浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

財政がたいへんだ!というのは、国民だけに向けたもの

2014-10-05 21:07:33 | 政治
 ボクはなんどもここに書いているが、政府や自治体はカネがない、カネがないと叫んでいるが、政府や自治体のカネの使い方をみると、無駄遣いばかりである。

 増税や福祉を切り詰める理由としてのみ、「財政赤字」は喧伝される。

 以下は、『東京新聞』記事。


「新国立」総工費 さらに900億円増 建築家・槇氏ら試算

2014年10月5日 朝刊

 2020年東京五輪の主会場として建て替えられる新国立競技場の総工費が2500億円に達するとの試算を、現計画に反対する槇文彦さんら建築家グループがまとめた。建て替えを進める日本スポーツ振興センター(JSC)は総工費を1625億円としているが、試算はこれを900億円近く上回る。グループは維持費も見込みより増大すると予測。巨大なスタジアムにかかる費用は将来、1000億円以上ふくらむ可能性がある。 (森本智之)

 JSCの試算は昨夏の単価に基づき、消費税3%増税分も反映されていない。グループは、これに加え震災復興や東京五輪に向けた需要の高まりによる物価上昇などを検討。建築物価は毎月1%上昇し、現時点で15%、一五年の着工時には25%増えるなどし、二千百億円に上ると試算した。

 さらに、全長三百七十メートルに及ぶ長大なアーチや開閉式屋根(遮音装置)など、現計画の持つ大規模で複雑な構造が建設費を押し上げると分析。ゼネコン関係者への聞き取りでも「金と時間をかければできるが、予算内に収めるのはかなり難しい」と回答があった。

 その上で、ゼネコン側の試算も参考にし、総工費は二千百億円をさらに四百億円程度上回る二千五百億円になるとはじいた。

 工事の難しさはJSCも認めており、設計段階でゼネコンに技術提案を求める異例の対応を取っている。難工事は、工期にも影響する可能性が高い。JSCは四十二カ月を見込むが、グループは「より規模の小さな日産スタジアムでもそれぐらいかかっており、少なくとも五十カ月は必要になる」と指摘している。

 JSCは二〇一二年、計画の検討段階で総工費をロンドン五輪メーンスタジアム(当時のレートで約六百三十億円)を上回る一千億円としていたが、同年のデザインコンペの段階では千三百億円と試算。さらに採用されたザハ・ハディドさんのデザインをもとに試算した結果、周辺工事費を含めて三千億円に増大したため、規模を約二割縮小するなどし、総額千六百二十五億円としていた。

 日本建築家協会など建築五団体は七月以降、JSCと非公開で意見交換。グループのメンバーで東京建築士会会長の中村勉さんによると、JSC側も「工費は高騰すると思う」と認め、「しかるべきタイミングで(試算を)公表する」と答えたという。

 中村さんは「調べれば調べるほど甘い予測に基づいている。このままではコストも工期も余分にかかり、二〇一九年のラグビー・ワールドカップにも間に合わない可能性が高い」と話している。

 JSC新国立競技場設置本部の高崎義孝・運営調整課長は、取材に「コメントできない」と述べた。
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事件

2014-10-05 20:43:26 | 社会
 台風が近づいているという。昨年、この地方には9月16日未明に襲来した。翌16日、静岡で大杉榮・伊藤野枝・橘宗一の墓前祭があり、主催者のボクとしては、暴風雨の中車で静岡に向かったことを思い出す。

 大杉らは、憲兵隊により、つまり国家権力の暴力により殺害された。こういう事件が再び起きないように、毎年、墓前祭を開催しこの事件を想起する。

 今年7月、佐世保の女子高生が友人を殺害するという事件が起きた。殺された女子高生の遺族の悲しみはいかばかりかと思うが、加害者の親も精神的にたいへん苦しまなければならなかった。その苦しみに耐えきれず、自殺したというニュースが飛び込んできた。

 事件が起きると、当事者だけではなく、周辺の人びとも心に大きな傷を負う。関係者は、その傷を、生きているかぎり、負い続けざるを得ない。生きているかぎり・・・・

 だから、ボクらは「なぜ?」という問いを発する。あるべきではない事態に際会したときに、「なぜ」という問いが生じ、関係者はその問いに真剣に向き合う義務がある。二度と同じような事件が起きないようにである。

 そのとき、関係者をとりまく人びとは、静かにみつめるしかない。そうずべきなのだ。

 だが、こういう事件が起きると、人びとは、関係者の生きる場をどんどん狭めてしまう。最終的には生きる場を奪ってしまう。

 そして悲劇は、また別の悲劇をつくりだす。「なぜ?」という問いは、宙に舞っていく。

  
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もう一つ

2014-10-05 15:30:43 | メディア
 『沖縄タイムス』の社説。

社説[すさむ言論]まっとうさ取り戻そう

2014年10月5日 05:30


 明治期の大知識人として知られる新渡戸稲造は『武士道』という本の中で、「寛容」「剛毅」「勇気」「同情」「仁」「礼」といった徳の大切さを説いている。新渡戸が現代日本の言論状況を見たら、どんな感想を持つだろうか。

 「慰安婦」問題の報道にかかわった元朝日新聞記者と家族に対し、恐怖心を植え付けるような脅迫や、度を超したいやがらせが相次いでいる。

 「慰安婦」報道に対する朝日の対応のまずさが読者の不信を招いたことは明らかであるが、一線を踏み外した脅迫や人権侵害がまかり通るようでは、言論の自由そのものが脅かされかねない。

 朝日新聞の元記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)には、5月と7月に「辞めさせなければ学生を痛めつける」などと書かれた脅迫文が届いた。「大学を爆破する」との脅迫電話もあったという。

 別の元朝日記者が教授を務めていた帝塚山学院大(大阪狭山市)にも9月、辞めさせなければ大学を爆破する、という趣旨の脅迫文が届いた。元記者は文章が届いたその日に、自ら申し出て退職した、という。

 脅迫まがいの過激な文言はネット上でも目立つ。北星学園大の非常勤講師の家族は、子どもの名前や写真などの個人情報がネットにさらされ、「自殺しろ」などと書かれたという。

 暴力や脅迫は、言論を萎縮させ、社会を息苦しくする。その兆候に社会全体で立ち向かわなければ、自由や人権は守れない。

    ■    ■

 ネット上にはんらんしている過激な文言が、雑誌にも散見されるようになった。本屋さんをのぞけば、「反日」「売国奴」「国賊」といったおぞましい言葉のオンパレードである。

 街頭デモなどで特定の集団に対して差別表現の限りを尽くすヘイトスピーチ(憎悪表現)も相変わらずだ。

 気になるのは、人権侵害を許さない立場にある山谷えり子・国家公安委員長(拉致問題担当相)の姿勢がいかにもあいまいなことである。

 山谷氏は2009年2月、ヘイトスピーチで知られる「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の幹部男性と一緒に写真に納まっていたことが、最近、明らかになった。

 9月25日、外国特派員協会で講演した山谷氏は、在特会の主張をどう思うか問われ、「一般論として、いろいろな組織についてコメントするというのは適切ではない」と言葉を濁した。

    ■    ■

 外国メディアの記者が、本来のテーマである拉致問題ではなく、在特会との関わりや民族差別について集中的に質問したのは、外国メディアの関心の在りかを端的に示しているといっていい。

 一部欧米メディアから「極右政権」と評される安倍政権の「右派体質」に、特派員が警戒の目を向けているのである。こういうときに大事なのは、安倍晋三首相が、脅迫や暴力、特定集団に対するヘイトスピーチを許さない確固としたメッセージを発することである。
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ドイツのメディアの見方

2014-10-05 15:25:28 | メディア
 『朝日新聞』の「慰安婦」問題の訂正記事、その後に嵐の如く週刊誌メディアをはじめ、朝日バッシングに狂奔している。

 グローバルの時代、そのような醜態を、外国のメディアはどう報じているか。日本国内の、バッシングに興じる怪しい人びとは、海外メディアなんかみることもしないだろう。徹底的に内向き。しかし日本を見る眼は、無数にあるのだ。

 ドイツ紙の論調をみてみよう(下記サイトへ)。

 http://midori1kwh.de/2014/10/05/6096
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岐路

2014-10-05 15:02:45 | 政治
 歴史には岐路、というものがある。ある時点を通過するともう後戻りできない、最終的な破滅に向かって勢いよく突き進んでいく、そういう地点のことだ。

 歴史を学ぶボクには、そういう岐路がひょっとして21世紀の日本に、それも近い将来、出現するのではないかと思う。

 昨今の暴力的な潮流の跋扈に、1930年代の幻影をみてしまう。

 さて西日本新聞の社説。

大学に脅迫文 卑劣な言論封じは許さぬ
   2014年10月05日(最終更新 2014年10月05日 10時38分)

 どんな理由があろうと相手を脅して自らの主張を押し通そうとする行為は、断じて許されない。

 従軍慰安婦報道に関係した朝日新聞元記者が教授だった帝塚山学院大(大阪府大阪狭山市)と、別の同元記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)に、それぞれ退職を要求する複数の脅迫文が届いていた問題のことだ。

 「辞めさせなかったら学生を痛めつける」「くぎを入れた爆弾を爆発させる」などの内容で、実際にくぎが入った封書もあったという。学生まで暴力の対象にして脅すとは、卑劣極まりない。

 帝塚山学院大の教授は、証言内容が虚偽だったとして、朝日新聞が8月に取り消した故吉田清治氏に関する記事を執筆した。

 この教授は脅迫文が届いた先月13日付で退職している。

 北星学園大の非常勤講師は、元慰安婦の証言を報道した。同大は「大学の自治を侵害する卑劣な行為には、毅然(きぜん)として対処する」との文書を出している。今後も、その姿勢を貫いてもらいたい。

 従軍慰安婦報道に対する抗議が目的ならば、暴力による言論封じであり、看過できない。言論には言論で対応すべきだ。

 大阪府警と北海道警が威力業務妨害容疑で捜査している。一刻も早く犯人を摘発してもらいたい。

 気になるのは、勤務先の大学への脅迫とは別に、関係のない元記者の家族まで特定してインターネット上で中傷する行為が横行していることだ。良識的な批判の域を超え、悪意に満ちた露骨な個人攻撃は目に余るものがある。

 民族差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)が社会問題となっている。異論や反論を認めようとしない雰囲気がまん延しつつあるとすれば、憂慮せざるを得ない。

 何事にも不寛容な社会になっていけば、民主主義の基本原則である言論や表現の自由を自ら否定する状況にも陥りかねない。

 誰もが自由闊達(かったつ)に議論できてこそ、社会の活力も生まれてくる。私たち一人一人が、このことをあらためて肝に銘じたい。

=2014/10/05付 西日本新聞朝刊=
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大学崩壊

2014-10-05 06:38:28 | 
 昨日届いた『現代思想』を読んでいる。そのなかに崔真碩氏の「産経事件と大学の危機」という文が載せられている。それを読むと、大学の深刻な状況が浮かび上がる。

 ボクは昨日「大学の自治」について言及したが、「大学の自治」は文科省など政治権力の側からだけではなく、その構成員により自壊してきている、といわざるを得ない状況があるということだ。

 崔氏のドキュメンタリーに関する講義とその際にみせた「終わらない戦争」にたいして、一学生が「産経新聞」に投稿したことが発端であった。それに対して、暴力的なヘイトスピーチが崔氏と広島大学に浴びせかけられた。

 それに対して、広島大学、広島大学教職員組合は、効果的な抵抗をしなかった。大学は、学問の自由と教員の権利を守ろうとしなかったし、教職員組合は全体としての抗議活動をしなかった。後者の理由は、「学問の自由を守れ」という主張がイデオロギッシュであるというのである。

 これほど、大学の教員は堕落しているのである。「大学の自治」の担い手としての資格を失っているのである。これでは、「大学の自治」を否定しようという勢力には対抗できるわけがない。まさに「大学崩壊」であり、「大学自壊」なのである。

 「終わらない戦争」というドキュメンタリーを、ボクは見ていない。それは「従軍慰安婦」をとりあげたもので、「抗議」した学生はそのなかで描かれたもと「慰安婦」の証言、「慰安所から逃亡して日本兵に捕まった後、日本刀で焼き鏝を当てられたという李秀山さんの証言」にたいして、こう語ったという。「天皇陛下から受け賜わった日本刀でそんなことをするわけがない」と。

 崔さんは、その学生をはじめ、「ネトウヨ」は、「国家と自分を絶対的に一体化している」と指摘する。そして「「日本人」としてガチガチに突っ張っているのかもしれない」と記す。

 ボクは、大学の教員のすさまじい頽廃に驚くと同時に、こうした学生が何故にうみだされるのかを考えなければならないと思う。

 この崔氏の文は、大学関係者は読むべきではないか。衝撃的なレポートである。
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