溝渕利明著『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいダムの本』(2018年7月25日日刊工業新聞社発行)を読む。
表紙にはこうある。
ダムは生活や農業・工業用水の安定した供給を可能にしてくれます。また、土砂災害や洪水を予防する存在でもあります。本書では、私たちの生活を支えるダムの役割、構造、造り方などを丁寧に解説します。
第1章 ダムのここだけは知っておこう
●地球上で人が利用できる水の量は?
地球の表面積の約70%は水(氷)だが、その98%は海水。淡水は2.5%で、そのうち1.8%は氷。地下水を除き、川などから利用できる水は0.01%、140兆ℓで、全人類で琵琶湖5000杯分しかない。
日本の年間降水量は約1700mm/年で世界平均の2倍あるが、平地が国土の30%しかなく、水資源量は平均の半分。一人一日約300ℓの水を使っていて、世界平均の2倍。
● ゲリラ豪雨が日本を襲う/● 突然襲ってくる鉄砲水は恐ろしい/● 水を治めるものが国を治める
● ダムと名乗れるのは法律で決まっている?
「河川の流水を貯留し、又は取水するため第26条第1項の許可を受けて設置するダムで、基礎地盤から堤頂までの高さが15m以上のもの」 それ以下の高さのものは堰と呼ぶ。
● ダムとため池 /● なぜダムを造らなければならないの?/● ダムにはどんな役割がある?
● ダムの種類は? 「ダムの材料や形はさまざま」
コンクリートダム(重力式、アーチ式、バットレス式、中空重力式、重力式アーチ)
バットレス式:水の圧力を鉄筋コンクリートの壁で支える
ロックフィルダム:中心の水を通さない土を盛り、周囲を岩で固める
アースダム:堤防のように土だけで造られる
フェイシングダム:表面から水が漏れないようにアスファルトやコンクリートで覆う
● ダムは世界にどれくらいあるの?
日本国内には約3000あり、アースダムが1202、重力式ダムが1087。
世界には約34000で、アメリカ9300、中国4700、インド4600、日本は4番目。
● ダムはどのように数えるの? 1基、2基と数える
● ダムの大きさはどうやって決めるの?/● ダムはいつからあるの?
● ダムには鉄筋が入っていない?
ダムに鉄筋は入っていない。引張力が働かないようにダムを設計するので鉄筋はいらない。
例外として水圧に対して壁で受け止めるバットレス式ダムだけは鉄筋を入れて引っ張力に耐える。
● ダムは見えないところでも水を止めている? /● ダムができるまで川の水はどうするの? /● ダムができると地震が起きる?
第2章 ダムの種類とその特徴
● ダムの形はどうやって決めるの?
● ダムにはさまざまな施設がある
洪水吐(こうずいばけ):ダムが決壊しないようにある高さに達するとダムに溜まった水を下流に流す施設。
● 重力式ダム /● アーチ式ダム /● 重力式アーチダム /● バットレス式ダム /● 中空重力式ダム /● ロックフィルダム /● アースダム /● フェイシングダム /● 砂防ダム /● 地下ダム
第3章 ダムの計画と設計
略
● ダム内部の温度
ダムを造ると約1万世帯の1年分の風呂を沸かすだけの熱が発生する。ダムの中心が外気と同じに冷えるには数十年かかる。
第4章 ダムを造るために必要な設備 略 第5章 ダムの施工技術と工法 略
第6章 ダムの維持管理とリニューアル
● ダムの寿命はどれくらい?
日本のダムは100年分の堆砂量を見込んで作られている
● ダムの決壊 /● ダムの維持管理 /● ダムのリニューアル
第7章 ダムのいろいろ 略
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
ダムの一般的知識を得るには十分で一応の知識を得るには適している。しかし、施工方法など一般の人には不要な部分も多い。
絵が多い割には、全体の整理は十分ではない。ダムの種類の説明など複数の場所にでてくる。
コラムのひとつが「へェ~」だった。
多くのダム管理所で「ダムカード」が無料でもらえる。表はダムの写真で、裏に諸元があり、350種以上あるので収集人気が上がっているとあるが??
また、全国で145種以上あるダムカレーも人気だということだが。カレールーをダム湖に、ご飯のダムは、重力式、アーチ式、などがあり、周辺の食堂などで食べられるという。
溝渕利明(みぞぶち・としあき)
法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授。
専門分野はコンクリート工学、維持管理工学。
1959年岐阜県生まれ。1982年名古屋大学卒。1984年名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。
鹿島建設(株)入社、技術研究所、広島支店温井ダム工事事務所(3年勤務)、技術研究所。
2001年法政大学工学部土木工学科・専任講師。2004年法政大学工学部都市環境デザイン工学科・教授。
2007年現職。2016年一般社団法人ダム工学会・理事