現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

中村明一著 『密息』

2009-02-28 09:30:37 | 虚無僧日記
尺八界の異才、中村明一氏が『密息で身体が変わる』と
いう本を出して話題になっている。(2006年新潮社)

Mさんが持ってきてくれた。「よくわからないから、読んで
教えてくれ」と。一読して、私には至極もっとも、よく解った。
尺八家は前かがみで姿勢が悪い。自分自身も猫背で
気になってはいた。でもこれを読んで“それでいいのだ”
と納得した。

ようするに、中村氏が言うのは、「日本人は本来、腰を
落とし、下腹に力を入れていた。“臍下三寸、臍下丹田
に力を入れる”というのが武道でも何でも言われている。
尺八も、下腹を張った状態で息を吸い、そして吐く。
つまり一般に言われている腹式呼吸とも違うのは、息を
吐く時でも腹はへこませない。この事が一般人には理解
できないらしい。

弓を射る時も、居合いでも、下腹に力を入れたままだ。
中村氏は「今の剣道は、飛び跳ねて打つ、フェンシングの
ようになってしまっている」とも。そうだ、剣道と古来の
居合とは全く違う。居合いは腰だ。常に下腹、臍下丹田に
力をこめて刀を振る。腕の力はいらない。中村氏は言及して
いないが、相撲とレスリングの違いもそうだ。相撲は腰を
落とす。腰が浮いたら負ける。このことが西洋人と古来の
日本人との決定的な違いと、中村氏は卓見した。そして
本来の日本人の姿勢、息遣いである「密息」を取り戻すべきと。

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上下と水平

2009-02-28 09:04:37 | 虚無僧日記
中村明一著『密息で身体が変わる』

「今日本は極端に弱っている。不安感、閉塞感、
コミュニケーション不全、キレやすく無気力、
働くこと、結婚して子供を育てること、そうした
人間としての生活の本質に取り組みたくない。
それどころか、生きることに喜びも見出せない」

そして「日本固有の文化の豊かさ素晴らしさに
気づかず、誇りを持つことができないでいる」と。

そこで、日本人と欧米人との違いを縷々述べている。
その一つは、「欧米人は上下、日本人は水平思考」。
なるほど、小津安二郎のカメラ目線は低く動かない。
ちゃぶ台も横一文字に映す。外国映画は上から下から
移動して高低を映しだす。外人は腰の位置が高い。
肩を上下させて呼吸し、笑う。日本人は腹を据えて
呼吸し、肩を動かさずに笑う」と。にゃるほど。

して、どちらが優位なのだろうか。昨今の現代人は
日本的なものはすべて否定して、欧米文化一辺倒。
ラジオ番組表もカタカナの方が多いくらいだ。

中村氏は「現代の浮き足だった不安感の中で、じっくり
腰を据えて息をすれば、見えてくるものがある」と。

しかし一方でこんな話も。
「アメリカ人達の中で意見を求められて、ひと呼吸
おいて、おもむろに口火をきろうとしたら、『彼は
何も意見が無い』のだとばかり、周りがどんどん
しゃべり始めて、結局話す機会を失ってしまった。
日本人の持つ“間、溜め、呼吸、間合い”は、彼ら
には通用しなかったと。

現代の若者にも通用しなくなっている。通用しない
ものを追い求めるべきなのか。これが問題だ。
M氏が「わからん」と言ったのはこのことか?

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オバマと麻生の声質の違い

2009-02-28 07:51:18 | 政治家
中村明一氏の『密息』に「倍音」のことが書かれている。
倍音には整数次の倍音と非整数次の倍音があって、
その組み合わせで音の質が変わると。

洋楽器のきれいな響きは、整数次の倍音がよく出るように
研究されてきたから。片や尺八は、シャーというような
ノイズが好まれる。これは非整数次の倍音が出るから。

オバマ氏が大統領に当選した時、勝利の一因として「声の質」
が挙げられていた。「彼のスピーチ力がすばらしいのは誰しも
認めるが、その声の質に、人々のハートを揺さぶるものが
ある」と。なるほど、今、英会話学校でオバマ氏の演説を
テープで聞いて真似るのが流行っているらしい。どうやっても
真似できないのは、日本人の体型からくる声質だ。

ところで、その純日本人の代表、浪花節調ダミ声の麻生
総理。「あの声がいや、聞くに堪えない」という女性が多い。
人気低迷は、あの声質にあったか。ひとごとではない。
尺八界も浪曲同様、麻生氏と命運を共にしているぞ。

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首のすわりと密息

2009-02-28 07:50:53 | 虚無僧日記
中村明一氏の『密息』に、「日本人と西洋人では
首のすわりが違う」というようなことが書いてあった。
「外国人がモーニングを着るとかっこいいのに、
日本人が着るとペンギンのようで不恰好」と。

なるほどなるほど、その通りだ。外人は胸をそらし
その延長に顔、頭があって、反り返って美しい。
日本人は、首が前に突き出ているから、なんともサマ
にならない。わかるわかる。

オペラ歌手は胸をそらして声を張り上げる。謡曲も
詩吟も落語も浪花節も琵琶も箏曲家も、皆顔を前に
出す。そっくりかえって声を張り上げることはない。
トランペットやトロンボーン奏者は、ここぞという時
楽器の先端を上に上げる。尺八奏者は、ムラ息など
腰をかがめて出す。
これが日本人と外人の違いだ。今の若者にはわかる
かな?

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帯の位置と密息

2009-02-28 07:32:14 | 虚無僧日記
もうかれこれ40年演奏活動をしているのだから、
紋付袴の着付けぐらい自分でできる。ところが、
昨年の能舞台で、知り合いの着付教室の先生が
好意で紋付袴の着付けをしてくださった。任せて
安心と思っていたが、後で写真を見てガックリ。
袴の紐の結び目の位置が高い。臍のあたりなのだ。
ようするに洋服のベルトの位置。能舞台で立ちで
尺八を吹くには、なんともしまりがない。

その後気をつけて見ていると、着付け教室の案内
チラシでは、みなそうなっているではないか。
背が高くスラッとした今の若者には、ベルトの位置
の方がかっこよく映るのか。

中村明一の『密息』には「着物の帯は下腹で閉める。
着物が着崩れしないように、日本人は自然と下腹
に力を入れていた」というようなことが書かれて
あった。着物の帯をウェストで締めるようになっては、
ますます「密息」を体得することはできまい。

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鞆の浦

2009-02-27 19:36:19 | 虚無僧日記
2/27 中日新聞夕刊に「鞆の浦」が大きく
採り上げられていた。広島県福山市鞆町。
瀬戸内海のほぼ中央に位置する静かな港町が
今脚光を浴びている。宮崎アニメ 『崖の上の
ポニョ』 の舞台となった町として、若い人や
子供連れの観光客が訪れるようになったとの
こと。宮崎駿監督は、この地に長期滞在して
『崖の上のポニョ』 の構想を練ったとか。

人口5千人に満たないこの町に43の史跡・文
化財があるという。歴史の町として紹介されて
いるが、はて、鞆の浦は宮城道雄の『春の海』の
舞台でもあったはずだが。かつて鞆の浦を訪れた
時は、タクシーの運転手さんも「宮城道雄は、
この鞆の浦に逗留して、波の音、沖に出て行く
漁師の船の音を聞きながら、『春の海』を作曲
されたのです」とまことしやかにガイドしていた。

ところが、『春の海』が作曲された昭和4年、
「宮城道雄は鞆の浦に行っていない」という
ことが暴露され、その話は消えた。宮城道雄は
神戸で生まれたが、失明する前、鞆の祖父母の
家に引き取られていた。だから、宮城道雄は、
幼少の頃見た鞆の浦のかすかな記憶で『春の
海』を作曲したということになっている。
宮城道雄の祖父母の墓は、この鞆町にある。
鞆城跡には宮城道雄の像もある。

さて、鞆の浦といえば宮城道雄の『春の海』
だったのだが、最近では正月でも『春の海』は
あまり聞かれなくなった。鞆の浦の観光の目玉
は、“宮城”から“宮崎”に取って代わられたか。
時の流れだ。

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郵便料金不正

2009-02-27 10:21:53 | 社会問題
障害者郵便を悪用 DM格安発送、社長ら逮捕 脱税容疑(産経新聞) - goo ニュース

よくわからない事件だ。「『障害者郵便』として承認され
れば、切手代120円が8円で済む」と持ちかけられて、
いくつかの障害者団体が、その話に乗った。障害者
支援者への郵便物だったら、なんの問題も無い。そこに
全く関係の無い会社の広告宣伝のDMを紛れ込ませて
いたということか。あるいは、障害者用の郵便など入れて
おらず、全部商業用DMだったのか。

実は保険会社に在職当時、DMや通信物を発送するのに、
「郵送料を安くするいい話がある」と持ちかけられた
ことがある。「郵便局の幹部の承認も得ている」という
のが怪しかった。とにかく美味い話は要注意。断ったが、
このことだったのだろうか? それにしても、あの手この手、
よくぞ頭が回るものだ。正直者はオロオロするばかり。

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善意の募金

2009-02-27 09:00:44 | 社会問題
募金で心臓移植へ 17歳「元気になって恩返ししたい」(朝日新聞) - goo ニュース

熊本では、難病の17歳男児に、ドイツでの移殖手術費用
8600万円を目標に募ったところ、1億564万円が集まった
という。

秋田では、11歳男児がアメリカで移植手術を受けるため、
9800万円の募金を呼びかけている。

私には不思議でならない。高額なのは心臓病だけではない。
なぜ、心臓病だけこのような募金がまかり通るのだろうか。
そして、それに寄付をする善意の人がこんなにも多くいる
ということが、意外なのである。世の中まだまだ捨てたもん
じゃない。

生命保険は、このような助け合いを合理化した制度だ。
統計上、男は10人に1人は、60歳までに亡くなる。
結婚式を挙げた花嫁10人のうち1人は、夫が60歳までに
亡くなって寡婦となる。その10人のうちの1人になるか
どうかは神のみぞ知る。そこで10人であらかじめ取り決め
して、毎年お金を積み立てておく。そして不幸にして夫を
失った人にその全額が支払われるという仕組みだ。

保険に加入するか否かは自己責任でもある。それを怠って
いて、後から、「お願い助けて」と、保険に加入していな
かったのに保険金だけをねだっても許されてしまう。日本は、
「合理的な制度に基づく契約」という保険には冷ややかだが
契約も対価も何もない『募金』には好意的な甘い社会だ。

私は今、全く保険に加入していない。背中に痛みが走るが
検診を受ける金も無い。もし検診を受けて「末期のすい臓がん」
なんて診断されても、治療を受ける金など無い。すべては
自己責任だ。それとも、こんな私にも、募金活動をすれば、
善意の寄付はあるだろうか。(無いと思います)

まぁ、私も日々皆様の善意による喜捨で生かされている身。
それで十分感謝でござる。

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ホキ徳田

2009-02-27 07:37:38 | 虚無僧日記
2/26 NHKラジオ「わが人生に乾杯」。山本晋也が司会。
ゲストは「ホキ徳田」。3歳からピアノを習い、クラシック
からジャズ、シャンソンと自由に奏法を広げ、弾き語りで
アメリカで活躍。アメリカの文豪ヘンリー・ミラーに見初め
られて結婚。歳の差30才。
ヘンリー・ミラーは1980年に亡くなり、その後帰国して、
現在も弾き語りのライブを行なっている。「最高齢の弾き
語り」とか。

番組放送の中で、スタジオで「テネシーワルツ」他を
即興的に弾き語りした。ジャズには全く疎い私。むしろ
毛嫌いしていたが、そのピアノ演奏と歌声には驚いた。
山本晋也監督も絶賛。ピアノが踊っている。歌は、人生
の重みを感じる。すっかり魅せられた。

こんな人もいたんだ。最後にひとこと。ホキ徳田さんに
とって人生とは?「回り道した一人旅」と。私に似て
いる。


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2/27 親鸞

2009-02-27 06:48:52 | 五木寛之
2/27 親鸞
 
弥七は言う。
「あの女はな、おまえの身代わりとなって死んだのだ。
當麻御前はなみの女やない。女巫(めかんなぎ)いうてな。
神仏の霊力が身についとるんや。それでいち早く危険を
察して、おまえをかばうたんや」

なるほど、こうきたか。たまたま災難に遭った女がかわいそう。
哀れと思っていたが、當麻御前は、愛する人のために命を
捨てたのだ。日頃「お浄土に行きたい」と願っていた。當麻
御前は、神仏の霊力を得て、最も望む方法で死を得たのだ。
最も幸せな死に方をしたのだ。

愛する人のために自分は命を投げ出せるだろうか。霊力で
最良の死に際を得ることができるだろうか。五木・親鸞も
私と同じ問いを持ち、お山(比叡山)を下りる決心をする。

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