Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編332. プロの研究者のための撮影システム(フィルム編)

2018年04月11日 | Photographic Equipment

 フィルム全盛時代の頃、「日沖宗弘:プロ並みに撮る写真術2.-一人で仕事をする研究者・ライターのために、勁草書房、1993年」という本に相当に刺激されて中古機材のシステムにはまりこんだ。この本の著者が美術史の研究者であったこと、複数の中古機材で最新機材と同等かそれ以上の画質が得られる多様なフィールド調査用のシステムについて、研究者の立場から独創的な提案がなされていたことに私は関心をもった。

 それはフォトグラファーや写真屋の視点とは全く異なり、中古の安価で優れた機材のシステムによるフィールドワーカーのための撮影ツールであることが特徴である。写真術1.2.3.と続編が刊行され、当時の中古カメラブームの先駆けとなった本である。

 この本による中古のシステム構成のポイントは、広角、標準、望遠の役割を果たす大変優れた中古レンズ、F2.0クラスの明るいレンズを加えること、システム全体が軽量であること、できるだけならば当時多用されていたズームレンズは使わない、などであった。

 その中から2例引用すると・・・

●ボディ:ミノルタCLE、

●レンズ:エルマリート28mmF2.8、エルマリート90mmF2.8

●サブ:コダック・レチナ3C、

 この本の著者にいわせれば、ライツ・エルマリート28mmの解像度が秀逸であり、これを使いたいためにこのシステムがあると書かれていた。レンジファィンダー機材ミノルタCLEはTTLオートストロボが使えるが、ファインダーの距離計に50mmのフレームがないので、50mmF2.0のフォクトレンダーのレンズがついたドイツ・コダックのレチナ3Cを加えた軽量なシステムだ。ちなみにレチナ3Cはレンズが奥に引っ込む蛇腹でボディが薄くなるので携帯するのには便利だった。

 アップさせた画像がこのシステムであり、90mmはライツL時代のモノで代用している。プロの研究者のための撮影システムだ。

 しばしばブログでも書いているが、研究のプロは撮影機材だけ持ってフィールドに行くわけではない。建築に限っても大きなメジャーや測量機材、なかには蛍光X線装置などの特殊な機材を持参する輩もいた。だから撮影機材が小さく軽いというのは必須だ。そして撮された画像は、論文の印刷原稿として適切なコントラストだった。だから随分多用したんだろう。

 特にミノルタCLEは、フィルム時代の機材の中で最も使いやすく、小さく、軽く、そしてライカのレンズが使える優れた機材であったが、当時一般にはほとんど売れなかったプロダクトと聞く。その後私のこの機材は電子部品が壊れ修理不可能とメーカーにいわれた。

 

もう一例挙げると

 ●ボディ:ローライコード3型、キャノンT70

●レンズ:キャノンFD20〜35mmF3.5L、キャノンFD135mmF2.8

●サブ:オリンパスXA4

 ズームレンズ嫌いの日沖さんがあえて選んだキャノンLレンズの初期型である広角ズームを加え、単焦点の望遠レンズに、標準レンズにローライコードという安価で解像度の優れた6×6の中型機材を加えている点がユニークだ。ズームレンズは、その後のフィールドワーク用EOSの16-35mmF2.8レンズとして継承されている。私も継承されたこのズームレンズを使用している。

 一般的に撮影のプロといえば真っ先にフォトグラファーがあがる、プロはそれだけではない。研究のプロ、技術開発のプロ、コンピュータのプロ、弾道波形のプロなど、或いは宇宙船に積み込まれて撮影されるなど世の中にはプロが多い。そして撮影機材は様々な分野のプロフェッショナル達に使用されてきたし、それは今も変わらない。当時のライツやニコンは、研究者用の視点を忘れずに付属品を多数発売してきた。

 先日押し入れのフィルム用機材を相当数売り払った。ハッセルブラッド用のプラナー、レチナ3C、ファインダーのブラックアウトしたLeitzM3に始まりコンパクトカメラの数々など13点あり、日沖さんの本に刺激されて集めたものあった。しかしフィルムの少なくなる時代には、使いたくても使えない。それでもsaleは、多少の売り上げになりSONYα6000用のマクロレンズが調達できた。

 隣で品の良い外国人カップルが大きなズームレンズ付きのニコンD800を売り払っていた。私の方をみて、Sale?、もちろんSaleさと、応えたら笑っていた。彼らの機材の方が私よりもはるかに高い金額で売れたけど、私の売却機材の多さとボロさに笑っていたのだろう。

 その先のカウンターでは、やはり外国人がニコンF3にニッコールレンズを買おうかなと交渉していた。その機材を構えたところが格好が良いではないか。これからはフイルムの時代だ!、えっえー・・・!??。

 

撮影1996年、筑波ハッカーアパートメント

撮影機材不明、コダカラー

 

 

コメント
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