「開館50周年 特別記念展」(後期展示) 逸翁美術館

逸翁美術館大阪府池田市建石町7-17
「開館50周年 特別記念展」(後期展示)
10/27-12/9



逸翁美術館についてはこちらのエントリでもご紹介しました。開催中の特別記念展です。佐竹本藤原高光や大江山絵詞をはじめ、光信の秀吉像、長次郎や道入、それに光悦や乾山の茶碗、さらには蕪村の奥の細道画巻などが出品されています。まさに開館50周年の記念年に相応しいラインナップです。

作品画像がないのでお伝えし難いのですが、通称プラチナ経とも呼ばれる「大方廣仏華厳経(二月堂焼経切)」(奈良時代)の美しさには目を奪われました。これは端正な書体で経の書かれた紺紙の軸ですが、その表面がまさにプラチナ経と言われる由縁の通り、やや灰色がかった白に輝いています。ちなみに下部の破損は1667年、お水取りの際に焼けてしまった跡だそうです。歴史を感じさせます。

本人に見せて選ばれた一枚とも伝えられる、狩野光信の「豊臣秀吉画像」(桃山時代)も展示されています。悠然とした構えでありながらも、どこか睨みを利かせた眼差しで前を向く秀吉の姿が捉えられていますが、特にその目の描写が、京博の永徳展の「織田信長像」に極めて似ていました。(永徳展の図録にも説明されています。)永徳がこの画を見て、かの迫力ある信長像を完成させたのかもしれません。

 

茶人逸翁のコレクションを公開する美術館と言うこともあってか、茶器の展示が非常に充実していました。ここではお馴染みの樂に見る深い味わいにも惹かれるところですが、志野焼の「志野柑子口花入」も大変に魅力的です。そもそも志野の花入自体が非常に珍しい品ですが、温かみのある白い釉薬に少し歪んだ胴、そして全体のずんぐりとした形にはどこか愛嬌を感じてしまいます。またその他では「信楽手付鉢 銘大やぶれ」も挙げたいところです。まずは火割れして出来たという大きな裂け目が印象に残りますが、あたかも今先ほどまで竈に入れられていたかのような赤々とした色も目に焼き付きます。それにしてもこの存在感は圧倒的です。這うような取っ手や歪みきったフォルムの生み出す力強さは見事でした。(そもそもは失敗作として伝えられた作品です。)



「大江山絵詞」(南北朝時代)も見応えありました。これは勅命を受けた源頼光が大江山の鬼神を対峙する絵巻物ですが、ここでは目が5個はあろうかという赤鬼の首を大勢の武士が切り落とそうとしています。おどろおどろしい顔から血が吹き飛ぶ様はまさにグロテスクです。色も比較的鮮やかに残っています。



門外不出の「佐竹本藤原高光」や、応挙の「雪中松図屏風」なども出品されています。ちなみに後者の応挙の構図は、かの三井記念美術館の誇る「雪松図」とほぼ同じです。「雪中松図屏風」は「雪松図」よりも少し早い時期に描かれたものですが、確かに細部の表現こそ「雪松図」に遠く及ばないとは言え、遠目からだとまるで複製だと勘違いしてしまうほどでした。一度、並べて拝見してみたいものです。

風情ある建物で味わう日本美術の優品はまた格別です。12月9日まで開催されています。(10/27)
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )