hiyamizu's blog

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柴田元幸翻訳叢書『アメリカン・マスターピース 古典編』を読む

2018年03月12日 | 読書2

 

ナサニエル・ホーソーン他著、柴田元幸訳『アメリカン・マスターピース 古典編』(2013年10月19日)を読んだ。

 

柴田元幸がアメリカ古典小説から選りすぐったアンソロジー。ホーソーン、メルヴィル、O・ヘンリー、ポー、ヘンリー・ジェイムズの短篇選集。

 

ホーソーン「ウェイクフィールド」Nathaniel Hawthorne “Wakefield (1835)”

この夫婦はロンドンに住んでいた。夫は旅行に出ると偽って、自宅の隣の通りに間借りし、妻にも友人にも知られることなく、またこうした自己追放の理由などこれっぽちもなしに、二十年以上の年月をそこで過ごしたのである。・・・妻ももうずっと前に人生の秋の寡婦暮らしを受け容れていたところへ、ある夕暮れどき、あたかも一日出かけていただけという風情で、男は静かに自宅玄関の敷居をまたぎ、終生愛情深い夫となった。

 

ポー「モルグ街の殺人」 Edgar Allan Poe “The Murders in Rue Morgue (1841)”

「当たり前だのクラッカー」だが、子供の頃読んだ内容と一緒だった。。しかし、文章は英語なら当然、翻訳文でも堅苦しい。遥か昔に読んだのは子供向けの文だったのだろう。内容も時代掛かっていて、大仰。

 

メルヴィル「書写人バートルビー」 Hermann Melville “Bartleby, the Scrivener: A Story of Wall-Street (1853)”

ウォール街の事務所に勤めるターキーは、午前中は礼儀正しく有能に働くが、午後は怒りやすく乱暴になる。その他、ニッパーズも気の粗い変人だった。そこに募集に応じて加わったのがバートルビーだった。はじめのうちは正確で速い書写を行い、満足していた。そのうち、私が何か仕事を頼むと、「そうしない方が好ましいです(“I would prefer not to”)」と答えて、私を驚かせた。以後、何を言っても冷静に「そうしない方が好ましいです」を繰り返すようになった。そして、最後には・・・。

(コピー機が発明されるまでは手で書き写すことが事務所の主な仕事になっていたのだろう。)

 

エミリー・ディキンソン「詩」 Emily Dickinson “Poems (1858~1864)”

6編

 

マーク・トウェイン「ジム・スマイリーと彼の跳び蛙」 Mark Twain “Jim Smiley and His Jumping Frog”

 

ヘンリー・ジェームズ「本物」 Henry James “The Real Thing”

 

O・ヘンリー「賢者の贈り物」 O. Henry “The Gift of the Magi”

おなじみのデラとジム(ジェームズ・ディリンガム・ヤング)の贈り物交換の話。これも文は固く、なじめない。

 

ジャック・ロンドン「火を熾す(1908)」 Jack London “To Build a Fire”

火を熾す」参照

 

編訳者あとがき

各著者の紹介。エミリー・ディキンソンは女性を一人入れるために詩であるが選んだという。

本書に収められた作家たちのうちで、歴史上おそらく一番読者がおおいのはこのO・ヘンリーではないかと思う。そして文学史上の評価がおそらくもっとも低いのもこの人である。この人に関する当編訳者の思いは複雑である。

・・・こういう出来合いのノスタルジアこそ諸悪の根源だという声もあることは承知しているのだが、

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

子供の頃、おそらくは子供向けの本で読んだ作品の原本を(翻訳で)あらためて読むのも面白いだろうと思って、この本を選んだ。

結果として、過去に読んだことがあるいくつかの作品を、ざっと読み返すには良いが、あらためて丁寧に読むと文章が時代がかっていて、大げさで古めかしく読みにくい。

 

大好きな柴田さんがあとがきで、「引き続き、準古典編(フォークナー、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、オコナ―・・・)、現代編(カーヴァー、ミルハウザー、ダイベック、ケリー・リンク・・・)を刊行したい」と言っているので楽しみだ。

 

 

柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京都生まれ。米文学者、東京大学名誉教授。
1992年『生半可な學者』で講談社エッセイ賞
2005年『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞
2010年トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞を受賞
文芸誌 MONKEYの責任編集を務める。

訳書
ポール・オースター(『ガラスの街』『幻影の書』『オラクル・ナイト

ミルハウザー(『ナイフ投げ師』『マーティン・ドレスラーの夢』『エドウィン・マルハウス あるアメリカ作家の生と死』)、
ダイベック(『シカゴ育ち』他)
レベッカ・ブラウン(『体の贈り物』『家庭の医学』他)

他、「火を熾す」。『犬物語

著書
ケンブリッジ・サーカス』『バレンタイン』『翻訳教室』『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。

対談集
高橋源一郎と対談集『小説の読み方、書き方、訳し方』『代表質問

 

コメント
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