バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

オンリー・バァー

2010年04月30日 20時41分31秒 | バス運転士

昨日の後半は、普段から乗客の少ない路線を走った。加えて休日の夕方ともなれば尚更である。予定通り(?)営業所前を乗客ゼロで出発して、そのまま終点のA駅まで行ってしまいそうな雰囲気だった。

バス停で一度も止まらずにスイスイ走ったものだから、途中のB駅では遅れていたと思われるバスに追いついてしまった。そこで、私のバスも発車時刻になっていたけれど、「2台一緒に走っても仕方がないし、後続車の迷惑にもなるし…」と思って、前のバスが出て行ってから2分後に出発した。

次のバス停の手前にある横断歩道を、一人のお婆さんが渡っていた。バスを止めた私が「やけに急いで渡るなぁ~」と思っていたら、お婆さんは横断歩道の途中から大きく曲がって、バス停の方へ向かったのであった。「なるほど…」と納得した私は、バス停でお婆さんを待った。

お婆さんは「いやぁ… 助かった。もう、バスがないかと思ったよ。ありがとね」と言いながら乗ってきたので、私も「いえいえ、良かったですね」と答えた。結局、そのお婆さんは終点のA駅まで乗ってきた。唯一の乗客として…

それから約1時間後… 同じく乗客の少ない他の路線を、またもや乗客ゼロで走っていた。そして、あるバス停で30秒ほど早くなってしまったので、バスを止めて時間調整をすることにした。

通常ならば、バスが止まるや否や後続車がどんどん追い越して行くのに… なぜか1台も来ない。不思議に思った私が右ミラーを見ると、後続車が止まったままだった。私が「どうして…」と思う間もなく、ミラーの中に先程のお婆さんが入って来たのである。「なるほど…」と納得した私は、そのままお婆さんを待った。

お婆さんは「いやぁ… ごめんね。ギリギリになっちゃって…」と言いながら乗ってきて、私の顔を見るなり「あれまぁ、行きも帰りもすまんねぇ… 今度は早く来るようにするで…」と言った。私は「そうですねぇ… あんまりギリギリだと、ちょっと何かあると乗れなくなりますから…」と答えながらバスを発車させた。再びお婆さんだけを乗せて…