浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】立花隆『天皇と東大』全四巻(文春文庫)

2014-10-22 20:59:02 | 読書
 立花隆は「あとがき」で、「いまの若い世代は驚くほど、歴史を知らない。とりわけ近現代史の現代に近い部分がポッカリ穴が開いている。」と記している。

 高校生の時、ボクが学んだ「日本史」は、第一次世界大戦で終わった。「それ以後は自分でやっておけ」というようなことを言われた記憶がある。だから学校で「昭和戦前史」を学んだことはない。とはいっても、「歴史を知らない」と言われたことはない。
 ボクらの世代は、岩波新書を読むのが当たり前であった。だから遠山茂樹らの『昭和史』など、「昭和戦前史」などは自ら読んでいた。

 高校などの学校教育で教えられたから歴史を知る、ということではなく、自主的に本を読んだりすることがなくなったから、「歴史を知らない」のではないか。

 こういうことを言っていても仕方がない。とくに1930年代の歴史はしっかり知っておく必要があると思う。

 この『天皇と東大』は、問題意識があんがい鮮明なので、「昭和戦前史」を学ぶにはよいテキストとなると思う。特に第三巻はよかった。

 現在、1930年代に学問の自由を攻撃し続けた蓑田胸喜のような人物が増えているようだ。蓑田は「原理日本」で騒ぎ、権力にたれ込み、「右翼」を動員して、学問の自由や東大のリベラリストを攻撃し続けた。その結果、蓑田の主張が大きな力を発揮するようになり、歴史を大きく右旋回させた。その行き着く先に1945年の敗戦があった。

 同じ歴史を繰り返させてはならない。
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【本】山代巴『私の学んだこと』(径書房)

2014-10-22 10:42:14 | 
 山代巴は、作家である。またいろいろな活動に参加した人でもある。戦前には、治安維持法によって下獄した人である。刑務所にいるとき、夫が獄死した人である。

 そして1945年。山代は広島県で活動を始める。その問題意識は、「どうして戦争を阻止できなかったのか」というものである。同時に、どうしたら地域を民主的なものにすることができるか、ということである。

 そのために山代は、動き、学び、考え、書く。

 治安維持法体制は崩壊したが、目の前には封建的な意識をもった人々が住む地域があった。「日本国憲法」が現れたからといって、日本社会が民主的で平和意識に包まれるわけではない。

 だから山代は、過去を振り返り「なぜ」を考え、そして目の前の現実をどう変えていくのかを必死に考え行動していく。

 ここには、戦争直後のある種解放された生々しい清新なものがあった。

 彼女は、中井正一に学び、武谷三男に学び、ロマンロランを学び、そして天皇制ファシズム下に活動した人々から学び・・・・・というように、学ぶ。しかしその学ぶというのは、学ぶために学ぶのではなく、現実を変革するために学ぶのである。

 今、再び「戦争への道」が論じられる時代、ボクたちが学ぶべきは、1930年代の「戦争への道」が具体化し、そして破滅に向かっていく時代と、その破滅の後、日本にどういう社会をつくっていくのかを考えた1940年代後半の時代ではないか。

 次々と新しい本が出版されるが、過去となった人々が動き、考え、書いた諸々の知的遺産に学ぶべきではないか、そう思い始めた。

 ボクたちは何のために学ぶのかといえば、それは現実の否定的な政治や社会のありかたを、何とかしたいからだ。そうした志をもって生きた無数の人々が遺した遺産を、ひょっとしたらボクたちは継承していない。

 
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