社会における介護支援専門員のケアマネジメント原論概説・社会構造の変化
生命保険のコマーシャルなど最近、人生百歳時代という言葉を耳にする。本当に百歳の人は近所にいるのだろうか。
昨年の厚労省からは百歳人口は7万人以上と発表があったが、ビジネスシーンで他業種の人に高齢社会の現状を説明したりするときやケアマネジャー対象のセミナーで日本の高齢にかかわる問題を提起するとき、百歳の人口数を聞いてみることがある。そんなとき皆からはよく知らないという反応で、いま日本には百歳の人は7万人以上いるというと一様にびっくりする。
それは7万人以上ということより、身近に百歳の人がいないという実感と統計の値との違いに驚くのだろうと思う。7万人以上の百歳の人の存在に実感がないということだ。
さらに厚労省は2040年代に百歳の人は30万人を超え50万人にも達するという。この百歳人口30万人という数字はさらに実感がわかないが、中学生の家族で想定してみるとわかりやすい。
近年の夫婦での第一子誕生は晩婚化で35歳さらには40歳という高齢出産の傾向により中学生の親は50代、さらにその親つまり中学生の祖父母が90から百歳という年齢と想定される。
中学生には父親と母親双方に祖父母が3人いるとすると中学生の30人クラスで祖父母が90人と計算される。いま話題に取り上げているのは2040年代のことなので、その時の日本の人口数はいまの1億2千万人より減少し9千万人といわれており、この9千万人のなかで百歳人口は30万人、これを中学生1クラス30人の祖父母数90人に換算してみると百歳の人は0.3人、つまり3クラス90人の中学生の祖父母のなかに百歳の人が1人はいることになる。
一学年3クラスだと3人ぐらい、一学年1クラスの中学校でも一人の百歳の高齢者がいる。
言い換えれば地域包括支援センターの担当地域に必ず百歳の人が一人いる社会が20年後にやってくる。そしてその始まりはいまからだという社会に我々はいる。
この意味することは、死亡するひとの少なからずいて生まれてくる子供も少ないが、長生きする人が多いということだ。百歳人口が30万人を超えている国は世界中どこにもない。したがって、人生百歳時代に向けての社会全体の準備をするのは日本が世界のなかで最初であり、どこにも参考になる事例はない。
そのような社会が20年後にはやってくる。
人生百年という社会が意味するもう1つのことは、だれでも高齢になること、そして要介護高齢者は普通のことと社会全体が認識することだ。
この百歳まで生きる人間の存在と高齢が普遍的になる社会において、20世紀の概念、社会福祉で対応が可能かということが提起されるだろう。