浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

訃報(続)

2015-03-27 09:12:47 | その他
 昨日のブログで記した訃報は、熊本大学の小松裕(こまつひろし)さんの訃報であった。田中正造やハンセン病、朝鮮人の強制連行などについて研究されていた。いくつかのテーマを共有している関係から、小松さんとは何度か会っているし。メールでの情報交換も行っていた。温厚で優しい人柄であった。

 昨日、訃報が届いたとき、たいへんなショックを受けた。昨年、掛川市で発見された田中正造書簡についてメールで連絡を取り合い、その書簡の意義について教えを受けたりしていた。そしてまだまだ若い研究者であった。すぐに共通の知人に連絡したが、一様に驚くばかりであった。

 傍らにあった彼の著書、『真の文明は人を殺さず』(小学館、2011年)を手に取った。東日本大震災、そして福島原発事故に直面したとき、小松さんに湧き上がるのは日本近代に対する激しい憤りであった。そして近代日本のあり方に対して、生涯をかけて抵抗した田中正造の思想を、人々に伝える努力が弱かったと、小松さんは自省する。

 正造の言葉、「真の文明は山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さざるべし」は、近代日本の「文明」に対する根底的な抗議であった。

 この本に、ボクは付箋をただ一カ所つけていた。そこには正造のことばがあった。

 智識あるものは智識を他人に恵ぐめよ。足手あるものは足手を寄付せよ。金銭あるもまた同じ。かく互いに長短補足して一致漸くなる。また人は金のみで動くものにあらず。人は心、人は精神、人は道理、人は大義名分、人は誠実。高く信じ、厚く信じ、深く信じ、互いに信と信との結合に限るべし。

 小松さんは、正造の思想を研究し、またみずからも正造のように生きた。

 小松さんの遺志を継ぐということは、正造の思想をもっともっと多くの人々に知らせていくことだろうと思う。

 ただただ、故人の冥福を祈るのみである。   合掌





 
コメント
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