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あらかじめ書いておきますが、当方がアールブリュット作品を見るのは“障がい者が作る作品だから興味がある”ということでも、“障がい者を温かい目で支援する”といったことでもなく、あくまで作品の持つ(発する)力を感じたい!との思いからです。
近代美術館には古くは「オノ・ヨーコ展」から昨年の「佐々木マキ展」などで訪れていますが、敷地内に美術館と図書館などが併設され、一帯が緑の多い文化ゾーンになっており、訪れるたびにいい所だなぁ~もっと近けりゃいいのにと感じる場所です。
その中心施設である近代美術館と滋賀県はアールブリュットに非常に力を入れていて、この美術館は2019年にはアールブリュットを中心とした「新生美術館」として生まれかわるそうです。
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入場するとまず、滋賀の障がい者施設で造形を始めた歴史などが書かれています。施設で最初に作り始められた造形物って何だと思いますか?
ある年齢以上の方には記憶にあると思いますが、駅弁についてくる陶器の汽車土瓶だったんですよ。しかも米原の井筒屋さんです。駅弁の“湖北のおはなし”で有名なお店ですね。
当方の小さな子供の頃の遠くて薄い記憶ではありますが、汽車(電車ではなかったと思う)の旅で食べる駅弁の晴れがましくも贅沢な気分。
熱いお茶を土瓶蓋の湯飲みに注いで、時々揺れる汽車の座席で太腿に熱いお茶をこぼさないように気を付けながら駅弁をほおばる穏やかな時間...。
こんな記憶がある方ってもうそこそこの歳になられていると思いますが、お茶はその後ポリエチレンの茶瓶型容器に変わり、今ではペットボトルに変わりました。
あの陶器の汽車土瓶と汽車の旅は今から考えると実に風情のあるものでしたね。
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(図録)
さて、そのようにしてスタートした造形はその後専門の指導員が付いたりしたこともあって、それぞれの方が個性を発揮する「作品」へと発展していったようです。
アールブリュットの造形には無数の細部を作り続けるような傾向のものがありますが、“作品から迫ってくる力のようなもの”、“何か鋭利なものでも突き付けられているようなヒリヒリと掻き毟られるような感覚”。そのようなものを強く感じてしまいます。
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(図録:左から「澤田真一《無題》、「鎌江一美」《まことさん》)
さすが近代美術館で開催されているだけあって約150点近くと作品数も多く、造形だけでもかなりの作品数が展示されていました。
サイズも見上げるほどの高さのものまであり壮観でしたが、大きい作品で最も目を引いたのは下の作品でした。見終わってから何度も振り返って眺めてしまいましたよ。
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(図録:戸次公明《陶筒》...展示は室内展示)
絵画では近江八幡のボーダレス・アートミュージアムNO-MAでも展示されていた“スズキ万里絵(『スズキ』はさかなへんに戸、鱸の略字)”さんの作品が目を引きます。
グロテスクで血なまぐさい作品ですが、この作品が発するエネルギーには圧倒されてしまいます。非常に興味深いアーティストの一人です。
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(図録:左から《un-gero-detox》、《オロカモノ》)
絵は他の作家の方の作品にも面白いものがあり、素材もいろいろ、着色方法もいろいろ、書きたいものもいろいろ...といった具合で自由度が凄かったと思います。
しかし、スズキ真理絵さんの作品にやはり目がいっています。滋賀県で今のスズキさんの個展をやって欲しいと期待している人も多いかもね?
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(滋賀県発行冊子(アールブリュット美の滋賀):《人に見えるぞよき》、《2008.8②》)
アールブリュットを作品として面白いかつまらないかというのは結局は人それぞれの感性で大きな差があると思います。
ただ商業的に成功した作家の中にもアールブリュット(アウトサイダー・アート)に含まれるような人が多々いますから、実際は境界なんてないのかもしれませんね。
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