浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

日米新ガイドライン

2015-04-28 21:45:08 | 政治
 これは『北海道新聞』の社説。これもベターである。

日米ガイドライン改定 専守防衛の放棄に等しい

04/28 08:50

 自衛隊と米軍の一体化を、質的にも地理的にも一気に拡大する極めて重大な政策転換である。

 日米両政府は、ニューヨークでの外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、防衛協力指針(ガイドライン)改定に合意した。1997年以来、18年ぶりの改定だ。

 旧指針は、日本が攻撃を受けたときにだけ自衛隊が武力を行使し、米軍への後方支援も日本周辺に限定していた。

 新指針では日本が直接、攻撃を受けていなくても集団的自衛権を行使し、米軍と共同作戦を行う。

 後方支援は地理的制約を取り払い、地球規模で実施する。

 憲法の平和主義に基づく専守防衛を放棄するに等しい。日本の安全と極東の平和の維持を目的とする日米安全保障条約の枠組みをも逸脱している。

 これだけ重大な変更を、安倍晋三政権は国会審議も国民への説明もしないまま米国と約束してしまった。暴挙と言わざるを得ない。

■地球規模で米軍支援

 旧指針の協力の枠組みは《1》日本が攻撃される「有事」《2》朝鮮半島有事などの「周辺事態」《3》平時―の3分野だった。

 新指針は、これに「存立危機事態」を新たに加えた。

 日本が攻撃されていなくても、時の政権が「日本国民の生命・権利を根底から覆す明白な危険がある」と判断すれば、集団的自衛権に基づき武力行使する。

 具体的には機雷掃海や米国を標的とした弾道ミサイルの迎撃、米艦の防護、不審船の積み荷の強制的な検査(臨検)などを行う。

 中東ホルムズ海峡での機雷掃海には公明党が否定的だ。与党間でさえ見解が割れる活動を指針に盛り込んだ。乱暴すぎる。

 周辺事態は「重要影響事態」と改め、米軍への後方支援を地球規模に広げた。弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油といった軍事色の強い任務も解禁する。

 さらに日本の安全とは無関係の「グローバルな協力」も新設し、国際的な人道支援や多国籍軍への後方支援などを盛り込んだ。

 日本の防衛を主眼とした従来の枠組みを、世界各地で活動する米軍への「軍事協力」へと変える内容である。

 米国の戦争に日本が巻き込まれたり、日本がテロの標的にされたりする恐れが格段に高まるのは明白だ。

■日中対立高まる恐れ

 日米の防衛協力拡大には、それぞれの事情がある。

 安倍政権にとって最大の狙いは、尖閣諸島で領海侵入を繰り返すなど、海洋進出を活発化させる中国への抑止力を高めることだ。

 有事での協力項目には、日本側の強い求めで「島しょ」防衛が加えられた。

 一方、オバマ米政権は厳しい財政事情を背景にした世界規模の米軍再編の一環として、米軍任務の一部を自衛隊に肩代わりさせる狙いがある。

 ただ米国は、経済を中心に相互依存関係を深める中国を過度に刺激したくないのが本音だ。米国が日本側の思惑通り、中国と本気で対峙(たいじ)するかどうかは分からない。

 米国は、中国とフィリピンなどが領有権を争う南シナ海での自衛隊の活動拡大にも期待を示し、平時の協力には警戒監視や海洋秩序の維持も盛り込まれた。

 南シナ海などで自衛隊が活動するようになれば、日中の緊張が高まるのは必至だ。

 新指針によって中国の動きに本当に歯止めがかかるのか。米国に頼る以外、日本が中国と向き合う道はないのか。そうした本質的な議論は置き去りのままだ。

■抜け道多い与党合意

 自民、公明両与党は指針改定に合わせ、新たな安保法制に実質合意した。だが関連法案が国会に提出されるのは来月中旬である。

 米国と協力内容を決めてしまってから、必要な安保法制を国会審議するのでは順序が逆だ。安倍政権の国会軽視の姿勢は許し難い。

 与党合意の内容も問題が多い。

 集団的自衛権の行使要件は曖昧なままで、時の政権の判断次第で拡大解釈が可能だ。

 他国軍を後方支援するための恒久法「国際平和支援法」では、例外ない国会の事前承認を義務付けたが、活動の中身が後方支援で重なる「重要影響事態法」では緊急時の事後承認を認めている。

 国際平和支援法で事前承認が得られない場合、重要影響事態法を適用する抜け道がある。

 そもそも新指針や新安保法制の出発点は昨年7月の閣議決定だ。集団的自衛権の行使は認められないとしてきた従来の憲法解釈をねじ曲げ、行使を容認した。

 関連法案の国会審議では、その是非や、国際社会での日本のあるべき姿など、根本的な問題から一つ一つ、徹底的に議論すべきだ。
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新日米ガイドライン

2015-04-28 21:42:52 | 政治
 今日の新聞一面は、日米による新日米ガイドラインの記事である。その背景を記しているのが、『毎日』の社説。


社説:新日米防衛指針 国民不在の「安保改定」

毎日新聞 2015年04月28日 02時30分

 これは自衛隊が米軍に世界規模で協力するという約束である。日米両政府は、自衛隊と米軍の役割分担を定めた新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)をまとめた。自衛隊の海外での活動は飛躍的に拡大し、日米安保体制は極東の範囲を超えて世界に広がる。国会を素通りして日米安保条約の改定に等しい大転換が行われることは同意できない。

 ガイドラインは冷戦下の1978年、旧ソ連の日本侵攻に備えて作られた。冷戦終結後の97年には朝鮮半島有事などの周辺事態を想定して改定された。18年ぶりの再改定となる今回は、中国の海洋進出や軍拡への対応を意識し、地理的制約が取り払われた。協力範囲は世界中に拡大し、宇宙やサイバー空間にも及ぶ。

 ◇食い違う双方の思惑

 再改定を提案したのは日本側だ。

 オバマ政権は、アジア重視の「リバランス」(再均衡)政策を掲げるが、米国の力は相対的に低下している。中国は東シナ海や南シナ海で海洋進出を活発化させている。

 日本側は「このままでは日本を守れない」「いざとなったら米国に守ってもらえないかもしれない」と考えた。そのため集団的自衛権の行使容認など安保法制の整備によって自衛隊の活動を拡大し、米国をアジアに引き付けようとしている。

 この提案は、米国には渡りに船だった。米国は財政難で国防予算を削減している。日本、豪州、韓国など同盟国との協力強化や、同盟国同士の多国間協力により、米国の負担を肩代わりさせたいと考えたからだ。

 同盟強化では一致しているものの、双方の思惑は微妙に食い違う。

 今回、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)がガイドラインにあわせてまとめた共同文書には、沖縄県・尖閣諸島は日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用範囲と明記された。ガイドラインには尖閣諸島を念頭に「島しょ防衛」が盛り込まれた。

 それでも現実に尖閣周辺で日中に不測の事態が生じた場合、米国が日中間の争いに介入するかは、その時にならなければわからない。日本が米国を引き込むために自衛隊の活動をいくら拡大しても、米国が日本の期待通りに動く保証はない。

 一方、米国は自衛隊が将来、南シナ海で米軍と共同で警戒監視を行うことに期待感を示す。だが、自衛隊が南シナ海にまで活動を拡大することが日本の力に見合ったものなのか、地域の安定や日本の国益につながるのか、国民の理解はあるのか、政府は冷静に判断すべきだ。

 新たな安保法制の法案は5月中旬に閣議決定され国会に提出される予定だが、ガイドラインはすでに新法制の内容を反映している。
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『朝日新聞』、腰が引けているのでは

2015-04-28 09:32:01 | メディア
 『朝日新聞』が、28日、「特派員「外務省が記事を攻撃」 独紙記者の告白、話題に」という記事を配信した。

 ドイツ紙の日本特派員が離日する際、自らが体験した外務省による「工作」を暴露したことについて、そこに記された文に登場する当事者に取材してまとめたものだ。

 話題になってからかなり時間が経過しての検証記事である。『中日新聞』などは、もっとはやく検証を行っている。内容的には、いちおうきちんと当事者の意見を聴取して、無難にまとめている。

 そこで問題となるのは、その当事者などから聴取したものをどう並べるかである。ふつう当事者の弁を並べて、最後に直接関係しない、いわゆる識者のコメントでまとめるというのが一般的だろう。

 ところが、『朝日』のその記事は、識者のコメントの後、記事の末尾に、外務省の伊藤恭子・国際報道官の「誤解生じて残念」というコメントを載せているのだ。この報道官は、当事者の一人ではないか。
 このコメントの最後は、「(元独特派員の記事については)誤解が生じているのは残念だ。お金の話などをした事実はなく、総領事とフランクフルター・アルゲマイネ社で協議をし、誤解が解消したと聞いている。」である。

 外務省側の視点から、「すでに解決している」のだということを確認させる記事となっている。

 このコメントの前に、山田健太・専修大教授(言論法)が、「ジャーナリストの多くは、政府による水面下の宣伝活動に反感を持つ可能性が高く、むしろ日本のイメージを悪化させていると言わざるを得ない」という「日本のイメージ悪化」というコメントがあるが、これが最後のまとめの位置にあるべきではないか。

 この記事を書いた記者は、おそらく山田氏のコメントを最後にしていたのではないか。それを『朝日』のデスクか誰かが順序を変えたのではないか。
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