都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「大徳川展」(前期展示) 東京国立博物館
東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9)
「大徳川展」(前期展示)
10/10-12/2(前期:10/10-11/4、後期:11/6-12/2)
前期展示の最終日に見てきました。全300点にも及ぶ徳川家ゆかりの宝物が、東博・平成館を所狭しと埋め尽くす「大徳川展」です。そのスケール、そして会場の混雑においても並外れた展覧会でした。
構成は以下の通りです。ちなみに会場の半分が「第一章」で占められています。(第一会場=第一章、第二会場=第二、三章。)
第一章「将軍の威光」
歴代将軍所有の武具や工芸品など。また「東照大権現」として祀られた家康の神格化の過程を辿る。
第二章「格式の美」
将軍の威光を示す茶器や能装束。秀忠による尾張家への「御成」の際の茶室を再現。
第三章「姫君のみやび」
将軍家婚礼の品々を公開。東福門院和宮の調度品など。
ともかく光圀の例の印籠や家康所用の鎧、それに源氏物語絵巻から茶入れ、または応挙、探幽らの軸や屏風までが揃う展示です。全てに力を入れて見ると何時間かかるかわかりません。と言うことで、実際のところあまり関心のない徳川家関連の工芸や資料などは流し目で見て、まずは茶道具、絵画、屏風などを中心に楽しむことにしました。すると見るべき作品は意外と少なく定まってきます。上の構成で挙げると、主に第二会場にある品々です。
まず茶器で目を引くのは大名物といわれる茶入です。前期展示では合わせて三点ほど紹介されていましたが、中でも「銘新田」(南宋時代。前期)に見入りました。これは利休が天下一の茶入れと称し、秀吉も愛用していた品ですが、後の大阪城落城の際、家康がわざわざ探させて見つけ出し、そして水戸家に伝わったというものであるそうです。斑模様にかかる深みのある釉薬が、仄かな銀色に輝いています。
大名物ではありませんが、長らく行方不明で、何と今年になって発見されたという茶入「銘秋野」(南宋時代。通期)も印象に残りました。どこか可愛らしくも見える、おちょぼ口のような開口部が特徴的です。また器関連では、「油滴天目」(金時代。通期)も一点出ていました。率直に申し上げると、例えば三井の安宅コレクションに出ていた天目の美感には及びませんが、油滴がまるで小石を敷きつめたように外周をほぼ均一に埋め尽くしています。やや大振りの、どっしりとした貫禄のある天目でした。
全体の出品点数を鑑みると絵画はごく僅かですが、やはり注目したいのは応挙の「百蝶図」(1775年。前期)です。さながら『蝶の舞い』とも言える光景が目に飛び込んできます。水草のように揺れる草花が淡いタッチで表現され、そこに大小の様々な蝶がちょうど右下より左上へと飛び出すように連なっていました。またアザミでしょうか。透明感のある紫色をはじめとする瑞々しい彩色も優れています。
さて、まさに贅の限りを尽くした雅やかな調度品も充実していましたが、こちらはその散りばめられた例の「丸に三つ葵」のせいもあったかもしれません。どこか興ざめしてしまう、失礼ながらあまり趣味が良いと感じられないものも目立ちました。それにもう一つ、これは展示とは関係ありませんが、刀をどう見て良いのかが未だによく分かりません。国宝の太刀が数点出ていましたが、どうも今ひとつ感じるものがないのです。
晴天の休日ということもあったのでしょうか。ちょうど私が会場を出た頃には、入場まで30分待ちの掲示が出ていました。またどの展示ケースの前も黒山の人だかりですが、とりわけ第一会場の混雑は相当のものがあります。先に第二会場より見てしまうのが良さそうです。
昨日、6日より始まった後期にもう一度行ってくるつもりです。12月2日まで開催されています。(11/4)
*関連エントリ
「大徳川展」(後期展示) 東京国立博物館
「大徳川展」(前期展示)
10/10-12/2(前期:10/10-11/4、後期:11/6-12/2)
前期展示の最終日に見てきました。全300点にも及ぶ徳川家ゆかりの宝物が、東博・平成館を所狭しと埋め尽くす「大徳川展」です。そのスケール、そして会場の混雑においても並外れた展覧会でした。
構成は以下の通りです。ちなみに会場の半分が「第一章」で占められています。(第一会場=第一章、第二会場=第二、三章。)
第一章「将軍の威光」
歴代将軍所有の武具や工芸品など。また「東照大権現」として祀られた家康の神格化の過程を辿る。
第二章「格式の美」
将軍の威光を示す茶器や能装束。秀忠による尾張家への「御成」の際の茶室を再現。
第三章「姫君のみやび」
将軍家婚礼の品々を公開。東福門院和宮の調度品など。
ともかく光圀の例の印籠や家康所用の鎧、それに源氏物語絵巻から茶入れ、または応挙、探幽らの軸や屏風までが揃う展示です。全てに力を入れて見ると何時間かかるかわかりません。と言うことで、実際のところあまり関心のない徳川家関連の工芸や資料などは流し目で見て、まずは茶道具、絵画、屏風などを中心に楽しむことにしました。すると見るべき作品は意外と少なく定まってきます。上の構成で挙げると、主に第二会場にある品々です。
まず茶器で目を引くのは大名物といわれる茶入です。前期展示では合わせて三点ほど紹介されていましたが、中でも「銘新田」(南宋時代。前期)に見入りました。これは利休が天下一の茶入れと称し、秀吉も愛用していた品ですが、後の大阪城落城の際、家康がわざわざ探させて見つけ出し、そして水戸家に伝わったというものであるそうです。斑模様にかかる深みのある釉薬が、仄かな銀色に輝いています。
大名物ではありませんが、長らく行方不明で、何と今年になって発見されたという茶入「銘秋野」(南宋時代。通期)も印象に残りました。どこか可愛らしくも見える、おちょぼ口のような開口部が特徴的です。また器関連では、「油滴天目」(金時代。通期)も一点出ていました。率直に申し上げると、例えば三井の安宅コレクションに出ていた天目の美感には及びませんが、油滴がまるで小石を敷きつめたように外周をほぼ均一に埋め尽くしています。やや大振りの、どっしりとした貫禄のある天目でした。
全体の出品点数を鑑みると絵画はごく僅かですが、やはり注目したいのは応挙の「百蝶図」(1775年。前期)です。さながら『蝶の舞い』とも言える光景が目に飛び込んできます。水草のように揺れる草花が淡いタッチで表現され、そこに大小の様々な蝶がちょうど右下より左上へと飛び出すように連なっていました。またアザミでしょうか。透明感のある紫色をはじめとする瑞々しい彩色も優れています。
さて、まさに贅の限りを尽くした雅やかな調度品も充実していましたが、こちらはその散りばめられた例の「丸に三つ葵」のせいもあったかもしれません。どこか興ざめしてしまう、失礼ながらあまり趣味が良いと感じられないものも目立ちました。それにもう一つ、これは展示とは関係ありませんが、刀をどう見て良いのかが未だによく分かりません。国宝の太刀が数点出ていましたが、どうも今ひとつ感じるものがないのです。
晴天の休日ということもあったのでしょうか。ちょうど私が会場を出た頃には、入場まで30分待ちの掲示が出ていました。またどの展示ケースの前も黒山の人だかりですが、とりわけ第一会場の混雑は相当のものがあります。先に第二会場より見てしまうのが良さそうです。
昨日、6日より始まった後期にもう一度行ってくるつもりです。12月2日まで開催されています。(11/4)
*関連エントリ
「大徳川展」(後期展示) 東京国立博物館
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )