近頃ヤブツバキの花が目につき始めました。
これからの季節はメジロ達が目の前で、花に顔を突っ込んで蜜を吸う姿を見る事ができるのが楽しみです。
顔に黄色い花粉を一杯つけている姿は可愛いですよね。
メジロ達の好物の甘~い蜜は、花粉をたっぷりつけた“おしべ”や、真ん中から2本、チョコンと伸びた“めしべ”の奥にあります。
「この奥に蜜が~!」byメジロ。
これは顔、突っ込むしかないでしょう!たとえ顔が黄色い粉だらけになっても!!(^O^)
ヤブツバキはこうやって、鳥達に受粉を手伝ってもらいながら、タネを作ります。
さて、受粉は鳥たちに頼るとしても、タネはどうやって広がっていくのでしょう?
ツバキのタネは風に飛びやすい翼も、鳥に食べてもらいやすい果肉も持っていません。
さらにとても重いので、たいていは自分の木の下にタネを落とします。
これでは分布を広げることなど無理そうですが、実際には森の中のあちらこちらでヤブツバキを見かけます。
いったい誰がタネを運んでいるのでしょうか?
リス?
確かにツバキのタネはリスたちの大好物で、こんな食べ跡が良く見られます。
でも大島にいるタイワンリスは近年人間が持ち込んだもので、1930年にある施設から集団逃亡したのが
野生化のきっかけと言われています。
一方、ヤブツバキは、5000~1万年前の地層から葉の化石が見つかっているのです。
この時代にタイワンリスは居なかったはず…。
そもそも噴火で洋上に誕生し、一度も本土とつながった事がないと言われる大島で
ヤブツバキはどうやって陸に上がり、森に入っていったのでしょうか?
(氷河期につながっていたという説もありますが、確証は得られていないようです)
少し前の森林インストラクター間のメールでは、貯蔵癖のあるカケスという鳥がツバキのタネを運ぶのではないかと、話題になりました。
まさかカケスが、海を越えて大島までタネを運んだのでしょうか?
猛禽に狙われる危険を冒して?
・・・私がカケスだったら絶対に、そんな恐ろしい冒険はしないだろうと思います。
ヤブツバキのタネが鳥に運ばれた可能性が低いとすると、他に考えられるのは、海流散布の可能性です。
この事については、大島のツバキ研究家の尾川氏によって、海水に浮かんだタネが発芽した事が証明されています。
今も海岸を歩くと、比較的簡単に流木や海藻に交ざって、流れ着いたツバキのタネを見つけることができます。
今日の海岸でも…。
では最初のタネが海流によって大島に流れ着いたとして、海岸から山へどうやって分布を広げていく事ができたのでしょうか?
大島ではカケスは春と秋に渡ってくるようですが、通年見られるわけではないので確率は低そうな気がします。
カラスのいたずらとか?それともネズミ??
散々調べていたら、「ヤブツバキのタネがアカネズミによって散布されている」とする調査報告を見つけました!
(調査結果は下記ページで報告されていました。)
http://www.fieldnote.com/2003/abstracts.html
アカネズミはかなり昔から大島に住んでいた数少ない哺乳類の内の一種であると言われています。
体の小さい彼らは、流木等に乗って自力で島に流れ着くことができたのかもしれません。
一般的には森林性のネズミと言われていますが、大島ではとても数が多く、時々うちの店にもやってきます(^_^;)
島では結構色々な環境で暮らしているようです。
(大島のアカネズミについては昨年の日記で詳しく報告されているので、興味のある方は下記ページをご覧ください。)
http://blog.goo.ne.jp/gscrikuguide6/e/38c2d28871a051c9256b8369bc160839
なるほど~。
何だか一番納得できる物語にたどり着きました(^。^)
「海に浮いて流れてきたヤブツバキのタネが大島の海岸に打ち上げられ、ある晩、餌を探しにやってきたアカネズミがそれを運んで土に埋めた。
そしてその種が食べ忘れられて芽を出し、少しずつ山に広がっていった…。」
この物語が真実かどうかは別として、そんな可能性があることを思い描けただけで、何だかとてもワクワクしました(^O^)
皆さんも海岸でツバキのタネ見かけたら、遠い昔に大海原を旅して島にやってきた、一粒のタネの物語に思いをはせてみてください。
なかなか豊かな時間が過ごせてお勧めですよ(^。^)
(カナ)