都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「大徳川展」(後期展示) 東京国立博物館
東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9)
「大徳川展」(後期展示)
10/10-12/2(前期:10/10-11/4、後期:11/6-12/2)
後期展示には抱一も登場しています。東博の大徳川展です。相変わらず大変に混雑していましたが、ともかくは茶道具や絵画のある「第二会場」をじっくりと楽しんできました。
まず挙げたいのは、天下の名器と呼ばれる白天目三点のうちの一つ、「白天目(大名物)」(朝鮮時代、16世紀。通期)です。元々、南禅寺に伝来していた作とのことですが、1657年に将軍家綱へ献上され、現在のように徳川美術館の所蔵品となりました。端正な造形にたっぷりとかけられた白い釉薬が温かみを醸し出し、この手の器にありがちなシンプル過ぎる嫌いを避けています。また口縁の輝きは銀でしょうか。器をキリッと引き締めるような味わいも感じられました。
もう一点、花入では「銘 鶴一声(大名物)」(南宋時代。後期)が魅力的です。まさにすくっと伸びる鶴の首のような美しさを見せていますが、当初は鶴の嘴に似ているとされていた品だそうです。(その後、鶴の立ち姿に似ているとしてこのような銘がつきました。)鈍く光る銅の重みはもちろんのこと、高台の波涛文がまた非常に見事に象られています。荒れ狂う波の様子が細やかに表現されていました。
さて目当ての抱一ですが、対幅の「双鶴図」と「七草図」(ともに江戸時代。後期)が展示されています。抱一の軸にしては随分と大きな印象を受けますが、元々はまったく時期の異なった作品です。(それを水戸家八代斉脩が対幅に仕立てて今のような形になりました。)二羽の鶴が交互に並ぶという「双鶴図」は比較的初期の頃の作ですが、例えば鶴の足などの模様がかなり丁寧に描かれていて、構図こそいかにも琳派的であるものの、画自体には高い写実性を見ることも出来ます。一方の「七草図」はこれぞ抱一とでも言えるような作品です。葛の葉の葉脈には金の線がはっきりと残り、桔梗の藍も深く美しい色をたたえています。ここで特に興味深いのは萩の描写です。咲き誇る白い花々が、まるでキラキラと瞬く雪のように示されていました。これは風流です。
前期展示と合わせ、結局は関心のある器や画だけに終始する感想になってしまいましたが、ともかく家康の肖像から所用の武具、刀、または徳川家伝来の黄金に眩しい調度品までの揃う展覧会です。「史上初」をうたうのも無理はないと思います。壮観なのは事実です。
この日の入場待ちの列は最高で約40分ほどだったそうですが、確かに館内の混み様は少し息苦しくなるほどでした。ちなみに金曜の夜間開館以外にも、会期末までの土日は19時まで開館することが決まっています。これからの方はその辺が狙い目かもしれません。
12月2日までの開催です。(11/17)
*関連エントリ
「大徳川展」(前期展示) 東京国立博物館
「大徳川展」(後期展示)
10/10-12/2(前期:10/10-11/4、後期:11/6-12/2)
後期展示には抱一も登場しています。東博の大徳川展です。相変わらず大変に混雑していましたが、ともかくは茶道具や絵画のある「第二会場」をじっくりと楽しんできました。
まず挙げたいのは、天下の名器と呼ばれる白天目三点のうちの一つ、「白天目(大名物)」(朝鮮時代、16世紀。通期)です。元々、南禅寺に伝来していた作とのことですが、1657年に将軍家綱へ献上され、現在のように徳川美術館の所蔵品となりました。端正な造形にたっぷりとかけられた白い釉薬が温かみを醸し出し、この手の器にありがちなシンプル過ぎる嫌いを避けています。また口縁の輝きは銀でしょうか。器をキリッと引き締めるような味わいも感じられました。
もう一点、花入では「銘 鶴一声(大名物)」(南宋時代。後期)が魅力的です。まさにすくっと伸びる鶴の首のような美しさを見せていますが、当初は鶴の嘴に似ているとされていた品だそうです。(その後、鶴の立ち姿に似ているとしてこのような銘がつきました。)鈍く光る銅の重みはもちろんのこと、高台の波涛文がまた非常に見事に象られています。荒れ狂う波の様子が細やかに表現されていました。
さて目当ての抱一ですが、対幅の「双鶴図」と「七草図」(ともに江戸時代。後期)が展示されています。抱一の軸にしては随分と大きな印象を受けますが、元々はまったく時期の異なった作品です。(それを水戸家八代斉脩が対幅に仕立てて今のような形になりました。)二羽の鶴が交互に並ぶという「双鶴図」は比較的初期の頃の作ですが、例えば鶴の足などの模様がかなり丁寧に描かれていて、構図こそいかにも琳派的であるものの、画自体には高い写実性を見ることも出来ます。一方の「七草図」はこれぞ抱一とでも言えるような作品です。葛の葉の葉脈には金の線がはっきりと残り、桔梗の藍も深く美しい色をたたえています。ここで特に興味深いのは萩の描写です。咲き誇る白い花々が、まるでキラキラと瞬く雪のように示されていました。これは風流です。
前期展示と合わせ、結局は関心のある器や画だけに終始する感想になってしまいましたが、ともかく家康の肖像から所用の武具、刀、または徳川家伝来の黄金に眩しい調度品までの揃う展覧会です。「史上初」をうたうのも無理はないと思います。壮観なのは事実です。
この日の入場待ちの列は最高で約40分ほどだったそうですが、確かに館内の混み様は少し息苦しくなるほどでした。ちなみに金曜の夜間開館以外にも、会期末までの土日は19時まで開館することが決まっています。これからの方はその辺が狙い目かもしれません。
12月2日までの開催です。(11/17)
*関連エントリ
「大徳川展」(前期展示) 東京国立博物館
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