ケン・オーレッタ著、土方奈美訳『グーグル秘録』(文春文庫 オ3-1、2013年9月10日文藝春秋発行)を読む。
裏表紙にはこうある。
全盛期のビル・ゲイツが「怖いのは、ガレージで新しい何かを始めた連中だ」と呟いたその時、彼らは創業した。マイクロソフト・アップル・フェイスブックとの熾烈な争いに、伝統メディアも巻き込んで新時代の扉が開かれる。「ニューヨーカー」ベテラン記者が大幹部たちに直接取材した圧巻の新旧メディア興亡史。解説・成毛眞
グーグルの3人の柱、エリック・シュミット、サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジをはじめとする幹部に150回徹底取材し、根底を否定されようとする既存メディア、新聞、出版、音楽、テレビなどの幹部150名にも取材。
・他人の想いを無視し、数字だけを信じる技術者集団グーグルの経営スタイル
・ネットの既存ルールも変えてしまおうとするビジネス戦略
・広告代理店、巨大メディアを危うくするネットの「中抜き」
・マイクロソフト、アップル、フェイスブックとの激突
・巨大化と共にグーグル幹部の人材流出が進行
単行本は2010年5月文藝春秋刊。
原題は“googled”:グーグル化されてしまった?(訳者あとがきによる)
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
あまりにも膨大な内容(文庫版本文600頁)で、飛ばし読みせざるを得なかった。タイトルは「グーグル秘録」だが、新聞、書籍などのオールドメディアの凋落ぶり、マイクロソフトなど既存IT企業の伸び悩みなども多くのページを割いていて、インタビューを主体とするので記述が冗長で、繰り返しも多い。
グーグルの急速な成功の主因は、ラリー・ページとサーゲイ・ブリンの二人の創業者が、日本では生き残れないだろう激烈な変わり者で、技術には超優れており、一方でCEOのエリック・シュミットが二人と社内外の緩衝材になっていることによることはよくわかった。
ケン・オーレッタ Ken AUletta
名門総合情報誌「ニューヨーカー」記者。30 年以上にわたって、ニューヨークを拠点に政治・経済・メディアをカバーし、アメリカ最高のメディア批評誌「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」に、「ケン・オーレッタほど、今起こりつつあるメディア革命を完全にカバーしている者はいない」と評された。
土方奈美( ひじかた・なみ)
翻訳家。慶応義塾大学文学部卒。
1995年日本経済新聞社入社。
2008 年にフリーに。2012年米モントレー国際大学院から翻訳修士号取得。
米国公認会計士資格保有。経済・金融分野を中心に翻訳を手がける。
近訳に『世界の技術を支配するベル研究所の興亡』。
メモ
グーグル(傘下のダブルクリック)の広告収入は年間200億ドルで、ネット広告費全体の40%を占める。
米国ネット検索の2/3、世界全体の70%
2008年、グーグルの売上高は218億ドル、利益は42億ドル。
グーグル社員には食事やスナックが無料で提供。マッサージ室や専属トレーナーがいるスポーツジムがある。散髪も、クリーニングも、保育所もペット美容院も用意され、歯科医など医師も5人いる。自家用車の清掃やオイル交換サービスも木曜日に行われる。
社員の多くは一週間のうち一日、もしくは勤務時間の20%を自分が情熱を感じられるプロジェクトに充てることが認められている(20%ルール)。
ネット広告アドワーズ
CPM方式(視聴者千人当たりのコスト):広告主はユーザがクリックしたか否かにかかわらず広告料を支払う
CPC方式(コスト・パー・クリック):広告主はユーザのクリック数に応じた広告料を支払う。しかし、広告主は広告がいつ、どこに表示されるかを把握したいと考える。グーグルが広告を他のサイトに配信し、掲載のタイミングなどはそうしたサイトが決めてしまうことを警戒する。
ビッカリー・オークション:トップの入札者は二位の入札価格に1セント上乗せするだけでよい。
検索ページの三分の二に検索結果を表示し、右側三分の一を文字広告のスペースとして区切る。
これは小規模な広告主をネットに招き入れた。
ネット広告アドセンス
広告斡旋会社として、ブログやホームページに広告を配信し、広告料を分け合う。広告主は広告がクリックされた場合しか費用は払わない。これにより無数のホームページが金を稼ぐ手段となった。
もともとのアイディアは、メールに含まれる単語と、広告主が選んだキーワードをマッチングさせ、小さな文字広告を瞬時に表示するというものだった。
ユーザーが広告などをどれだけ眺めているか、何をクリックするか、何を検索するか、何が好きかといった情報をグーグルは直接広告主に渡すことはしない。それを使って特定の顧客にターゲットを絞って広告を表示するのを手助けするだけだ。