「Great Ukiyoe Masters/春信、歌麿、北斎、広重」(後期展示) 渋谷区立松濤美術館

渋谷区立松濤美術館(渋谷区松濤2-14-14)
「Great Ukiyoe Masters/春信、歌麿、北斎、広重 - ミネアポリス美術館秘蔵コレクションより - 」
10/2-11/25(前期:10/2-28、後期:10/30-11/25)



極上の浮世絵を楽しめる展覧会もそろそろ会期末を迎えています。前期に引き続いて楽しんできました。松濤美術館で開催中の「Great Ukiyoe Masters」展です。



展示の主役である春信の魅力は後期でも存分に味わえます。雪の降りしきる橋の上で先を急ぐ女性の「見立佐野の渡り」は、新古今和歌集の藤原定家の歌を見立てて描いたものですが、やや覚束ない足元の下にうっすらと積もる雪が少し浮き出たように示されていました。ぽつぽつと残るきめ出しの足跡や流麗な着物の線など、春信の繊細さも楽しめる作品です。



上品な芝色に、雪と柳の柄が映える着物を纏った女性の「扇の晴嵐」も絶品です。これほど透明感のある緑色を浮世絵で見るのは初めてですが、扇をさっと振り上げて佇むその所作に粋を感じさせます。また積もる雪がまるで綿アメのようにふわふわと重なる「見立鉢の木」も印象に残りました。竹の笹の色が、あたかも今さっき彩色したかのような瑞々しさを感じさせています。パラパラと降り行く雪の粒もしっかりと表現されていました。



写楽もいくつか展示されていますが、「篠塚五郎」に見る勇ましい出で立ちは何とも魅力的です。袴をまるでマントのように靡かせ、太刀を振りかざして大見得を切る姿が描かれていますが、刀の柄のメタリックな様子はもはや浮世絵を越えるかのような質感も見せていました。また現存する画が僅か7点しか確認されていない(そのうち、前期1点、後期2点が紹介されています。)という歌舞妓堂艶鏡の「市川八百蔵の梅王丸」も見事です。キリッと睨むような仕草に迫力を感じます。



一見、地味ではありますが、北斎の「元禄歌仙具合 わわび」も見入る作品です。上の画像では確認出来ませんが、目線を少し下げると、打ち寄せる波がキラキラと瞬いて浮き上がってきます。また青から緑、それに茶色と様々に変化する色のグラデーションも、もはや肉筆ではないかと思うほど丁寧に表されていました。



広重は前後期合わせて50点ほど出品されていますが、後期では桜吹雪の舞う嵐山を動的に捉えた「京都名所之内 あらし山満花」が情緒豊かな作品です。深い川の青みに映える満開の桜の元、煙を揺らめかせる小舟が、まさに風を切るかのようにして颯爽と進んでいます。また広重では、三国志でお馴染みの長坂橋の戦いを描いた「張飛罵曹操陣」も佳品です。黒い馬に乗って勇ましく吼える張飛に怖れおののいた曹操軍が、橋の向こう側で縮こまって群れています。ここで橋を切り落とす張飛は、圧倒的な大軍の曹操の猛攻より逃れる君主劉備を辛くも助けることになるわけです。



歌麿でも特に有名な「婦人相学十躰 浮気之相 」も展示されています。美人大首絵の中に「多情で浮かれがちな女の性格が見事に写し出されている」(文化遺産オンラインより。)という作品ですが、雲母刷りの効果による雅やかな地の味わいと、纏う衣の精緻な描写にも見入るものがありました。適切ではないかもしれませんが、ふと後ろを振り返ってみたら好みのタイプがいた、とでも言うような仕草を見せています。

ともかく非常に状態の良い品ばかりで構成された浮世絵展です。この機会をお見逃しないよう強くおすすめします。

次の三連休の最終日、25日までの開催です。(11/4)

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