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彼の「不思議な果実」というエッセイに収録されている「秋のテープ」で美空ひばりをインタビューしたときの話を書いている。話はなにも美空ひばりのことではなく秋の夜に不安定な気持ちになり、人間の声をききたくなり偶然に見つけた美空ひばりのテープを見つけたことから話が始まるので、本当は中の一文を抜き出すのは本意ではない。
が、美空ひばりとのインタビューは興味のつかないものを持っている。たとえばインタビューに先立ち写真を撮る場面で「カメラマンが私たち二人にもう少しうしろに下がってくれないかと注文を出したときのことだ。
『あら、ずいぶん珍しい人ね』略
『うしろに下がれだって、へんなこと言う人ね、自分が下がればいいのにね』」
こういうことを行っていないだろうか