林真理子著「不機嫌な果実」1996年10月文藝春秋社発行を読んだ。
図書館で、箒木蓬生(ははきぎ・ほうせい)の本を探していたら、同じ「は」のところに、林真理子の「不機嫌な果実」が並んでいて、題名の字面を見たような気がしたのだが、思わず借りてしまった。帰宅して調べてみたら、やはり2002年8月に読んでいて、「何時も自分だけが損していると思う奥さんの不倫の話」とのメモがあり、評価は「×」だった。
それでも、さすが林真理子さんの本、また一気に面白く読めてしまった。私が年取ったせいなのか、それとも読んだ後に何も残らない本なのか。
初出は「週刊文春」の1995年11月から1996年6月。単行本化され、醒めた視点で描いた「不倫」が話題となり、TVドラマ化、映画化された。
32歳の麻也子は、とくに大きな問題もない夫に満足できず、「自分はいつも損をしている」と思っていた。そして、10年ぶりに昔の恋人野村と不倫をする。それでも、まだ不満を持つ麻也子は、歳下の情熱的な音楽評論家との恋愛に溺れていく。
林真理子の略歴と既読本リスト
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
もはや「計算高い不倫」「ふたまた不倫」には新しさも感じられず、かっての衝撃はない。ただ、現在でも、「他人に比べ自分は損をしている」と不満を抱えている女性は多いのではないだろうか。また、男女の駆け引きや、不倫帰りに夫に甘えてみせるなどの細部には林さんの腕が光る。
林真理子さんは、美人だが、わがままで計算高く、いつも不満を募らせる主人公を冷たく、馬鹿にしながら書いている。林真理子さんの美人への偏見を楽しみながら読む楽しみもある。