浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

安倍政権の危険な「戦争ごっこ」

2015-03-06 17:51:50 | 政治
 安倍首相はじめ、今の安倍政権、そしてそれを支える自民党は、戦争をしたくてたまらないらしい。海外で、欧米諸国といっしょになって戦闘に従事したいのだ。自衛隊も、今まで「最新」といわれる軍備をもってきたが、一度も使用したことがない。だから使いたくなったようだ。

 そのための準備が進んでいる。戦後日本の国是であった「平和国家」が崩れていく時期に、ボクたちはいる。

 『中日新聞』の今日の「核心」(一部)。内閣の一存で戦闘活動に参加できるように法整備を行おうとしている。もちろん日本国憲法が想定しない事態であり、違憲である。しかし安倍政権は、憲法を無視してばく進しようとしている。


国内平穏でも海外攻撃? 新安保法制素案 

2015/3/6 紙面から

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にするため、政府がまとめた新たな安全保障法制の素案。行使の要件である「国民の生命が覆される明白な危険」が拡大解釈され、日本国内は平穏なのに、自衛隊が海外で武力行使に踏み切ることが現実味を帯び始めた。武力行使の内容や地理的な範囲もあいまいで、際限なく広がる可能性がある。安保法制整備に関する自民、公明両党の与党協議は六日から集団的自衛権の議論に入るが、本当に歯止めをかけるつもりがあるかが問われる。


 そして次の記事。文官の統制がなくなり、戦前の日本軍のように、文官による軍事指揮権のコントロールがなくなり、制服組にその権限が渡される。防衛大臣が制服組と同調すれば、文民統制は無化され、軍事指揮権は制服組に渡される。


「文官統制」廃止 閣議決定 防衛省設置法改正案 議論なく

2015年3月6日 13時58分

 政府は六日午前、防衛省の内部部局(内局)の背広組(文官)が制服組自衛官より優位に立つと解釈される「文官統制」規定を廃止する、同省設置法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指すが、政治を軍事に優先させた文民統制(シビリアンコントロール)を損なう懸念が残る。改正案は、武器輸出を拡大する司令塔となる「防衛装備庁」(仮称)新設も盛り込んでいる。 (中根政人)

 改正案では、防衛相が制服組の統合幕僚長や陸海空の幕僚長に指示などをする場合、背広組の官房長や局長が補佐するとした現行法の規定を廃止。各幕僚長が、官房長や局長と対等な立場で防衛相を補佐するように改める。また、自衛隊の運用を担当している内局の運用企画局を廃止し、業務を制服組の統合幕僚監部に一元化する。

 文官統制は戦前の旧日本軍の暴走を教訓に、政治を軍事に優先させた文民統制の一環。文官を制服組自衛官より優位な立場に置くことで、防衛省内の文民統制を補強する手段とされてきた。今回の法改正は、文民統制を弱体化させるとの懸念が出ている。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は六日午前の記者会見で、文民統制が弱まる懸念について「まったくない」と反論。法改正の狙いについて「文官と自衛官の一体感を高めながら、政策的見地と軍事専門的な見地から大臣を補佐する(法律の)趣旨をより明確にする」などと説明した。

 一方、防衛装備庁は、武器の輸出や他国との共同開発を原則解禁する「防衛装備移転三原則」(昨年四月に閣議決定)を受けた組織。現在の防衛省装備施設本部や技術研究本部などを統合し、外局として新設する。職員は千八百人規模とし、十月をめどに発足させる方針。武器輸出に関して防衛企業の海外戦略を支援し、他国との交渉窓口も担う。

 三原則は、武器を輸出した相手国が日本の事前同意なしに第三国に再輸出することを防げないなど、抜け道が指摘されている。防衛装備庁の新設で武器輸出が拡大すれば、紛争地域で日本の武器が使われる恐れがある。

◆拙速否めず 国会審議尽くせ

 <解説> 政府が閣議決定した「文官統制」規定の廃止を盛り込んだ防衛省設置法改正案は、先の大戦の反省に基づき、政治が軍事組織を統率する「文民統制」を大きく後退させる恐れがある法案だ。にもかかわらず、自民、公明両党は事前の党内手続きで、廃止に伴う影響を厳しく検証した形跡はない。
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【本】白井久也『ドキュメントシベリア抑留』(岩波書店)

2015-03-06 10:38:38 | 
 1995年に刊行された本である。この段階では、未だシベリアに抑留された方々への補償はなされず、被抑留者らが裁判で補償を求めていたころである。その後最高裁判決が1997年にだされたが、判決で国家補償は立法が必要であると判示した。裁判では、敗訴が続いた。
 しかし2010年には、「シベリア特別措置法案」(正式名称「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法」)が成立し、微々たる金員ではあるが、やっと被抑留者への補償がなされた。

 この法律の第一条には、「この法律は、戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられたこと等の特別の事情にかんがみ、及び戦後強制抑留者に係る強制抑留の実態がいまだ十分に判明していない状況等を踏まえ、これらの戦後強制抑留者に係る問題に対処するため、戦後強制抑留者の労苦を慰藉するための特別給付金を支給するための措置を講じ、併せて強制抑留の実態調査等に関する基本的な方針の策定について定めることを目的とする。」とある。被抑留者らが永年求め活動してきた成果が盛り込まれている。

 なお2010年とは、民主党政権時代である。

 さてボクは、このシベリア抑留についてはまったく勉強してこなかったが、戦後史に於いて無視できない歴史の事実である。何故に日本人兵士が長い間、酷寒のシベリアを中心として強制労働を課せられたのか。
 そして帰還してからも被抑留者は白い目で見られ、国家からは見棄てられた存在であった。
 このシベリア抑留問題は、なぜこういう事実が生まれたのかを追及すると共に、それを問題視してこなかった(見棄ててきた)戦後日本の国家・社会の質を問うものである。

 山形県鶴岡市の斉藤次郎さんを中心とした粘り強い運動が、やっと国家補償を獲得することができたわけだが、そこまでの労苦を斉藤さんの人生を中心として描いたのが本書である。シベリア抑留問題を理解する最適の本である。

 この本を読んでいて、シベリア抑留は、もちろん日ソ中立条約を冒して進撃してきたソ連、そして本来ならばすぐに帰還させなければならなかったにもかかわらず強制労働を強いたソ連に重大な責任があることは当然ではあるが、敗戦の際の日本政府・軍の具体的な方針にも大きな問題があることがよくわかった。

 敗戦が必至となったとき、日本政府はソ連を介しての和平を探ったことがあった。その際に作成された「和平交渉の要綱」には、「海外にある軍隊は現地に於いて復員し、内地に帰還せしむることに努むるも、止むを得ざれば、当分その若干を現地に残留せしむることに同意す」、「賠償として、一部の労力を提供することには同意す」があった。
 「国体護持」のために、ソ連に日本軍民の労力を提供するというものであった。

 そしてそれに関わって、関東軍のソ連との交渉に関する文書が発見された。発見したのは斉藤次郎氏であった。

 戦後、将来の帝国の復興再建を考慮し、関東軍総司令官は、成るべく多くの日本人を大陸の一角に残置することを図るべし。これが為、残置する軍、民間の日本人の国籍は、如何様に変更するも可なり

 そして本書には、「ワシレフスキー元帥ニ対スル報告」と朝枝繁春大本営参謀の「関東軍方面停戦状況ニ関スル実視報告」が掲載されている。
 まさにそこには、「満洲移民」を“棄民”した大日本帝国の本質が現れている。日本人を「貴軍の経営に協力させ」てくださいとお願いしているのである。

 それに対する若槻泰雄の文がある。

 国民に“必然の死”を強制することに対してさえ冷酷な日本国家にとって、国体護持のため“苦役を強制する”ことなど易々たるものであったろう。・・・・危機に及んで人はその本性を暴露する。国家もまた同様であって、これが“大日本帝国”の本質なのである。

 しかしこの「本質」が、福島原発事故でも露呈されたのではなかったか。“大日本帝国”の本質は、“日本国家”の本質でもある。
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