『沈まぬ太陽』で泣けたシーン。
テヘランからナイロビへの転勤命令が出た時、恩地の妻子は、
「もう一緒には着いて行けない」と日本に帰る。そのテヘランの
空港で、日本へ帰る妻(鈴木京香)が、二人の子どもの手を
引いて搭乗口を出ていくシーン。恩地はそのとき「声をかけた
けれど、妻は振り返らなかった。号泣する恩地(渡辺謙)。
これは作家の創作だろうと思ったら、山崎豊子がインタビューで、
次のように語っている。
「小倉さんは『その後ろ姿を見ながら泣きました』と話して
くださいました。私はこの場面を小説に書くとき、泣きながら
書きました。奥様に会って、「なぜ振り返らなかったのですか」
と聞きました。「振り返ったら崩れます」と奥様はおっしゃい
ました。
会社はこんなことまでしていいのでしょうか。私は、このことを
知って、航空会社がどんなに取材を妨害したり、誹謗中傷して
こようと、最後までこの作品を書きあげなければいけないと
思いました」と。
私もそうだった。海外赴任ではなくとも、家族とは離れ離れだった。
「千代田生命は、家族にとって良き夫、良き父親は要らん!」と、
そこまで言われて、土日も休まず、24時間働かされてきた。
笑顔も許されなかった。自殺者も数人出た。私も、会社に泊まり
こみで、一日置きに明け方に、シャワーと着替えに帰って、朝食も
とらずにまた出勤。最後の方は、会社の近くにアパートを借りて、
家族とはずっと別居生活だったのだ。退職と同時に、妻から
「離婚届け」を突きつけられた時、「仕方ない」と判を押したのだ。
恩地(小倉氏)の妻も、きっと夫に愛想をつかして、振り返らな
かったのだと思った。しかし「振り返ったら崩れます」その言葉に、
私はまた泣けた。
小倉氏は、最後まで日航を辞めなかった。妻も別れなかった。
「逃げたらあかん」か?
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