「ハゲタカジャーナル」という面白い言葉をみつけた。毎日新聞4月3日朝刊1面、31面によれば、学術雑誌のなかには掲載料目的で、投稿された論文の査読を行わず掲載料を払うだけで論文が投稿できる掲載料目的の粗悪な電子ジャーナルによる学術雑誌のことを意味すると記事にはあった。サンプルに東大、京大の先生にアンケートを採ったら11%が、このハゲタカジャーナルに投稿していたことを新聞は報じていた。
研究の世界では、通例学術団体があり論文を投稿できるシステムになっており、最近では電子投稿(インターネットによる投稿)を採用する学会が多くなってきた。電子投稿された論文は複数の専門家によって査読審査がなされ、その結果は投稿者に結果が報告される。その返事も掲載決定、修正条件付き掲載決定か再査読、掲載不可とあり、掲載決定ならば投稿者は掲載料を支払う必要があり、金額は学会によって異なるが日本建築学会だと1編の論文で2〜3万円ぐらいだったと記憶している。修正条件付き等は、査読者によって指摘事項がたっぷり記載されて論文が投稿者のもとに戻ってくるから、指摘事項全部を修正した上に修正箇所を明記して再投稿することになる。通例この修正条件付きというのが最も数が多い。このように論文の審査は一連のシステムとして機能しているわけだ。
ハゲタカジャーナルは電子投稿すれば、そんな査読をしないで掲載料だけ頂き何でも電子ジャーナルに掲載するというわけだ。それは日本学術振興会に登録された学術団体ではなく、任意の団体なのだろう。言い換えれば学術団体の顔を装うまがいものである。投稿者は、掲載されたというので実績1増えたと勘違いしてしまう。もちろんそんなのが実績になるわけでもない。そうした投稿料は、時には文科省の科研費で投稿する場合もあるから、国が関心を持っている。いずれハゲタカジャーナルのブラックリストでも公開されるだろう。
こうした背景の1つとして、学術団体を任意に設置できることがある。それは憲法で学問の自由が保障されているので当然のことなのだが、なかには雑誌を発行するだけの学術団体も存在するし、先端領域の先をゆくので関連する先生だけでつくられた学会もある。新領域研究の始まりとはそんなものなのだ。もちろん掲載料目的のビジネス業者が潜り込むこともある。今回のケースは、この最後のケースが該当するだろう。だから大変長い時間はかかるが任意の学会が多くの研究実績をあげ、査読システムをつくり、それが認められれば日本学術振興会にも認知される。
最近私が所属し、最後までペーパー投稿による査読をしていた日本デザイン学会もついに電子投稿になってしまった。ペーパーで送り返される赤ペンのチェック(時には誤字脱字の校正までしてくれた)や添付されたペーパーで送り返されてきた修正要求を読んでいると、行間に研究者の良心を感じさせてくれた。
今私は、アカデミズムを卒業したのでもう別世界の話なのだが、やはり電子投稿の方が時間が早いし、ドクターコースの院生にとっては助かる。大体は論文の投稿と博士論文の執筆とは並行作業で進むので。その返事如何によって博士論文の提出時期が決まる場合が多い。
そんな院生達が論文投稿している学会が粗悪学会だったら博士論文が提出できないケースも今後でてくる。だから手遅れになるという悲劇を生まないためにも、文科省はアメリカの研究者が粗悪と見なした学会名を、日本なりに検討した上で日本版粗悪学会のブラックリストを早急に公開すべきでしょう。
京都市長楽館
α6000,Carl Zeiss,Vario-Tessar E 4/16-70mmZA OSS
ISO5000,19mm,露出補正0,f/5.6,1/60