安倍首相が靖国神社に参拝した。ボクは靖国神社には、日本の伝統から言って大きな問題をもつと思っている。
しかし人々は、靖国神社の歴史やその創設の由来、どういう人が祀られているかなど、詳しいことを知ろうとしない。ただ、戦争で亡くなった人を慰霊するのがなぜ悪い、という単純な反応しかしない。下に掲げた『毎日新聞』記事でも、人々はそのようにコメントしている。
なぜアメリカや中国、韓国などが問題にするのか、考えてみるべきである。
だがその前に、考えるべきことはある。
戦争で亡くなった人を祀るというが、戦争では敵と味方が必ず存在する。日本の伝統は、敵も味方も祀っていた。すべての死者を悼むということだ。ところが、靖国神社はそうではない。味方だけを祀る施設だ。明治維新の際の戊辰戦争時に、新政府側に立って亡くなった者たちだけを祀るところから靖国神社(もとは招魂社)は出発した。したがって、今年のNHKの大河ドラマ(見ていないけれど)の福島県(会津藩)の主人公たちは祀られていない。きわめて排他的な施設なのだ。
そして戦争死。戦死というと、戦闘の場で亡くなった者というイメージがあるが、戦争では戦闘の場ではないところで死を迎える場面が無数にある。たとえば、アジア太平洋戦争末期、日本全土は米軍の空襲に曝された。落とされたひとつの爆弾で、兵士と民間人が亡くなったとする。すると、その兵士だけが靖国神社に祀られる。安倍首相は昨日の談話で「国のために戦い、尊い命を犠牲にされたご英霊」というが、あの当時「国のために」ほとんどの国民が戦争完遂のために生きていた。戦争で亡くなった民間人は、慰霊しなくても良いのか、という問題にもなる。
その際しっかりと考えておくべきは、先の例に示したように、同じ爆弾で亡くなった兵士には「戦傷病者戦没者遺族等援護法」により補償されているが、民間人にはびた一文だされていない。国家との関係があった者だけ(たとえば公務員とか軍人・軍属など)に、遺族年金が支給されているのだ。
日本国家は、日本国民を明確に「差別」しているのだ。ドイツでは、軍人であろうと民間人であろうと、戦争で亡くなった方にはきちんとした国家補償が差別なく行われている。
安倍首相靖国参拝:年の瀬に電撃 遺族や識者から批判も
毎日新聞 2013年12月26日 11時51分(最終更新 12月26日 13時37分)
大勢の報道陣が見守るなか、参拝のため靖国神社に到着した安倍晋三首相(中央)=東京都千代田区の靖国神社で2013年12月26日午前11時32分、中村藍撮影
拡大写真 安倍晋三首相が政権発足1年を迎えた26日午前、靖国神社(東京都千代田区)を参拝した。中国、韓国との関係改善の見通しが立たず、政権周辺でも「年内参拝はないだろう」とみられていた中での電撃的な参拝。参拝を終えた安倍首相は「中韓の人々の気持ちを傷つける気は毛頭ない」と話したが、市民からは「なぜ今なのか」といった声が上がっている。【山本将克、町田結子、青島顕、袴田貴行】
安倍首相は午前11時32分、靖国神社に到着した。上空には15機前後のヘリコプターが旋回。警備担当の警察官に守られながら後部座席の左側から車を降りた。服装は黒のモーニング姿で、拍手の中、日本遺族会の関係者と握手を交わし、背筋を伸ばしてやや大きな歩幅で本殿へ向かった。
同56分、参拝を終え再び車に乗り込んだ安倍首相。約300人の報道陣に片手を上げて応じ、日の丸を持つなどした参拝者からは拍手とともに「よくやった、ありがとう」との声が上がった。
毎日参拝に訪れるという近くの近藤孝子さん(70)は「やけに警察が多くてどうしたのかと思っていた。今日っていうのは知らなかった」。参拝については「首相が独自に決めたこと。中国や韓国との関係は今、あまりよくないけれど、あちらの考えに惑わされず、やっていいと思う」と話した。一方、成蹊高校在学中の安倍首相を教えた青柳知義さん(74)は「やってはならないこと。こんなに戦後民主主義や憲法の精神に無理解とは思わなかった。残念だ。事実上の国家神道の復活を狙いたいのだろうか」と話した。
街でもさまざまな声が聞かれた。
東京都杉並区の飲食店主、長尾学さん(34)は「なぜ今なのかが分からない。領土問題に加え、中国の防空識別圏設定や韓国の歴史認識問題などで中韓との関係がごたごたしている時に参拝すれば、いたずらに両国を刺激し、逆に相手へ外交カードを渡してしまうのでは」と懸念を示した。横浜市港北区の会社員、青山暁さん(33)は「個人が行くなら問題ないが、首相という公人としての立場を考えれば、日本の国益のため大局的な観点に立って判断してほしかった。石原慎太郎元東京都知事の尖閣購入発言の時のように、中国や韓国との関係が一層悪化するきっかけにならないように対処してほしい」と話した。
一方、長野県佐久市の会社員、野口尚人さん(35)は「国の指導者が祖国の戦没者を追悼するのはどこの国でもやっていることなので、特に問題ないのでは。中国や韓国の反発は心配だが、中韓のリーダーも祖国の戦没者を追悼する行為はするのだから、日本だけ問題視するのは身勝手な主張ではないか」と話した。東京都渋谷区の女性会社員(40)は「日本のために命を落とした戦没者に敬意を表するのは当然のことで、A級戦犯の合祀(ごうし)に関係なく行くべきだと思う。中国や韓国に文句を言われるから行かないというのはおかしいので、反発を受けたらそれにきちんと反論するくらいの毅然(きぜん)とした態度で臨んでほしい」と話した。.
しかし人々は、靖国神社の歴史やその創設の由来、どういう人が祀られているかなど、詳しいことを知ろうとしない。ただ、戦争で亡くなった人を慰霊するのがなぜ悪い、という単純な反応しかしない。下に掲げた『毎日新聞』記事でも、人々はそのようにコメントしている。
なぜアメリカや中国、韓国などが問題にするのか、考えてみるべきである。
だがその前に、考えるべきことはある。
戦争で亡くなった人を祀るというが、戦争では敵と味方が必ず存在する。日本の伝統は、敵も味方も祀っていた。すべての死者を悼むということだ。ところが、靖国神社はそうではない。味方だけを祀る施設だ。明治維新の際の戊辰戦争時に、新政府側に立って亡くなった者たちだけを祀るところから靖国神社(もとは招魂社)は出発した。したがって、今年のNHKの大河ドラマ(見ていないけれど)の福島県(会津藩)の主人公たちは祀られていない。きわめて排他的な施設なのだ。
そして戦争死。戦死というと、戦闘の場で亡くなった者というイメージがあるが、戦争では戦闘の場ではないところで死を迎える場面が無数にある。たとえば、アジア太平洋戦争末期、日本全土は米軍の空襲に曝された。落とされたひとつの爆弾で、兵士と民間人が亡くなったとする。すると、その兵士だけが靖国神社に祀られる。安倍首相は昨日の談話で「国のために戦い、尊い命を犠牲にされたご英霊」というが、あの当時「国のために」ほとんどの国民が戦争完遂のために生きていた。戦争で亡くなった民間人は、慰霊しなくても良いのか、という問題にもなる。
その際しっかりと考えておくべきは、先の例に示したように、同じ爆弾で亡くなった兵士には「戦傷病者戦没者遺族等援護法」により補償されているが、民間人にはびた一文だされていない。国家との関係があった者だけ(たとえば公務員とか軍人・軍属など)に、遺族年金が支給されているのだ。
日本国家は、日本国民を明確に「差別」しているのだ。ドイツでは、軍人であろうと民間人であろうと、戦争で亡くなった方にはきちんとした国家補償が差別なく行われている。
安倍首相靖国参拝:年の瀬に電撃 遺族や識者から批判も
毎日新聞 2013年12月26日 11時51分(最終更新 12月26日 13時37分)
大勢の報道陣が見守るなか、参拝のため靖国神社に到着した安倍晋三首相(中央)=東京都千代田区の靖国神社で2013年12月26日午前11時32分、中村藍撮影
拡大写真 安倍晋三首相が政権発足1年を迎えた26日午前、靖国神社(東京都千代田区)を参拝した。中国、韓国との関係改善の見通しが立たず、政権周辺でも「年内参拝はないだろう」とみられていた中での電撃的な参拝。参拝を終えた安倍首相は「中韓の人々の気持ちを傷つける気は毛頭ない」と話したが、市民からは「なぜ今なのか」といった声が上がっている。【山本将克、町田結子、青島顕、袴田貴行】
安倍首相は午前11時32分、靖国神社に到着した。上空には15機前後のヘリコプターが旋回。警備担当の警察官に守られながら後部座席の左側から車を降りた。服装は黒のモーニング姿で、拍手の中、日本遺族会の関係者と握手を交わし、背筋を伸ばしてやや大きな歩幅で本殿へ向かった。
同56分、参拝を終え再び車に乗り込んだ安倍首相。約300人の報道陣に片手を上げて応じ、日の丸を持つなどした参拝者からは拍手とともに「よくやった、ありがとう」との声が上がった。
毎日参拝に訪れるという近くの近藤孝子さん(70)は「やけに警察が多くてどうしたのかと思っていた。今日っていうのは知らなかった」。参拝については「首相が独自に決めたこと。中国や韓国との関係は今、あまりよくないけれど、あちらの考えに惑わされず、やっていいと思う」と話した。一方、成蹊高校在学中の安倍首相を教えた青柳知義さん(74)は「やってはならないこと。こんなに戦後民主主義や憲法の精神に無理解とは思わなかった。残念だ。事実上の国家神道の復活を狙いたいのだろうか」と話した。
街でもさまざまな声が聞かれた。
東京都杉並区の飲食店主、長尾学さん(34)は「なぜ今なのかが分からない。領土問題に加え、中国の防空識別圏設定や韓国の歴史認識問題などで中韓との関係がごたごたしている時に参拝すれば、いたずらに両国を刺激し、逆に相手へ外交カードを渡してしまうのでは」と懸念を示した。横浜市港北区の会社員、青山暁さん(33)は「個人が行くなら問題ないが、首相という公人としての立場を考えれば、日本の国益のため大局的な観点に立って判断してほしかった。石原慎太郎元東京都知事の尖閣購入発言の時のように、中国や韓国との関係が一層悪化するきっかけにならないように対処してほしい」と話した。
一方、長野県佐久市の会社員、野口尚人さん(35)は「国の指導者が祖国の戦没者を追悼するのはどこの国でもやっていることなので、特に問題ないのでは。中国や韓国の反発は心配だが、中韓のリーダーも祖国の戦没者を追悼する行為はするのだから、日本だけ問題視するのは身勝手な主張ではないか」と話した。東京都渋谷区の女性会社員(40)は「日本のために命を落とした戦没者に敬意を表するのは当然のことで、A級戦犯の合祀(ごうし)に関係なく行くべきだと思う。中国や韓国に文句を言われるから行かないというのはおかしいので、反発を受けたらそれにきちんと反論するくらいの毅然(きぜん)とした態度で臨んでほしい」と話した。.