Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング524. 小説:小樽の翆452. みんななくなっちまった

2021年10月25日 | Sensual novel

 

 さて今晩は、クロッキー教室の日だ。

そろそろ始まる時間が近いので教室の参加者達が通り過ぎてゆく。

アチキは、小腹が空くので古い商店街の一角にある肉屋の揚げたてコロッケをほおばる。

熱いコロッケが胃にしみるということは、もう秋だ。

店先で食べていると、向こうからマサヒロ君がやってくる。

マサヒロ「ああ、いい物食べているなぁー」

そういって彼もコロッケを注文していた。

マサヒロ「教室は、夜の9時迄だから、お腹すくんですうー」

「このお総菜屋さん、昔からあるよね?」

マサヒロ「昔は肉屋、僕が生まれた頃は、すでにあったです。この商店街は、昔からのお店が多いです。でも最近代替わりするところがあって、それで店じまいするところも多いです。ここのコロッケが味わえるのも今のうちですよん」

「風前の灯火の商店街かぁー、寂しいな」

マサヒロ「昔なら子供達がお店をついでいったんだけど、いまは跡継ぎがいても店をつがないから、昔からの店が、ここでお終いになっちゃうね」

「一寸食べ歩きの気分になれるところがいいよね。団子屋はあるかな?」

マサヒロ「あっ、それ店じまいしたですぅー」

「じゃあ駄菓子にするか・・・」

マサヒロ「それ、随分前になくなったです。今はパブかなぁー」

「じゃあ、立ち飲み屋は?」

マサヒロ「コロナ禍で店閉じちゃいました」

なんだぁー、みんななくなっちまったかぁー。

・・・

霞んだ景色に秋の深まりの気配が感じられる、小樽の薄暮の頃である。

 

 

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