浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】森まゆみ『『青鞜』の冒険』(平凡社)

2013-12-24 22:23:04 | 読書
 とても面白い本だ。

 地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を編集・刊行していた森が、その立場から『青鞜』を、『青鞜』を発刊した平塚明を、そして『青鞜』に関わった人びとを書き綴るというものだ。

 森は、『青鞜』を読破する。書かれた文を読むだけではない。表紙絵を、広告宣伝を、飾り罫を丹念に見ていく。雑誌を編集発行した経験を持つからこその視点である。それらに対する言及も興味深かったが、やはり平塚明を中心とした『青鞜』に集まってきた女性たちの生の軌跡、そしてそれに対する森の感想がすがすがしくて、とてもよかった。

 森が『谷根千』に関わる前、ある書評同人誌に関わったことがあるという部分、そこに集まった上流階級の奥様方に対して、森は「勉強中の夫をかかえて貧乏のどん底だった」と書いている。その夫は、ボクが学生時代のサークル・裁判問題研究会のメンバーだった。その頃彼は司法試験の勉強をしていたはずだ。結局森は彼と別れてしまうのだが・・。

 ボクは大杉・野枝の墓前祭に関わる者として、野枝についての言及にこそ関心を持っていたのだが、平塚についての記述がもっとも多かった。野枝についても他の同人と比べれば多いけれども、平塚ほどではないが、それでも、野枝に対する森の批評はなかなか面白く、その直截的な指摘はほぼ正しいと思われた。

 この本の末尾に、「もうごまかさなくてもいい、自分を偽らなくてもいいというその声こそが、私を励ましてくれる」とある。その声とは、まさに封建的な因習など、女たちを縛るもろもろに対して、先駆的に闘った平塚や野枝、紅吉ら『青鞜』同人らの声である。

 『青鞜』は、日本の歴史を確実に前に進めた。しかし、『青鞜』同人たちが求めた社会は、いまだできあがっていない。だからこそ、今でも振り返る価値がある。

 ボクは、そのなかで「齊賀琴」という女性に強い関心を持つ。彼女が書いた「戦禍」という小説は、絶対に読みたい。
 
 過ぎ去った時に生き、その時代と格闘した先人たちの様々な主張は、いつになっても読み返されなければならない。というのも、それらの主張が、いまだ、いまだ、実現されていないからだ。歴史の歩みの遅さ、その非情さを、ボクはいつも思う
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世論調査

2013-12-24 09:36:30 | 政治
 世論調査が繰り広げられる。なぜか安倍政権への支持が54.2%と高い。前回、特定秘密保護法を強行採決した後は47.6%であったのが、2週間で上昇。支持する理由のトップは「経済政策に期待できる」からだ。

 しかし、経済生活が少しでも良くなったという人々は少ない。にもかかわらず、この結果。その背後に、テレビメディアを主とした、消費の上昇報道があると思われる。高額商品が売れているという、そういう報道だ。また次は「ほかに適当な人がいない」である。これもテレビメディアが、安倍首相を長時間出演させて話させているからだ。質問者も遠慮してか、たいした質問もしないから、安倍の独壇場となる。そういう場面を見せられた人々が、こういう反応をするのではないか。

 問7は、安倍政権の軍事拡大政策についてであるが、「中国の軍事的な台頭を国際社会の懸念事項であるとけん制し」という前書きをおいて、「国家安全保障戦略」などの是非を問うものだが、半数以上が「評価する」「やや評価する」とこたえている。これも前書きがなければ、あるいは別の前書きにすれば数字は変わってくるだろう。

 質問を読むと、どういう回答をするのかおおよその予想がつくのが、世論調査の中身だ。
しかしそれでも、「与党は企業向けの優遇措置を拡大する一方、家計支援策が乏しい税制改正大綱を決めました。あなたは、この税制改正を評価しますか」という設問に「ある程度評価する」を含めた「評価する」が40%もあるというのには驚く。
 日本国民の「優しさ」(?)に唖然とする。


  
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