当時、中国雲南省の省都昆明までは日本エアシステムが飛んでいた。
昆明、大理、麗江をへて中旬までやってくる途中の集落を発見しながら西域をタクシーで走り抜けてきた。
隣はチベットである。
中旬に桃源郷と呼ばれる平原がある。
そこにはチベット様式と呼びたくなる民家が点在していた。
そして中国最奥地の民家の屋根に乗っていた巨大な物体を、私は確かに見た。
それは民家の屋根を覆う大きさの巨大なパラボラアンテナだ。
支柱には、国際宇宙センターにでもいるかのような中国語のレタリングが描かれている。
日本がまだADSLというロートルなインターネット回線を敷設していた頃、中国・チベットの奥地は屋根のパラボラアンテナを立て衛星を介してインターネットをしているんだと判断した。そうであれば日本よりはるかに進んでいた事になる。
そんな異質の風景に驚嘆し、それにおののくようにカメラをしまい、つまりパラボラアンテナをたてた民家の写真を撮りそびれた。
ブログトップの画像の屋根にドーム型の巨大なアンテナが立てられていた。
そんな撮りそびれた風景を思い出す時、あれは幻影だったか!、と思うこともある。
だが、驚いたことは事実だ。
だから存在していたのだろう。
写真を撮っていなければ、話にならない。
もちろん昆明から中旬に至る道すがらに美しすぎる数多くの集落を発見しながらの旅であった。
風土に呼応した暮らしを続け、そのなかで建築群としての整然としたまとまりをもった集落は、既に日本で失われた風景である。
近代化の早い中国、今はもう見られない風景、よくて観光地化した風景といってよいだろうか・・・。
中国・雲南省(1999年8月〜9月)
EOS3,EF28-135mm/F3.5-5.6、コダクローム2