辻村深月著『水底フェスタ』(文春文庫 つ18-2、2014年8月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、ある夜、彼女は言う、自分はこの村に復讐するために帰ってきたのだと。村の秘密と美しい女の嘘が引き起こす悲劇。あまりに脆く切ない、恋の物語。 解説・千街晶之
舞台は六ヶ岳の南麓に位置する睦ッ代(むつしろ)村。全編ほぼここで展開される地域限定小説だ。
睦ッ代村合併もせずにやってこれたのは、東京の日馬(くさま)開発と代々の村長が組んで誘致した野外ステージでの音楽イベント「ムツシロ・ロック・フェスティバル」のおかげだ。
主人公の湧谷広海は、父・飛雄が現在の村長で、専業主婦の母・美津子と暮らす高校2年生。囲むのは、親同士が決めた勝手な結婚の約束を信じ付きまとう織場門音、優秀で医者になったのに村に戻ってきた10歳上の従兄の須和広光。問題あって東京から転校してきた日馬開発の次男・日馬達哉。
広海はフェスで、8歳年上の村出身の女優・モデルの織場由貴美(ゆきみ)を見かけた。頭は良いが世界が狭い田舎の少年・広海は、最近活躍の場がなくなってきている年上の美人由貴美の意味深なセリフに誘惑され恋してしまう。親しくなった由貴美は「村を売る、復讐のために帰ってきた」と、村のおどろおどろしい過去を語る。広海の尊敬する父・飛雄もかかわっているという。
やがて、信じがたい事実と殺人が静かな村に次々と起こる。
初出:「別冊文藝春秋」2010年1月号~2011年5月号、単行本2011年8月
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
世間の狭い高2の広海の目から見た世界が語られ、舞台が山奥の閉鎖的な山村に限られているので、話がミニマム過ぎる。
山村の息詰まる人間関係、しがらみ、呪縛、そして狂気が迫ってくるが、シティボーイ?の私には息苦しい。
さらに、最後の方は、話が大きく動き、バタバタで、乗っていけない。