とても面白い本だ。
地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を編集・刊行していた森が、その立場から『青鞜』を、『青鞜』を発刊した平塚明を、そして『青鞜』に関わった人びとを書き綴るというものだ。
森は、『青鞜』を読破する。書かれた文を読むだけではない。表紙絵を、広告宣伝を、飾り罫を丹念に見ていく。雑誌を編集発行した経験を持つからこその視点である。それらに対する言及も興味深かったが、やはり平塚明を中心とした『青鞜』に集まってきた女性たちの生の軌跡、そしてそれに対する森の感想がすがすがしくて、とてもよかった。
森が『谷根千』に関わる前、ある書評同人誌に関わったことがあるという部分、そこに集まった上流階級の奥様方に対して、森は「勉強中の夫をかかえて貧乏のどん底だった」と書いている。その夫は、ボクが学生時代のサークル・裁判問題研究会のメンバーだった。その頃彼は司法試験の勉強をしていたはずだ。結局森は彼と別れてしまうのだが・・。
ボクは大杉・野枝の墓前祭に関わる者として、野枝についての言及にこそ関心を持っていたのだが、平塚についての記述がもっとも多かった。野枝についても他の同人と比べれば多いけれども、平塚ほどではないが、それでも、野枝に対する森の批評はなかなか面白く、その直截的な指摘はほぼ正しいと思われた。
この本の末尾に、「もうごまかさなくてもいい、自分を偽らなくてもいいというその声こそが、私を励ましてくれる」とある。その声とは、まさに封建的な因習など、女たちを縛るもろもろに対して、先駆的に闘った平塚や野枝、紅吉ら『青鞜』同人らの声である。
『青鞜』は、日本の歴史を確実に前に進めた。しかし、『青鞜』同人たちが求めた社会は、いまだできあがっていない。だからこそ、今でも振り返る価値がある。
ボクは、そのなかで「齊賀琴」という女性に強い関心を持つ。彼女が書いた「戦禍」という小説は、絶対に読みたい。
過ぎ去った時に生き、その時代と格闘した先人たちの様々な主張は、いつになっても読み返されなければならない。というのも、それらの主張が、いまだ、いまだ、実現されていないからだ。歴史の歩みの遅さ、その非情さを、ボクはいつも思う
地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を編集・刊行していた森が、その立場から『青鞜』を、『青鞜』を発刊した平塚明を、そして『青鞜』に関わった人びとを書き綴るというものだ。
森は、『青鞜』を読破する。書かれた文を読むだけではない。表紙絵を、広告宣伝を、飾り罫を丹念に見ていく。雑誌を編集発行した経験を持つからこその視点である。それらに対する言及も興味深かったが、やはり平塚明を中心とした『青鞜』に集まってきた女性たちの生の軌跡、そしてそれに対する森の感想がすがすがしくて、とてもよかった。
森が『谷根千』に関わる前、ある書評同人誌に関わったことがあるという部分、そこに集まった上流階級の奥様方に対して、森は「勉強中の夫をかかえて貧乏のどん底だった」と書いている。その夫は、ボクが学生時代のサークル・裁判問題研究会のメンバーだった。その頃彼は司法試験の勉強をしていたはずだ。結局森は彼と別れてしまうのだが・・。
ボクは大杉・野枝の墓前祭に関わる者として、野枝についての言及にこそ関心を持っていたのだが、平塚についての記述がもっとも多かった。野枝についても他の同人と比べれば多いけれども、平塚ほどではないが、それでも、野枝に対する森の批評はなかなか面白く、その直截的な指摘はほぼ正しいと思われた。
この本の末尾に、「もうごまかさなくてもいい、自分を偽らなくてもいいというその声こそが、私を励ましてくれる」とある。その声とは、まさに封建的な因習など、女たちを縛るもろもろに対して、先駆的に闘った平塚や野枝、紅吉ら『青鞜』同人らの声である。
『青鞜』は、日本の歴史を確実に前に進めた。しかし、『青鞜』同人たちが求めた社会は、いまだできあがっていない。だからこそ、今でも振り返る価値がある。
ボクは、そのなかで「齊賀琴」という女性に強い関心を持つ。彼女が書いた「戦禍」という小説は、絶対に読みたい。
過ぎ去った時に生き、その時代と格闘した先人たちの様々な主張は、いつになっても読み返されなければならない。というのも、それらの主張が、いまだ、いまだ、実現されていないからだ。歴史の歩みの遅さ、その非情さを、ボクはいつも思う