hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

おくりびと

2009年03月01日 | 個人的記録


米国アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した「おくりびと」が話題だ。この映画も見ていないし、原作の「納棺夫日記」も読んでいないが、7年前の母の葬式(母(7)死)を思い出した。



かねて覚悟はしていても、いざ死亡となると、なんだかフワフワしていて、葬儀社のいかにもやり手の女性に勧められるまま、葬祭のメニューを決めていった。

「ゆかんはどうなさいますか?」
ゆかん?湯濯って何だっけと思い、「どんなことするのですか?」と聞く。
「お身体をきれいにして、旅立ちの着物に着替えていただきます。皆さん、きれいなお身体にして送り出して欲しいとおっしゃいますよ」などと言う。
10万円は高いと思うし、顔だけだったら、自分たちで化粧してあげればよいのではと思ったが、傍らの奥さんを見ると、「お頼みします」という顔をしている。
年取っても身の回りはきちんとしていた母だし、最後の最後だ、頼むべきかなと思った。

当日は、葬儀社の部屋の中央に母の遺体が安置され、われわれ遺族は少し離れて並んで座る。中年のおじさんと、若い女性の二人組みが入って来て、一礼し、あいさつをする。母の遺体は、水で洗えるようにシート状のものの上にあり、顔だけ出して身体にはカバーがかぶせられる。

おじさんが、「ではこれからお清めさせていただきます。・・・」などと口上を述べて、水で身体を丁寧に洗い清める。カバーを掛けたままで二人で上手にすべてを洗っていく。
終わったなと思ったところで、「皆様もどうぞ」と言われ、渡されたガーゼで顔と手をこわごわ拭く、というより撫ぜる。
さらに、「三途の川を渡るために、右手に何々、左手に何々・・・」などと説明しながら、白い着物を着せ、何かを持たせる。納棺してから、女性が「お顔にお化粧を・・・」などと言って、化粧をする。30分位かけて、ようやく終わる。

いちいちの説明や口上はよく分からなかったが、身体を洗ったり、着物を着せ替えたり、確かにすべての所作は見事に儀式的で、丁重に振る舞い、死者への尊厳が感じられた。
傍らで息子が、「大変な仕事だな」とつぶやく。

最後に母のそばに行って良く見るように言われる。顔はきりりとし、着物もきちっと着付けられている。温かみや柔らかさが感じられないので、あらためて確かに死んでしまったのだなと思う。



このときは、納棺夫などという言葉は知らなかったが、頼んで良かったと思いたいし、思う。


コメント
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