残業代ゼロ

　「従順は日本の社会秩序の基礎である」。これは明治初期に東北地方、北海道などをひとりで旅行したイザベラ・バードの『日本の奥地紀行』に記されていたものだ。この「基礎」は、今も続いている。

　今国会で「残業代ゼロ法」が出される。1075万円以上の年収の人には、残業代がでなくなる。

　日本社会は、一応一日八時間労働制がとられてはいるが、しかしそれはほとんど守られていない。厳格な労働時間の上限規制がない。したがって、残業代がゼロとなれば、そりゃあ企業がもっともっとこき使うことだろう。労働組合が崩壊し、組合があっても労働者の権利を守らない「御用組合」がほとんどとなっているとき、年収1075万円以上の労働者は、労働時間の規制がなくなるところで働かされる。その結果どうなるか、「津波」と共に日本語が国際語となっている「過労死」がどんどん増えていくことだろう。

　なんといっても、安倍政権は、日本を企業にとってもっとも活動しやすい（ということは儲けやすい）国にする、と豪語してるのだから、そうなることは明白だはないか。

　そして1075万円以上という枠が、どんどん下げられていき、ほとんどの労働者が「残業代ゼロ」の状態へと突き進む。

　まさに「一億火の玉」となって企業のために働き、「欲しがりません、死ぬまでは」と「過労死」に突き進むのだ。

　すでにこのような事例はアメリカにあるようで（FLSA）、事務職の9割が残業代ゼロだそうだ。

　「従順」は、なんといっても「日本の社会秩序の基礎」なのだから。