美国のバス停を降りて観光センターで身支度を調える。トイレとリュックの中から撮影機材を取り出し首にかけるだけだが、そうしておかないと吹雪の中で行おうものなら身体は雪の塊になる。冬のフィールドでは、行動の足場があるのはありがたい。雪は激しく降ったり小やみになったりを繰り返す。小やみの頃合いを見計らってフィールドへでかける。
美国の民家を撮影しながら、昨年目印をつけておいた小泊の撮影ポイントへ向かう。
民家の脇を通ろうとしたらオバハンが雪かきをしている。
私は大声で「こんにちは!」と挨拶する。
オバハンは「昨日は風が凄かったよ。今日は納まった」と話していた。
集落を訪れたら私は、必ず元気よく挨拶する習慣が身についている。
彼らにとっては、よそ者がきていることは明白だから挨拶は必須だ。
よく都会の観光客がくるとシカトして通り過ぎる。地元の人は挨拶もしないなんて、何もんだろうといぶかしがる。
都会の観光客は、心のなかで知らない人に挨拶するんかなぁー!、と逡巡する。知らない人だから挨拶はいいや!、といって陰険にムッツリとして通り過ぎる。
知らない人というのは、あんたら都会の観光客の方だよ!。
私は以前観光客とすれ違った。彼は逡巡としてムッツリと通り過ぎようとした。すれ違いざまに「なんだおしかぁー」と私はつぶやいたら、遠くから「寒いので口が動かない・・・」だって。言い訳をするのも都会人の特徴だ。いいわけは風のなかに消えていったけど・・・。
民家の叔母さんに戻って・・・
「どこへゆく?」
「小泊まで」
「あら、そっち雪が積もってゆかれないよ。向こうから大回りしてさ」
ありゃ、確かに雪が民家の屋根まで積もっている。
私は、大回りして美国小泊へ向かった。
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