん出てきたけど、
舞台をバンコクに持っていったことで妙な熱気が入り込んで、
グロさもあるものの、ぎりぎりのところで笑っていられた。
でもそれは、いちばん最初に「ハングオーバー」してるからだ。
この作品の要はハングオーバーつまり二日酔いすることで、
それが飽きられようとも、続編にするからには二日酔いから始まるのが、
いってみればお約束ってものなんじゃないかな~と。
ちなみに、ぼくはネタバレという言葉が好きじゃない。
ネタというのは話の核心のことで、
物語の後半とかラストのことをいうんじゃないんだけど、
どうも、そういうふうにおもわれてないらしい。
ま、なんにしても、
流行り言葉はむなしい。
略語もむなしい。
だからあんまり使いたくないんだけど、
そうおもわれないよう先に断っておけば、いまから書くのは話の核心でもオチでもない。
物語が終わった後、
まあ、いってみれば、おまけの場面になって、
結局、呑み助どもの「もうしません」なんてのは口先だけってことが判明し、
とんでもない状況での新たなハングオーバーを迎えてたのねと、
多少の未練を残したかたちで終幕させるんだけど、
やっぱり、
訳が判らないパニック状況ってのは、冒頭に持ってこないとダメだよね。
なるほど、たしかに娯楽作品としては、ちゃんと成立してる。
はちゃめちゃなパワーとエログロまじりのギャグも健在だ。
どっと笑えるような感じじゃなく、含み笑い的な感じにはなったけど、
やっぱり、シリーズのフアンとしては、
ハングオーバーしてない物語には肩透かしを食らった気分だろう。
ぼくは、このシリーズの失策はふたつあったとおもってるの。
ひとつは、ザック・ガリフィアナキスを異常者にしてしまったこと。
もうひとつは、ケン・チョンをひきずってしまったことだ。
ザックは、ジョン・べルーシーの再来のような気がしてたから、
『アニマルハウス』のときだって、べルーシーは異常者の役じゃなかった。
けど、どはずれた面白さがあった。
ザックには、そうした役割を2と3で演じてほしかった。
キャラクターは強烈なのもいいんだけど、強烈すぎると過激にならざるをえない。
でも、それは決して得策じゃない。
その人物の設定がどんどん変わって収拾がつかなくなっちゃうからだ。
それは、ケン・チョンにしても同じことがいえる。
品の無さと凶暴性がどんどんとエスカレートしてしまってる。
ただでさえ嫌味で、あまり好かれないタイプの役がらなのに、ね。
どうして、
ザック・ガリフィアナキスとケン・チョンをこんなふうに演出したんだろう?
やっぱり、2が原因だとおもうんだけど、
かれらは(スタッフとキャストは)おもいきり成功して、おもいきり儲けた。
でも、それを吐き出すようなことはしないで、
もっとおもしろいものを作ろうと頑張ってほしいんだよね。
かれらは、インタビューで「ぼくらは、20年、苦労した」と正直にいってた。
それをいえる勇気と自信ができたんだから、3で盛り返してほしかった。
なんてことを、ハングオーバーフアンとしては、なんとなくおもった。
4、作ればいいのに。
反省会は、それからだ。