ジョン・アップダイク他「母の魂」兼武進訳、飛鳥新社 を読んだ。
角田光代さんが、この本を読んで感動し、「マザコン」を執筆したとあとがきに書いていたので読んでみた。
母親の死に際し、息子が若いときの母を、そして自分を思い出し、その影響の深さを改めて思い知らされて書いた14編のエッセイである。
それぞれの話しや、母はさまざまであるが、著者は新聞のコラムニスト、編集者、大学教授、小説家など高学歴な人が多く、マザコンで知られたユダヤ系が目に付く。母親も貧しい中、知恵を絞ってなんとか生きた優れた人が多い。
息子は、母親と何らかの確執があって、やや疎遠となっていて、死に瀕した母親ともなかなか互いに心を開けない。母親からなんとか独立しようと無理して離れていき、自分の心にひずみや、傷を残しているためだ。そして、母の死に際し、・・・
母親の死の前後という状況なので、とても濃い話が多く、自分の母親を思い出しながら読むと、ついつい本から離れていろいろな想いが湧き出してしまう。
息子というものは、母に関しては保守的で、母の母親以外の面を認めようとしないものだ。しかし、実際の母親は、女としての顔や、地域社会への顔などを持っているし、幼いときに思っていたように絶対的に正しい考えばかりでなく、ときにはゆがんだ考えも持っていて、ごく普通の弱い女性の一人なのだ。
不思議なのは、その普通のなんでもない女性が母親となると、子どもには絶対的な存在となり、実際にマリアさまのように子どもに絶対的愛情を注ぐのだ。
あらゆる男性は反マザコンになろうとして、結局マザコンで終わるのだ。