都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ヴラマンク展」 鎌倉大谷記念美術館
鎌倉大谷記念美術館(神奈川県鎌倉市佐助1-1-20)
「開館10周年記念 ヴラマンク展」
9/11-12/8
鎌倉駅近くの閑静な邸宅街に建つ小さな美術館です。館蔵の油彩、及びリトグラフ約30点で構成されたヴラマンク展へ行ってきました。
まずは好きな画家をまとまって見られること自体が有り難いのですが、お馴染みの大作油彩画の他、あまり見慣れないリトグラフ作品(10点)が展示されていたのも嬉しいところでした。もちろんそれらはどれも風景をモチーフとした作品ですが、建物や木々などが奥へとのびていき、いつしか全てが歪んでいくような独特の構図感は、表現方法こそ異なれども健在です。言ってしまえば彼の油彩に見る毒々しさを抜いた作品がリトグラフ、と表現出来るかもしれません。油彩ではあまり見出しにくい牧歌的な詩情も楽しめました。
さて一方の油彩ですが、こちらはどれもまさに彼ならではの激しい作品ばかりが並んでいます。図版がないのが残念ですが、一推しは「マーガレット」(1920)です。一般的にヴラマンクの花卉画は、それこそ花が画面を埋め尽くしていくような力強さを感じるものが多いのですが、こればかりはマーガレットがどこか控えめな様で咲く様子が捉えられています。また漆黒の壁と焦げ茶色のテーブル、そしてそこにのる小さなガラス瓶や黄色や白の花々のマチエールも魅力的でした。花が背景の余白を残し、ポッと闇に灯る電球のように健気に咲いています。
積み藁と言えばモネですが、ヴラマンクの「秋の風景」(1950)にもそれが登場しています。と言っても、タッチは殆ど暴力的と言えるほどにうねり狂い、色遣いも目に刺さるような濃い配色のものです。しかしそれにしても彼の作品の空は本当に素晴らしいと思います。『海のような空』とでも言えるでしょうか。底抜けのブルーと輝かしい白、そして瑞々しいエメラルドグリーンが、流れゆき、まさしく波打つかのようにしてぶつかり合いながら多様な表情を生み出しています。ヴラマンクの何が魅力なのかと問われれば、私は真っ先にこの空を挙げるでしょう。
大谷の名が示す通り、この施設はニューオータニグループの前会長、故大谷米一氏のコレクションを公開するために作られた美術館です。もちろん大谷コレクションといえば赤坂見附のニューオータニ美術館が有名ですが、こちらは氏を偲ぶという観点から、その愛した鎌倉の地で作品を紹介することに主眼が置かれています。明るいテラスや区切られた小部屋など、さながらどこかのお宅か小さなホテルの中にいるような雰囲気も味わえました。
点数がやや少ないのでわざわざというのは大変ですが、鎌倉へ出向いた際には見ておきたい展示だと思います。ちなみに祝日を除く日曜は休館日です。ご注意下さい。
12月8日まで開催されています。(11/23)
(*) 美術館の写真はパンフレットより引用しました。
「開館10周年記念 ヴラマンク展」
9/11-12/8
鎌倉駅近くの閑静な邸宅街に建つ小さな美術館です。館蔵の油彩、及びリトグラフ約30点で構成されたヴラマンク展へ行ってきました。
まずは好きな画家をまとまって見られること自体が有り難いのですが、お馴染みの大作油彩画の他、あまり見慣れないリトグラフ作品(10点)が展示されていたのも嬉しいところでした。もちろんそれらはどれも風景をモチーフとした作品ですが、建物や木々などが奥へとのびていき、いつしか全てが歪んでいくような独特の構図感は、表現方法こそ異なれども健在です。言ってしまえば彼の油彩に見る毒々しさを抜いた作品がリトグラフ、と表現出来るかもしれません。油彩ではあまり見出しにくい牧歌的な詩情も楽しめました。
さて一方の油彩ですが、こちらはどれもまさに彼ならではの激しい作品ばかりが並んでいます。図版がないのが残念ですが、一推しは「マーガレット」(1920)です。一般的にヴラマンクの花卉画は、それこそ花が画面を埋め尽くしていくような力強さを感じるものが多いのですが、こればかりはマーガレットがどこか控えめな様で咲く様子が捉えられています。また漆黒の壁と焦げ茶色のテーブル、そしてそこにのる小さなガラス瓶や黄色や白の花々のマチエールも魅力的でした。花が背景の余白を残し、ポッと闇に灯る電球のように健気に咲いています。
積み藁と言えばモネですが、ヴラマンクの「秋の風景」(1950)にもそれが登場しています。と言っても、タッチは殆ど暴力的と言えるほどにうねり狂い、色遣いも目に刺さるような濃い配色のものです。しかしそれにしても彼の作品の空は本当に素晴らしいと思います。『海のような空』とでも言えるでしょうか。底抜けのブルーと輝かしい白、そして瑞々しいエメラルドグリーンが、流れゆき、まさしく波打つかのようにしてぶつかり合いながら多様な表情を生み出しています。ヴラマンクの何が魅力なのかと問われれば、私は真っ先にこの空を挙げるでしょう。
大谷の名が示す通り、この施設はニューオータニグループの前会長、故大谷米一氏のコレクションを公開するために作られた美術館です。もちろん大谷コレクションといえば赤坂見附のニューオータニ美術館が有名ですが、こちらは氏を偲ぶという観点から、その愛した鎌倉の地で作品を紹介することに主眼が置かれています。明るいテラスや区切られた小部屋など、さながらどこかのお宅か小さなホテルの中にいるような雰囲気も味わえました。
点数がやや少ないのでわざわざというのは大変ですが、鎌倉へ出向いた際には見ておきたい展示だと思います。ちなみに祝日を除く日曜は休館日です。ご注意下さい。
12月8日まで開催されています。(11/23)
(*) 美術館の写真はパンフレットより引用しました。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )