都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「現代美術の皮膚」 国立国際美術館
国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
「現代美術の皮膚」
10/2-12/2
「皮膚」の持つ脆さを通して、人間の在り方や作品における「表面」を見つめ直す(チラシより引用。一部改変。)という展覧会です。日米欧の現代アーティスト11名が、広々とした空間を駆使してのインスタレーション的な展示を行っています。
そもそも皮膚と作品の表面を関連づけることにはやや無理があるような気もしますが、そのまま皮膚をイメージさせるもの、または表面の物質感を打ち出した作品を楽しめることは事実です。入口すぐに展示されているマーク・クインの人型のオブジェからして、皮膚や生命の感触を思わせる作品と言えるのではないでしょうか。人がまるで地面から湧いたような「求心状態」(1996)は非常に不気味です。どろどろに溶けたような銀のプールから、ガラスに象られた頭部や手足が浮き上がっています。また上の画像にあげた「悟りへの道」(2006)も、体の皮膚が爛れて、内部の筋肉が剥き出しとなった姿が捉えられていると出来るのかもしれません。
皮膚を用いた作品も展示されています。ティム・ホーキンソンの「範囲周波数によって分割された皮膚のプリント」(2000)は、ずばり自身の皮膚を紙に転写して一つのモザイク画のように見せた作品です。例えばセロテープに指紋をつけたような皮膚の痕跡が、一片5センチ四方の小さなタイル状に連なって約2メートルほど続いています。ただしプリントされた色はブルーです。この色によって皮膚に独特な感触が消され、単純な模様へと変化するのが興味深く感じられました。
展示のハイライトは、山本現代での個展の記憶も新しい小谷元彦のオブジェ群でしょう。個々の作品についての感想はその際に記録したので繰り返しませんが、小谷の作品をここ大阪で、しかも10点をゆうに超える規模で見られる機会などそうないのではないでしょうか。また、山本現代の個展には出ていなかった、木片を用いたオブジェにも見入りました。約30センチ四方ほどの焦げた木片に漆が塗りかけられ、蜂の巣のように開いた穴がまるでゴムのような質感を見せています。かのホイップクリームをかけたような、さながら化石か太古の生物ような奇怪な立体と合わせ、その凝った物質感に強い魅力を感じました。
シュウゴアーツの個展では今ひとつその魅力が感じられなかったヤン・ファーブルも、今回は打って変わって見事です。「昇りゆく天使たちの壁」(1993)のドレスには、何と無数の玉虫が貼付けられています。小さな虫がまるで皮膚の組織の一つを象るかのように繋がっているのです。
まずは小谷のオブジェを見るだけでも楽しめる展覧会だと思います。12月2日までの開催です。(10/27)
*関連エントリ
「小谷元彦 『SP2 New Born』」 山本現代
「ヤン・ファーブル個展」 シュウゴアーツ
「現代美術の皮膚」
10/2-12/2
「皮膚」の持つ脆さを通して、人間の在り方や作品における「表面」を見つめ直す(チラシより引用。一部改変。)という展覧会です。日米欧の現代アーティスト11名が、広々とした空間を駆使してのインスタレーション的な展示を行っています。
そもそも皮膚と作品の表面を関連づけることにはやや無理があるような気もしますが、そのまま皮膚をイメージさせるもの、または表面の物質感を打ち出した作品を楽しめることは事実です。入口すぐに展示されているマーク・クインの人型のオブジェからして、皮膚や生命の感触を思わせる作品と言えるのではないでしょうか。人がまるで地面から湧いたような「求心状態」(1996)は非常に不気味です。どろどろに溶けたような銀のプールから、ガラスに象られた頭部や手足が浮き上がっています。また上の画像にあげた「悟りへの道」(2006)も、体の皮膚が爛れて、内部の筋肉が剥き出しとなった姿が捉えられていると出来るのかもしれません。
皮膚を用いた作品も展示されています。ティム・ホーキンソンの「範囲周波数によって分割された皮膚のプリント」(2000)は、ずばり自身の皮膚を紙に転写して一つのモザイク画のように見せた作品です。例えばセロテープに指紋をつけたような皮膚の痕跡が、一片5センチ四方の小さなタイル状に連なって約2メートルほど続いています。ただしプリントされた色はブルーです。この色によって皮膚に独特な感触が消され、単純な模様へと変化するのが興味深く感じられました。
展示のハイライトは、山本現代での個展の記憶も新しい小谷元彦のオブジェ群でしょう。個々の作品についての感想はその際に記録したので繰り返しませんが、小谷の作品をここ大阪で、しかも10点をゆうに超える規模で見られる機会などそうないのではないでしょうか。また、山本現代の個展には出ていなかった、木片を用いたオブジェにも見入りました。約30センチ四方ほどの焦げた木片に漆が塗りかけられ、蜂の巣のように開いた穴がまるでゴムのような質感を見せています。かのホイップクリームをかけたような、さながら化石か太古の生物ような奇怪な立体と合わせ、その凝った物質感に強い魅力を感じました。
シュウゴアーツの個展では今ひとつその魅力が感じられなかったヤン・ファーブルも、今回は打って変わって見事です。「昇りゆく天使たちの壁」(1993)のドレスには、何と無数の玉虫が貼付けられています。小さな虫がまるで皮膚の組織の一つを象るかのように繋がっているのです。
まずは小谷のオブジェを見るだけでも楽しめる展覧会だと思います。12月2日までの開催です。(10/27)
*関連エントリ
「小谷元彦 『SP2 New Born』」 山本現代
「ヤン・ファーブル個展」 シュウゴアーツ
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