朝6時ちょっと前に営業所を出て3~4時間走った後、某駅の待機場所にバスを停めて発車時刻待ちをしていたら… 車内から「ブゥ~ン」と虫の羽音が聞こえてきた。「何だろう?」と思って見たら、それはアシナガバチだった。きっと、前日から車内に潜んでいたハチが、気温(及び車内温度)の上昇によって動き出したのだろう。
私は前扉と中扉を開け、ハチがウロウロしている車内中央あたりの窓を開け… すると、ハチは中扉から出て行っ… たと思ったら、扉を閉める間もなく舞い戻ってきてしまった。そして、ハチはエアコンの冷気吹き出し口にとまって、私を威嚇するように毒針をチロッチロッと見せ付けた。
虫類の苦手な私は「万が一、ここで刺されてショック状態にでもなったら、バスの運行に支障が出てしまうなぁ…」などとホウキ片手に考えていたら、ハチは吹き出し口の中へ入っていき、お尻だけが見えている状態で何やらゴソゴソやっていた。
その時、私はいつぞやの“寒さで動けなくなったアシナガバチ”を思い出し、試しに冷風を送ってみたところ… 予想通り、ハチは吹き出し口の中で動かなくなった。私は「このままの状態で(昼寝休憩のために)営業所へ戻り、そこで何とかしよう」と思った。
走行中(冷房稼働中)にハチが動けないことは分かっているが、再び某駅で発車時刻待ちをしている時に“復活”されるのが心配だった。だから私はその間、少しでも温度の上昇を抑えるためにバスの両扉を開けて、まだまだ涼しい外気を車内に取り入れながら、ハチが入っている吹き出し口をずっと見張っていた。
それから2時間ほど走った後、そのまま“クール便”でハチを営業所まで連れてきた。たまたま給油スタンドにいた上司にハチのことを話すと、上司は「お、おるなぁ~!」と言いながら吹き出し口を叩いていた。
給油のためにエンジンを切った(冷房が止まった)ところで、吹き出し口をガンガン叩かれて… さすがにハチも動けない体にムチ打って、必死になって逃げようとしたのだろうか… 奥の方に入ってしまって姿が見えなくなった。
そんなことをしている内に、そのバスを使用する次の運転士がやってきてしまった… 私はハチの話をして、そのままバスを引き継ぐしかなかった。上司たちは「中には餌もないんだから、すぐに餓死するわ!」と言っていたが… 多分、また出てくると思う。
果たして、ハチの運命やいかに!? ハチも無事に外界へ脱出して、ヒトは誰も刺されることなく、円満な解決になることを祈るのみ…