国道229号線は、余市漁港から美国まで海岸線を走る。今でも旧道の一部が残っており、水面から数メートル程度の所に道路がある。それも崖の一部をくりぬいて設けた隧道は岩盤むき出しであり、地形に添って道がクネクネと折れ曲がり、ガードレールはなく間違えれば海に転落する。もちろん車は波を被りながら走行する難儀な道だったようだ。
特に龍泉洞という自然の海食洞の中を通り抜ける特異な構造だったために、1984年、山側に豊浜トンネルが建設された。そして1996年2月の酷寒のなかで、トンネル内の岩盤崩落が起き、小樽行き路線バスと乗用車が5万トンの岩盤に押しつぶされ20名の死者をだす惨事が起きたところである。現場には当時の慰霊碑が建てられている。
原因は地下水が湧出している部分が厳冬期に凍結し、地下水圧の上昇を毎年繰り返してきたことで岩盤の亀裂を徐々に進行させ、限界に達したときにトンネル崩落につながったとするニュースは、私も記憶にある。
現在は、地下水を避けるかのように、さらに山側へ迂回する3代目のトンネルがある。今もその道を路線バスや物流の車が走り続けている。積丹の生活を支える1本道であり、私達が随喜の涙をながすウニ、蟹が都市へ運ばれてくる道でもある。
私は、そんな国道229号線の海岸沿いを撮影ポイントまで歩いていった。風の強いときでなくてよかったと思いながら。
5740BIKUNI KODOMARI