猫カフェで熱い珈琲をすすりつつ、上さんの出産待ちをしている一太郎君と暇人のアチキが、レンダリングを前に歓談している。
「もろベンツじゃん」
一太郎「ドイツデザインに学ぶというやつ。セダンのスタイルとしては、プリミティブなコンセプトを発見されちゃったという感じ。例えば少しくさび形のシェイプを感じさせながら、フロントからキャビンそしてラゲージスペースに至るつながりがセダンのデザインとしてはすごく旨い!、真横から見るとそれがよくわかる。ヒップアップな後ろなんかクーペになりそうで、しかりスリーボックススタイルにしている。やられたなっ!、ていう感じ」
「ドイツデザインの衝撃!」
一太郎「うーーん、セダンはこれしかないというフォルムだもん。このフォルムを使うと、どんなにデイテールで頑張ったってみんなベンツになっちゃうよ」
「セダンのフォルムとしては、最適解を発見しちゃったんだ」
一太郎「こうしたフォルムをつくられちゃうと、俺たち負けたなって感じ。まあ俺はメカニックだから、スタイリングは本社のデザイナー達に任せてさ・・・」
「これを電気で動かそうというわけだ」
一太郎「電気はパーツが少ないから簡単。バッテリーをキャビンの下に敷き詰めるんだろう。ドイツデザインの衝撃で、しばらく自粛かなあ!」
「あらつまんない、子育てに専念するかなぁー」
一太郎「おっそうだ!、上さんのところにゆかなきゃ」
「まだ、うまれておらへんでぇー・・・」
そう言われても、事が事だけにといっても、男はさしたる役割もないのだから律儀に出かけざるを得ないのが宿命か。いや女達に、やれたなっていう感じかもな。
・・・
翠の話によれば、一太郎君のジュニアが誕生したのは、翌朝だった。男の子だって。
多分将来カーデザイナーにするんだろうと想像していた。