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判決、ふたつの希望

2022年08月16日 02時38分08秒 | 洋画2017年

 ☆判決、ふたつの希望(L'insulte)

 

 なるほど、ふたつの希望ってことになるんだね。

 おもしろかった。

 パレスチナ難民排除を訴えるキリスト教系の政党のアデル・カラムのアパートのベランダから排水管が出てる。これを、建物の修繕事業を請け負う業者でパレスチナ難民の労働監督カメル・エル・バシャが勝手に直しちゃうことが発端だ。この直した排水管をアデル・カラムが叩き壊し、そうした行為をカメル・エル・バシャが糞野郎と吐き捨て、喧嘩になり、アデル・カラムは肋骨を折られて訴訟沙汰になるんだけど、これがパレスチナ難民の人権問題になり、やがてキリスト教とイスラム教の国を二分する裁判に発展するっていう、いやまあ、すごい映画だった。

 こうした痛々しさはよくわかるんだけど、善後策が浮かばないから困るんだよな。

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僕たちは希望という名の列車に乗った

2022年08月15日 15時05分22秒 | 洋画2018年

 ◎僕たちは希望という名の列車に乗った(Das schweigende Klassenzimmer)

 

 1956年、東ドイツ、鉄鋼の町スターリンシュタット、その進学高校。

 その10月23日に勃発したハンガリーの民衆蜂起に心を傷めると共に、自分たちの未来について考え始め、そして西側への脱出を決めてゆく群像劇ってのは、なんというか、もともと西側に生まれてしまったものだから、実話サスペンスとして受け留めることができるけど、家族も友人も置いて見知らぬ世界へ旅立とうとする決意は並み大抵なことじゃない。

 いや~わかるわ~っていうだけじゃないところが、この重さなんだろうね。

 ロナルト・ツェアフェルトのほかは初見の役者たちで、あ、もちろん、若手だからだけど、みんな、リアルな演技で好印象だし、レオナルド・シャイヒャーとレオナルド・シャイヒャーの恋も四つ葉のクローバーかよっていうくらい時代性があるし、その親友トム・グラメンツもええ感じだし。

 いやあ、ラース・クラウメ、好い演出だ。

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おかえり、ブルゴーニュへ

2022年08月14日 02時08分44秒 | 洋画2017年

 ◎おかえり、ブルゴーニュへ(Ce qui nous lie)

 

 なんとなく葡萄の栽培と葡萄酒づくりの物語ってそれだけで雰囲気の勝利を手にしたような気になるんだけど、このワイン生産者ドメーヌの家名を継いでゆくっていうシンプルは物語は脚本も上手だった。ピオ・マルマイとアナ・ジラルドの兄妹の関係がそうだ。どこにでもありがちな農家のあととり問題と、農家の未来の物語はたいがい筋立てが決まってる。これも父の死がもたらす実家の相続と売買の話なんだけど、セドリック・クラピッシュが上手にまとめてる。

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マダムのおかしな晩餐会

2022年08月13日 01時55分50秒 | 洋画2016年

 △マダムのおかしな晩餐会(Madame)

 

 結局、こうした下品なのか皮肉なのか微妙なところの喜劇には、気分を乗せていこうという気持ちがないと鼻で嗤ってしまうことになる。ことにロッシ・デ・パルマの印象的な顔と演技に気が乗らないとむつかしい。ハーベイ・カイテルやトニ・コレットにはなんの違和感もないし、こんなもんだろうなって感じだけど。

 とにかく、そもそものパーティに出席するのが13人だから14番目の客をメイドから用意すればいいじゃんっていう発想に乗れるかどうかってことで、ここでつまづいてしまうと、そのあとの下品なジョークやメイドだったと知らずに発展する恋愛劇や主人夫妻の思惑などが空回りしちゃうんだよね。

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ザ・フォーリナー 復讐者

2022年08月12日 00時30分09秒 | 洋画2017年

 ◇ザ・フォーリナー 復讐者(The Foreigner)

 

 追いかけられる元IRAの戦士で、北アイルランドの副首相になってるピアース・ブロスナンの構造が二重になってる分、明瞭さに欠けてる。

 年老いて現役を引退してしょぼくれただけの男が実は凄かったっていうのはもはやひとつのジャンルだなとおもったりするが、ここではジャッキー・チェンが中華料理屋の経営者なんだけど実はベトナム共和国陸軍特殊部隊から米軍の特殊部隊員としてベトナム戦争に従軍した凄腕の戦士だったって話なんだが、娘がテロに巻き込まれてその復讐をするって物語で、難民で国を出たときベトナム沖で海賊に襲われて妻と長女を殺されるっていう過去を背負ってるんだけど、その分、尺をとられてる気もするな。

 
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ヒトラー 最期の12日間

2022年08月11日 01時50分28秒 | 洋画2004年

 ◇ヒトラー 最期の12日間(Der Untergang)

 

 アレクサンドラ・マリア・ララ演じるトラウドゥル・ユンゲが主人公で、つまりはヒットラーの秘書の物語であって、ヒットラーは脇役でしかない。

 だからか、ヒットラーが死を迎えるところもカメラはパンしてアウトしてしまい、ヒットラーとエヴァ・ブラウンが自決したところへまたパンしてインしてくる。そのあと30分あまりもあり、それは、コリンナ・ハルフォーフ演じるマクダ・ゲッベルスの子供たちの服毒と夫との心中が延々と描かれた後、トラウドゥル・ユンゲの脱出行を追いかけてる。ブルーノ・ガンツがもう厭きるくらいにがなり続けるヒットラーの最期はさして重要でもないのに延々撮られてる。

 なんだかな~興味が半減しちゃうわ。

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長いお別れ

2022年08月10日 01時43分32秒 | 邦画2019年

 ◇長いお別れ

 

 永の別れ、なんじゃないのか?

 てなことをおもったのと、チャンドラーの『長いお別れ』と区別できないじゃんっていう不満とがごっちゃになってから観てるものだから、なんていうのか、ちょっとね、しょっぱなの印象が好くない。こういう気分のまま観るとなおさら気が乗らなくなるもので、どこにでもありそうなありきたりの家の話かとおもいきや、あにはからんや、かなり特別なとっても幸せな絵に描いたようなどこにもなさそうな幸せな家の幸せな話だった。

 なんだかちょっとね。

 こんな幸せな世界、ありえないんじゃないのか?てなことをおもっちゃうのは、幸せ渇望症だからなんだろう。

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洗骨

2022年08月09日 00時29分22秒 | 邦画2019年

 ◎洗骨

 

 照屋年之ことゴリの演出、上手だった。

 まあ、役者や撮影に助けられてはいるかものしれないけど、脚本もこなしてるんだから大したもんだ。

 土葬した死体を4年後に掘り出して洗い清めるっていう風習があるってことも知らなかったし、それが琉球のほんとに少数の島にはいまだに残ってるってことなんてますます知らない。ゴリ、すごいな。なんといっても、自分が出演せずに脚本と監督に徹してるっていう姿勢も好感が持てるさ~。

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ムーンフォール

2022年08月08日 23時39分40秒 | 洋画2022年

 ◇ムーンフォール(Moonfall)

 

 いやあ、ローランド・エメリッヒ、テンポが速いな~。

 たぶん、これくらいの刈り方でいかないと長尺になりすぎちゃうんだろうね。でも、すぐに忘れかけちゃうくらいな内容だったのもたしかだ。ハル・ベリーとパトリック・ウィルソンがどうして結婚せずに互いの結婚式に出てる仲なのかよくわからないし、なんで10年もの歳月が経つのを待って物語を展開させないといけないのかわからないとおもってたら、なるほど、息子と父親の絆の物語を折り込みたかったのかと。

 でもまあ、そのあたりのことは、月の軌道が変わり始めたと叫び、月が巨大建造物だと主張して、その動力はまんなかに設えられた白色矮星だって断言するオタク偽博士ジョン・ブラッドリーの登場と展開で霧散する。ジョン・ブラッドリーは老人ホームに入れてる母親を抱えたパニック障害のデブで、もうこれでもかってくらいな繊細IBS君なんだけど、結局その意識がAIの中に残るっていう設定もあって、やっぱり主役はこいつなんだろうなって気がするわ。

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エール!

2022年08月07日 23時27分40秒 | 洋画2014年

 ◎エール!(La Famille Bélier)

 

 リメイク作品の『コーダ』とはどうも雰囲気が違ってて、エリック・ラルティゴの当作は、からっとした明るさが目立つ。これが本家なのか?って気もするけど、主役のルアンヌ・エメラはまるまるした体つきと太い眉が印象的なんだけど、歌がとにかくうまい。ここはさすがに面目躍如だね。お母さんのカリン・ヴィアールはひたすら綺麗で、やりたいざかりが死ぬまで続きそうなフランソワ・ダミアンとのやりとりはおもしろいがここがリメイクとの大きな差になってる。

 ただまあ、聾唖者の父母に育てられ、その代わりに商売の口上や酪農の経営にいたるまで、すべてのことをするようになるまでの苦労話はいっさいないんだけど、これを描いたらもうとっても大変な話になったろうなあって気がする。まず、彼女に言葉を教えていった恩人のような人間の存在がなかったらできない話だよね。

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コーダ あいのうた

2022年08月06日 23時13分20秒 | 洋画2021年

 ◎コーダ あいのうた(CODA)

 

 家族の三人ともが聾唖の俳優だとわかったときに、画面と手話のリアルさが頷けた。なるほどね、いや、それだからこそ性的な会話も手話もまったくスムーズにこなせてるんだね。父親トロイ・コッツァーと兄ダニエル・デュラントの自然な演技はかなり手慣れてるんだけど、やっぱりアメリカは聾唖のためのシアターとかが充実してるんだろうか?

 しかし驚きは、母親マーリー・マトリンだ。おぼえているかぎり『愛は静けさの中に』では清楚のかたまりみたいな女優さんだったのが、騎乗位であられもない喘ぎをあげるばかりか、言葉づかいも顔をゆがめた品のない演技もやってのけるとはおもわなかった。

 エミリア・ジョーンズも手話が上手だった。よほど練習したのか、実にリアルに演じてた。女優賞ものだね。

 ぼくは『エール!』は予告編しか観てないからわからないけど、舞台がマサチューセッツ州グロスターに置き換えられててどんなふうに違いが出てきたんだろう。監督シアン・ヘダーの故郷だったとかって聞くけど、なるほど、彼女の思い出まじりの風景なのねって気はした。

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ドント・ルック・アップ

2022年08月05日 00時21分19秒 | 洋画2021年

 ◇ドント・ルック・アップ(Don't Look Up)

 

 なんだか、フランキー堺の『世界大戦争』をおもいだした。

 それにしても、このところ地球滅亡の映画が多すぎやしないか。まあ、アダム・マッケイによるブラック・コメディの本作はちょっと毛色は違うし、風刺が効いてる分、キャストも豪華だったりするけど、でも、これにしたってミシガン州立大学の大学院生ジェニファー・ローレンスとその教授レオナルド・デカプリオが彗星を発見して、それが地球にぶつかるってことには変わりないわけで、そこへ気の狂った大統領のメリル・ストリープと同じく気の狂ったニュースバラエティの司会者ケイト・ブランシェットが絡んで、気の狂ったように見えながらも実は敬虔で知的なキリスト教徒だったっていうティモシー・シャラメが加わってくるっていう豪華さではあるものの、なんだかね。

 あ、ディカプリオ、がんばって太ったな~。

 前半は気の利いた皮肉と風刺が満載で、それなりに楽しめたんだけど、後半、彗星が目に見え始めてからはどうにもありきたりな地球滅亡物語になっちゃってて、厭きる。

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氷の接吻

2022年08月04日 16時31分59秒 | 洋画1999年

 △氷の接吻(Eye of the Beholder)

 

 ちょっと娘の幻想が多すぎて鬱陶しくなるのと、物語が止まるのは勘弁してほしいかな。物語といえば、たしかに冒頭でアシュレイ・ジャッドが殺人を犯すんだけど、そのビニールに包まれて川へ棄てられた死体についてはまったく無視されたまま、ユアン・マクレガーがまるでストーカーのように負い掛け続けるってのはどうよ。英国諜報部に重大事件だと報告しかけてやめるのは一目惚れしちゃったからっていうのはわからないでもないけど、それは腕利きの行動とはいえないよね。

 それと、ホテルのフロントのおばさんがアシュレイ・ジャッドにユアン・マクレガーにつけられてるって告げ口するのは駄目だよね。余計なおせっかいっていうより、英国諜報部の腕っこきにしちゃ、あまりの不手際じゃんね。それはそれとして。アシュレイ・ジャッドはもともと一重まぶたなのかしらね。ちょっと目の開き方がつらいな。ここまでひん剥かなくしても充分きれいなのに。

 結局、身上書を確認するまで40分もかかってる。そこまでひっぱる必要があるとはおもえないんだけどな。で、そこから凄まじい勢いで物語が進展し始めたのはいいんだけど、アシュレイ・ジャッドの出会った盲人と結婚するしないでそれを嫉妬したユアン・マクレガーが狙撃するっていう、さらにいえば、わけのわからん糞野郎に山小屋へひっぱりこまれたあげく、暴行され、麻薬を打たれ、それに怒り狂って糞野郎を叩きのめしてる内に逃げられ、FBIに取り囲まれたときにはパトカーにまで発砲して救け、収容された精神病院まで追いかけて眠ってる隙に結婚指輪まで嵌め、最後にはアラスカだかどこだかともかく氷に閉ざされた場所の「地の果て」っていうレストランで働いているところまで追い掛け続けて、とどのつまりは氷の中で車が激突するまで追い掛けるっていう、簡単に言えばそういう展開になるんだけど、これはもはや物語を見守る気もなくす。なんか、とどのつまり、アシュレイ・ジャッドの綺麗さだけを撮ろうとしただけで、ちゃんとした映画にならなかったっていうだけの作品にしかおもえないんだけどな。

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メンフィス・ベル

2022年08月03日 22時13分42秒 | 洋画1981~1990年

 ◇メンフィス・ベル(Memphis Belle)

 

 出撃するまでの40分が長過ぎて、退屈する。

 まあ、群像劇だから搭乗員ひとりひとりを追いたくなるのはわからないでもないけど、イギリス人の顔の区別ができない身としてはやっぱりつらいな。でもさすがに当時のB-17の機体は、実際のメンフィス・ベルじゃなくても、重量感と存在感はあるな~。

 この映画は鳴り物入りで封切られた気がする。

 なんか無性に観たくて、街角に貼られたポスターもじっと観てたような憶えがある。デビット・パットナムが製作だったからかな、とにかく、前宣伝に煽られた。けど、まあ、なんていうか、起伏に乏しい前半は物語がまるで始まらない分、爆撃目標のブレーメン上空にいたるまでつまらないね。マシュー・モディーンとジョン・リスゴーしか顔を知らないってのもつらいところだし、恋愛がまるで入っていないってのもかなりだれる。

 その分、後半の60分は飛行機物の定番のような展開だけど、それなりに楽しめた。ドイツ軍の弾幕に怖気をふるったり、迎撃機との格闘があったり、仲間が撃たれたり、パラシュートで落とすか連れ帰るかで悩んだり、片輪が出なくなって焦ったり、ともかく予定調和ながらもそれなりの仕上がりではあったかな。

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COLD WAR あの歌、2つの心

2022年08月02日 22時56分34秒 | 洋画2018年

 ◇COLD WAR あの歌、2つの心(Zimna wojna)

 

 もはや趣味の問題かな。音楽の歴史みたいなものを映像化するっていうような試みはわかるし、もちろん他にない重要な要素なんだけど、それがパヴェウ・パヴリコフスキの演出における主題ってわけでもなさそうだし、まあ、東ヨーロッパの抱えてきた歴史と音楽がたてよこに絡み合ってる感じはわかるけどね。

 なんていうのか、ヨアンナ・クーリクっていう女優になじみがないってのもあるかもしれない。っておもってたら、彼女、前の年に『夜明けの祈り』に出てるんだね。どこかで観たことあるけど何処だったんだろうって疑問は解けたんだけど、まるきり憶えてないんだよな~。

 ただ、映像はすごい。かちっとしてる。

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