さて森の次は海か。
小樽は山が海岸に近いのでどちらもモチーフにすることができる。
そんなわけでチクコウのカフェに陣取り、眼前に広がる港の風景。
いろんなヨットが出入りしているので、よりどりみどりで描けるという便利な場所だ。
描き上がる頃には夕方だ。
身元で「どこの風景を描いてるんだぁー?」
常連の美希姉ちゃんの声が聞こえる。
やはりやってきたか。
美希「最近ここから描くなんて珍しいじゃん」
「そうだったかぁー。慌てて夏の終わりを描き止めている。ところで、どうおよ、撮影のバイトは?」
美希「前にうちの高校生達の妊娠が盛んだっていったでしょう。
つまりアタシと一発やってくださいというわけよ。
だから私も、私もで妊娠して、それで思い出に撮ってぇーというのが多いワケ。
同級生達だからお金取れないじゃん、毎日ボランティアだよーーーん。
でね、なかには同時にやっちゃったから、どっちの種だかわかんないという女子がいるのよ。
それも優秀な男子とスポーツ系のアホな男子よ」
「生まれてくればわかるんじゃないかなぁー!」
美希「生まれてから、アホだったら、最悪ーーじゃん」
「ハハハッ、その時はあきらめるんだなぁー、いいじゃんスポーツ選手にしたら名前があがるかもよ」
美希「まあ20年後だからいいかぁーー、そういう女子もいるんだ・・・。
あたしに相談されても疲れるぅー(*^▽^*)」
直人君がやってきた。
「ビッグマックかなぁー?」
直人「はい、ごちになりますぅー・・・、ああ!、その話ですか・・・。
妊娠した女の子同士で仲が良いみたいですよ。
それで情報交換しながら、結構一緒にいることが多いんですよ」
「そりゃ子供が生まれたら、お母さん同士じゃん。
そのまま続くんだよ。仲の良いお友達同士が、多分一生ね」
直人「こんなのもいるんですよ。
『○○君、大学に行ったらちゃんと小樽に帰ってくるんだヨーーん。その間、ママ達と育てておくからねぇー』という縛りつけタイプとか、
子供産んだら大学へゆこうという進学タイプとか、
そうだ、美希姉ちゃんとこの玲香姉ちゃんみたいに看護師を目指すナースタイプ、
種をもらった男子は捨てて次を捜そうという割り切りタイプとか・・・。
だって今の男子は人がいいから子供がいても、惚れさせたらなんでもいうことを聞くからだって。
それで高校の進路指導の先生なんか、『どうすりゃいいのさ。そんな進路相談はしたことがない!!』といって、大学案内を転がしながら悩んでいるよ」
「つまり健全な高校生活ですねぇー、案外高校生のうちに子供をつくっちゃうと、将来仕事と家庭のどっちを選ぶかで悩む必要がないもんね。
それに孫の顔を見たがっている親たちへの最大の親孝行だ」
(*^▽^*)
美希「そうよ、それが男女共同参加型社会じゃないのぉー」
「そりゃ、そうだ。高校に母乳をあげる育児室でもつくるんですかねぇー」
美希「保健室を育児室にすればいいんだ。簡単じゃん」
たしかに男と女の関係は、社会の上位概念である生物のカテゴリーにおいては簡単な話なのだ。
空が茜色に染まってきた。
・・・
3人でナンタルの坂道を登りながら、背後に薄暮の街が広がっている。