「相国寺の禅林文化」 相国寺承天閣美術館

相国寺承天閣美術館京都市上京区今出川通烏丸東入
「相国寺の禅林文化 - 室町から近世へ - 」
2007/9/15-2008/3/23(前期:9/15-12/9、後期:12/15-翌年3/23)



等伯の優れた二点の屏風だけでもわざわざ出向く価値があるのではないでしょうか。若冲展の賑わいもどこへやら、すっかり静まり返った承天閣美術館での展覧会です。館蔵の書、絵画、工芸品など約80点ほどの作品が展示されています。



にわか天目ファンには嬉しいお出迎えです。展示室入ってすぐに鎮座するのは、「黒天目茶碗添堆朱倶利天目台」(宋)でした。ほぼ単一の黒光りした黒天目ですが、角度を変えると仄かに灯る七色の光を見ることが出来ます。また、シンプルな草花の模様の描く天目台も力強いものです。逞しい造形美に溢れています。



器では「瀬戸黒茶碗」と仁清の「色絵桐波紋文茶碗」の、桃山、江戸対決も見応えがありました。軽妙で流麗な波模様の靡く仁清に対し、表面の縮れた瀬戸黒の趣きは無骨です。ちなみに瀬戸黒では例の宗旦が書付けを行っていました。利休所持の茶碗とも伝えられているのだそうです。

あまり聞き慣れない絵師ですが、林良の「鳳凰石竹図」(明)と伝牧谿の「柿栗図」(宋)も充実しています。前者は明中期に活躍していた花鳥画家で、大岩にのって見事な尾を靡かせる鳳凰を大胆なタッチで描いています。また柿栗図は淡墨のみの即興的な作品です。栗の刺々しい毬が点描にて示される一方、柿はたらし込み風にて瑞々しさを強調しています。対象に応じたその描き分けも器用でした。





さて注目の等伯ですが、まずは琳派顔負けのリズミカルな線描で秋草を表した「萩芒図屏風」(江戸)が見逃せません。雅やかな金地を背景にして右隻に萩、左隻にはすすきが描かれていますが、その右から左へと靡く草を示した構図感が極めて秀逸です。と言うのも、右隻の萩は大きく風に揺らぐ様が表現されていますが、左隻のすすきはあまり靡いていません。つまりここには、右から左へと流れる大きな風が示されているというわけのです。だからこそ左隻の左端のすすきはまだ直立したままなのでしょう。轟く風に揺れて触れ合う、萩やすすきのサワサワという音が聞こえてくるのような作品でした。



ちらし表紙を飾る等伯の「竹林猿猴図屏風」(江戸)も貫禄十分です。左隻ではかの「松林図」を思わせる竹林が直立し、右隻では親子を含む三匹の猿がユーモラスに木からぶら下がっています。また簡素な墨線だけで表した、その奥行き感に優れた空間構成も見事です。枝からは仄かに葉が浮かび上がり、左隻ではうっすらと土坡も確認すること出来ました。靄に包まれたような空気を肌に感じるような作品です。幽玄な世界に引き込まれます。

その他、禅院の広間で祭事を行う際に使ったという探幽の座頭屏風、まさに文人画の極みとも言える迫力に満ちた池大雅の「渓亭山暁・秋山行旅図屏風」(江戸)も見応えがありました。ちなみに池大雅は、かの若冲とも昵懇の梅荘顕常(相国寺第113世住持)に詩の添削を依頼する関係にあったのだそうです。

もちろん、若冲の「葡萄小禽図」と「月夜芭蕉図」の鹿苑寺障壁画も合わせて展示されています。超ロングランの展覧会です。一度の展示替えを挟み、来年3月末まで開催されています。おすすめします。(10/26)
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